魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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11-1.月組(ルナ・クラス)vs星組(ステラ・クラス)!

☆ ウエストエリア マーケット ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 語辺リーン ☆

 

『試合開始から二〇分が経過しました。五分後、駐車場エリアを閉鎖します。駐車場エリア閉鎖から一〇分後に、次の閉鎖エリアが発表されます。続けて、現在の生存者と、得点を発表します――』

 

 律儀なアナウンスが試合会場に響く。なんとか損害ゼロで切り抜けた私たち月組だけど、先行きはちょっと不安だ……というのも。

 

「星組、八点も取ってる……」

 

 しかも既に私たち以外の六チームが全滅しているという有り様だった。

 普通、《集団戦(マギアパーティ)》は序盤の小競り合いがあっても、どちらかが全滅するまでは行かないものなのだけど……試合のペースが早すぎる。

 

「えーっと、ボクたちは何点?」

「六点、ヴァミーリの二人とアイフィス付属の四人を倒してる」

 

 ていうか、スコアで言うと六点中四点がクローネだ、稼ぎ頭がすぎる。

 

「なんだ、二点差じゃない」

「余裕じゃんねー!」『すぐ取り返すニャー!』『皆殺しだナー!』

 

 メアとクローネは楽観的にそう言ったが、私は腕を組んで唸った。

 

「いや、残りチームが私たちだけなのが、結構まずい」

「?」

 

 ピンときていないメアと違って、ルーズ姫は私の言いたいことを察してくれたらしい。

 

「試合終了時に脱落していない選手の分だけ点が入りますから……ここからは誰かがやられてしまうと、一度に二点差がついていく事になりますわ」

 

 ルーズ姫が解説してくれたとおり、残り二チームの戦いでは、一人脱落すると向こうに得点が入る上に、こちらの点が減ってしまう。

 

 つまり一人倒してやっとトントンなのだ。向こうはこのまま逃げ切りという選択肢もあるが、こちらは最低でも二人以上倒さないと勝ちの目が無くなってしまうし、それだってこちらが誰もやられないのが大前提。

 

「つまり……どういうこと!?」

 

 うん、ポンコツなメアも可愛いよ。

 

「こちらから、敵陣(イーストエリア)に攻め込まなければならない、ということだ」

 

 ラミアが腕を組みながら告げた。

 ……恐らく、フロムの《カードから魔物を生み出す魔法(フロム・マジック)》で生み出されたクリーチャーがうようよしているであろう場所に、だ。

 

「クローネ、ぬいぐるみを先行させられる?」

「行けるよーん、ただ結構数が減っちったからねえ、あと十五体かにゃ」

『手強かったナー』『驚きだニャー!』

 

 ちら、とアウトレットモールに備え付けられた、大きな時計に視線を向ける。

 試合開始から二〇分、残り時間は四〇分。

こうして会議している間にも時間は過ぎて、駐車場エリアのことは考えなくて良くなるか。

 

 ……点差を鑑みれば若干不利ではあるけど、都合の悪い展開かというと、そうでもない。

 

 事前のミーティング通り、星組の連中は長期戦になればなるほど有利になる。

 

 グレープは時間をかければ強力な毒を生産できるし、ダヴィニアはそれを身体に取り込んで体を構成する〝汚泥〟の毒素を強化できる。

 ナハトお嬢も都合の良い同化対象を見つけられる――というか下手すると建物そのものと同化、ぐらいのことをあの人はやってくる。

 フロムに至ってはかけた時間=魔物の生産数だ。そしてフロムの軍勢が増えるとイチゴさんの脅威性がいよいよ本格的に牙を剥く。

 

 だから試合展開が早い事自体は、悪くはないのだ――手を付けられなくなる前に、攻め込めるとも言える。

 

「……二体をメアの護衛につけて。三体を偵察に向かわせ――うわぁ!」

 

 この段階で、私は自分の見通しが如何に甘かったかを思い知った。

 ナハトお嬢は私たちに対してこう宣言した。

 

 

 

 

 

『我々星組(ステラ・クラス)は、来る『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』にて総合優勝(、、、、)を目標として戦うことを決めましたわー!』

 

 

 

 

 

 あれはもう、どう考えても宣戦布告そのものだったのだけど、だから、ちゃんと考慮すべきだったのだ。

 つまり――――有利だから待ち構える、なんて消極的なやり方じゃなくて。

 敵がいるなら正面から打破し、堂々と完全勝利を狙いに来るのではないかと。

 

『シャギャギャギャギャギャギャギャ!』

 

 頭の長いエイリアンみたいな魔物が三体! フロムの生み出すクリーチャー!

 

 ……くそっ! この状況で攻めてきやがった!

 

 『生物』であるだけに、一体一体に個性がある、爪が鋭い個体、翼がある個体、手足が多い個体……ちなみに私では正面から勝つのは無理!

 

「リーンちゃんっ!」

 

 上から奇襲を仕掛けてきた個体に、メアが大玉をぶち込んだ。

 正面から大砲の一撃を受けて、魔物が爆発四散する。あまりに容赦ない全力攻撃で、体液と肉片が爆ぜてべちゃべちゃと焼き物タイルの地面に落ちて……うわあ、シュウシュウ音をたてて溶け始めた……どうやら強酸の血液が流れているらしい。すぐに塵になって消えていったけど、至近距離で交戦するとこっちもダメージくらいそう。

 

「あ、ありがとメア、助かった……」

「どういたしましてっ!」

 

 残りの二体の内、一体はラミアが斬り捨て、もう一体はクローネのぬいぐるみが蹴り飛ばし、転ばせた後首をへし折った。

 

「んー、やっぱ一体一体はあたしのぬいぐるみで勝てるっぽいね」

 

 クローネのぬいぐるみは、自律行動しているのではなく、あくまでクローネが《魔力(エーテル)》の紐を繋いで有線で操っている。だから行動範囲はクローネが紐を伸ばせる範囲に限られるが(それでも結構遠くまで行けるけども)、代わりに一体一体を細かく動かせるし、必要なら《魔力(エーテル)》を注いで強化できる。

 

 対してフロムの魔物は、生み出す際に込めた《魔力(エーテル)》の分しか活動できず、それが尽きたら消滅してしまう。代わりに勝手に動くので生み出した後は放置でいいし、タマゴの段階なら外部の協力者の《魔力(エーテル)》を注いで自分の容量以上の数を生み出すことができる。

 

 一長一短だけど、この場合有利に働くのはどっちだ?

 

 特にこの手の勝負なら、開始直後に『孵化に時間はかかるけど強力な個体』の準備は絶対にしているはずで……よし、腹をくくろう、向こうがその気ならこっちもやるだけだ。

 

「…………作戦を、言います」

 

 全員の視線が、私に集中した。

 

 

 

 

 

 

 

☆ イーストエリア 下部 店舗内部 ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 明星イチゴ ☆

 

 あまりカメラに映りたくないなぁ、と明星イチゴは思った。

 

 いや、目立ちたいのだけど……MTubeのチャンネル登録者数がついに四〇万人突破して、トレンドにあがって人気が出てきた昨今、もっともっと目立ちたい。

 

 《集団戦(マギアパーティ)》の活躍は一気に名前を売る絶好の機会、優勝ができれば倍ドンだ。

 

 ただ問題もある……この戦い、イチゴはあまりバズりそうな活躍ができていない。仕事はちゃんとしているし、成果もあげているけれど、なんというか……地味で目立たない。

 

 というか立ち位置的にはむしろ目立ってはいけないし、見つかってはいけないので、外から見て、イチゴが何をしているかわかってはいけない、という二律背反があって……。

 

「…………はぁ、キミたちがもうちょっと可愛ければなあ」

 

 イチゴの前には今、一〇体の魔物が居る。見た目ねとねとしていて正直気持ち悪いし、全然可愛くない。隣のクラスのクローネが使うような愛らしいぬいぐるみだったらバズ的にも百点満点なのだけど、現実はなかなか難しい。

 

 しかし今の状況は凄く有利だ。点でリードしていて、時間に余裕もある。

戦いとは基本的に、余裕がある方が勝つものだ。ヘクセンナハトは完・全・勝・利! を掲げていたが、イチゴは《集団戦(マギアパーティ)》優勝という結果さえ手に入ればそれで良いので、ちょっとテンションの乗り方が違う。

 

「うー、作戦、作戦、どーしようかなぁ、月組の皆って好戦的だし、絶対こっちに来るよね」

 

 大前提となる基本の作戦はヘクセンナハトが事前に考えてくれたが、本番では本人が『大暴れしーまーすわー!』と高らかに告げてきたので、当日、現地の指揮はイチゴの役目になってしまったのだ。

 

 ダヴィニアはそもそも喋れない、グレープは人の顔を見て話さない、フロムは言うことを聞かない。イチゴは自分自身がそういうのに向いてるとは微塵も思ってないけれど……消去法でそうなってしまうのだ。仕方ない。

それに、持って生まれた固有魔法(オリジン)はそういう適性を上書きしてしまうぐらいの力があった。

 

「はぁっ! よーし、やるぞ、いくぞ、頑張るぞっ♪ 甘酸っぱくてキラキラの、明星イチゴ、いっきまーす!」

 

 渋っていても仕方ない。会社勤めの父は、人生の節目が来る度に、イチゴにこう言い聞かせていた。

やるべきことをちゃんとしないのは、勝ち負け以前の問題だ、と。

 

「みんなー!」

 

 愛用のデコメガホンで、魔物たちに声をかける。

生産段階でイチゴの《魔力(エーテル)》を分け与えて生まれた彼らは、イチゴの指示を聞く。

 

 すぅー、と息を吸い込んで、発する言葉に《魔力(エーテル)》を込める。

 何を伝えるべきか、予習は済んでいる。

 頭の中でそれを具体的にして、たった一言。

 

行って(、、、)!」

 

 それだけで、魔物たちは五体一組に別れて、一斉に行動を開始した。

 統率された動きで左右に散り、それぞれの役割を果たす為に。

 

 明星イチゴの固有魔法(オリジン)は、《声に想いを乗せる魔法(イチゴ・マジック)》。

 

 声に伝えたい想い――自分の気持ちを乗せれば、相手の心に直接、それが響くのだ。

 

 この固有魔法(オリジン)が発現した時、イチゴはアイドルこそが天職だと思った。夢を叶える為に必要な最後のピース、誰よりも心に響く歌を届ける、最高のアイドルになれる! と。

 

 しかし今現在は、こうして魔物たちを有効利用するのに使われている。

 イチゴはたった一言……いや、一音を発するだけで、それを聞いた仲間に対し、『作戦の詳細』を、遅滞なく、誤解なく、解釈違いも起こさずに、イチゴの意図を一〇〇%そのまま、正確に伝えられる。

 

「あーあ、かわいくなーい」

 

 ちなみに今の『行って』に込めた想いを細かく切り分けると、

 

『チームAのキミたちはイーストエリアを周遊して魔法少女を見つけたらその内一体は戻ってきて私に報告、相手が単独なら全員で襲いかかって奇襲をしかけて、二人以上いたら近くに居るチームメイトを呼びに行って。クローネちゃんが単体で居たら爪を打ち鳴らして大きな音を立てて知らせて、フロムの所まで案内して。チームBは建物の中を見て回って、魔法少女を発見したらやられてもいいからその場で暴れて居場所を教えて。対象が語辺さんなら金切り声、夢見さんなら絞り出す声、ジュリィさんなら絶叫――――』

 

 そんな感じである。

 個体識別は名前と顔をセットで伝えているので問題無し。条件付けも完璧。

 孵化にある程度時間を要した個体なので、作戦を理解するだけの知能も持っている。

 後の仕事は――――。

 

「うー、何が生まれてくるんだろ、これ」

 

 ちら、と傍らに存在する、巨大な「それ」に目をやった。

 フロムが一番最初に作り出し、今もまだ脈動している……イチゴの身の丈程もある、大きな大きなタマゴ。

 ヘクセンナハト曰く『切り札』らしい。

 

 まあ、このタマゴから生まれた魔物は、そりゃ強いんだろうと思うけど、フロムの魔物は基本、強いほど見た目が気持ち悪いので、正直あまり孵化するところを見たくない。

 

 使うことにならなければいいなあ、と思いながら、イチゴは自身の《魔力(エーテル)》をタマゴに供給し始めた。

 

 





【挿絵表示】


【明星・イチゴ】
クロムローム魔法学園 高等部一年星組。
頼れる皆の応援団長。学年一番の常識人。
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