魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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11-2.月組(ルナ・クラス)vs星組(ステラ・クラス)!

☆ イーストエリア 上部連絡通路 ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 語辺リーン ☆

 

 クローネのぬいぐるみを先行させながら、その少し後ろを行く。

 アウトレットモールは結構な広さだけど、片方のエリアに一〇人も集まったら、もういつ誰がどこで接敵してもおかしくない。まして――――――。

 

『シャギャギャギャギャギャ!』

 

 フロムの生み出した魔物が、そこかしこにいるのだ。エンカウントしないほうが無理がある。

 

「お、来るかー?」

 

 早速一体の魔物が現れた。そいつは私たちを、いや、クローネを認識した瞬間。

 

『シャギャギャギャー!』

 

 高らかに叫び、爪をカチカチと打ち鳴らした。まるで何かを合図するように。

 

「ふっ」

 

 ルーズ姫が、即座に《魔弾》を放った。

 メアに勝るとも劣らない威力の大玉を、貯めなしでぱっと放てるのがルーズ姫の凄いところだ。

 

『ギャアーッ!?』

 

 多少抵抗する素振りを見せたが、生命力に割り振った個体ではなかったらしく、そのまま直撃を食らって吹き飛んだ。

 

「今、なにか合図を出してなかったか?」

 

 ラミアも同意見らしい、するってーと、次に何が起こるかと言うと……。

 

「リーンっち」

 

 クローネが、足を止めて、私たちの進行を塞ぐように手を広げた。

 

「あたしの客が来るっぽい、後のことは頼んだぜいっ!」

 

 わらわらわら、と残りのぬいぐるみが一斉に動き出すのと、ほぼ同時。

 

 

 

 

「聞こえた、聞こえた、聞こえたゾ! 我が愛しき魔物(クリーチャー)の声がぁ!」

 

 

 

 

 ズザザザザザ、と凄まじい勢いで駆けてくる影がある。

 誰かなんて考えるのも馬鹿馬鹿しい、フロム・ヒドゥンがあらわれた!

 

「ここはあたしに任せて先に行きなー!」

『やったるナー!』『かかってくるニャー!』

「はぁーっはっはっはぁ! 怪人の登場サァー!」

 

 うごうごとうごめく化け物共を引き連れて、いきなりお互いのエース同士が激突した。

 

 クローネを置き去りに、私たちは走る。イーストエリアは大まかにいうと呂の字になっていて、私たちが今、上の□から下の□へ下っている状態だ。

私の予想通りなら、この先に控えているのは――――。

 

 

 

「いらっしゃいませ――――でーすーわー!!」

 

 

 

 

「やっぱ居るよなぁ!」

 

 通路を塞ぐように仁王立ちする、ナハトお嬢の姿があった。

 

「とぉーーーぜんっ! でーすーわー!」

 

 ばっと両手を広げ身構える、全身から立ち上る《魔力(エーテル)》、どうやらやる気は十分らしい。

 

「さあ、今こそ星組と月組! どちらが勝者にふさわしいか、雌雄を決し―――いやん!」

 

 言葉を遮るような一閃。先行したラミアが、鋭く剣を抜き放ち、斬り掛かった。

 

「――――もう、前口上も言わせてくださらないなんて、イ・ケ・ズですわー!」

 

「すまない、先手必勝を指示されていてね」

 

 軽口を叩きあうものの、両者の力は拮抗している。

 そう――《魔力(エーテル)》による強化が施された剣の一撃を。

 素手の片手で受け止めて、ナハトお嬢は、にやりと笑った。

 

「では、作戦を訂正なさいませ? 必勝は特に、捨てたほうがよろしくてよ」

「そう邪険にするものじゃないさ。―――邪魔だけはするなよ、リックの女」

「そちらこそ、巻き添えを喰らっても恨み言を吐きませんよう、ジュリィの女」

 バチリと関係ないところで火花が散って、戦闘の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

☆ ウエストエリア マーケット ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 グレープ・クレープ 星

 

「にぇっ、にぇっ、にぇっ……今頃皆、イーストに移動してるころだにぇっ」

 

 大きく膨らんだダヴィニアの背中に乗りながら、グレープはくすくすと含み笑いする。

 南側の連絡通路を通って、イーストからウエストに移動しているのだ。目的はもちろん、後顧の憂いを断つことである。

 

 もし先にウエストエリアが禁止エリアに指定された場合、滞留する毒でこちらを満たしておけば、うまく月組の連中が先に入るよう誘導して、一網打尽にできるかもしれない。

 

 逆に、こちらが禁止エリアに指定されたら、戦っている連中の背後から、ダヴィニアとグレープが襲いかかる伏兵になればよい。

 

 別に最初から戦場になだれ込んだってよいとグレープは思うのだが、少なくともクローネが退場するまでは、ダヴィニアは戦わないように、とヘクセンナハトに厳命されているのだ。

 

 命中すれば魔法少女だって悶え苦しむ《毒魔弾》をバンバンぶっ放して、気持ちよくなりたい……!

 ヘクセンナハトの言うことが常に正しいとは限らないし……と気持ちが逸りだす事既に三回目だが、その度にダヴィニアが言外に『駄目だぞ』というように体を揺らし、じぃっとこっちを見てくる。

 

 まあ子分の忠言を聴くのも親分の役目だろう。上手くこちらが風上になってくれれば、毒の粒子をばらまいて、知らず知らずの内に毒を吸わせて――――。

 

 

「…………Drrrrrrrr(どるるるるる)!」

 

 そんな事を考えた瞬間、ダヴィニアが突如、泥で膨れ上がった腕を前方に伸ばした。

 

「? どうしたの、ダヴィ――――ふああああああああああ!?」

 

 ボムッ、という爆発音と、衝撃で飛び散るダヴィニアの体。

 衝撃でぐらぐらと視界が揺れる、というか乗っかってるダヴィニアが揺れる。

 

 攻撃だ、どこからだ、と思う暇もなく、正面からココアブラウン色の大玉が、生じた埃を吹き飛ばしながら飛んできた。

 

「Drrr……!」

 

 ボンッ、ボンッ、当たる度に響く轟音と、飛び散るダヴィニアの体。

 ごうごうと何かが空気を切り裂く音が断続的に聞こえる。巻き上がる砂のむこうに、誰かが居る。

 

 

「ふたりとも、やっほー!」

 

 

 猛攻を加えながら、のんびり間延びした声でそう呼びかけてきたのは。

 《魔力(エーテル)》で編み込まれた鎖付き鉄球(モーニングスター)を頭の上で振り回す、夢見メアだった。

 

 

 

 

【マップ更新】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

☆ イーストエリア ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 クローネ・クローネ ☆

 

 魔法少女の体格は人それぞれだが、『少女』というだけあって小柄な娘が多く、クローネは一四六cm……クラスでも一番背が低い。

 

 対してフロム・ヒドゥン――怪人を名乗るこの魔法少女は、なんと一七〇cmを超える身長。これだけ長身は魔法少女の中でも結構珍しい。

 

 普段は大して気にならないし、別にコンプレックスでもないが、こと同格の相手と殴り合うとなると、話が色々変わってくる。

 何せ、体格差というのは即ち――――。

 

「にゃははははははははは!」

「ハァーッハッハッハッハァ!」

 

 《魔力(エーテル)》で強化された拳と蹴りが乱れ合う。

 お互いの防御の隙間をくぐって打撃のぶつけ合いだ。

 顔面狙いの拳を弾く、すぐさま回し蹴りが飛んでくる。

 伏せて避けて、勢いのまま前転しながらかかと落とし――――素早く飛び退き距離を取り、そしてすぐさま突っ込んでくる。

 

 本当なら《魔弾》戦に持ち込みたいのがクローネの本音だが、フロムは現状の優位を認識しているらしく、ぴったりくっついて離れない。

 

(手足の長さがちげーにゃー!)

 

 クローネは踏み込まなければ打撃が届かないが、フロムはこちらの手足の長さの外側から打撃を加えてくる。全く厄介極まりない。

 

 内心で毒づきながら、クローネはぬいぐるみたちを操る。

 応じるようにフロムの魔物共も動き出す。

 お互いが従える兵隊がぶつかるのはほぼ同時。

 魔物の鋭い爪が、《魔力(エーテル)》で強化されたぬいぐるみを引き裂く。その背後から二体のぬいぐるみが群がって、魔物の首をへし折る。

 

『シャギャアアアアアアアアアアア!』

 

 その内一体が、ぬいぐるみの妨害を抜けてクローネに迫った。後ろから羽交い締めにするように手足を絡めてきたのを、

 

『邪魔だナー!』

 

 左手のうさぎマペットが殴って吹き飛ばす。クローネが片手にそれぞれつけているこの二体は、普段手慰みで量産しているぬいぐるみたちとは違う特別製だ。 

 魔法少女のコスチュームは、自身の《魔力(エーテル)》を元に専門の職人が作る特別なもの。

 体の一部の様に、《魔力(エーテル)》で強化できるようになっている。つまりエーテルパンチ。

 

「この戦いにつれてきた魔物共は、強い個体を厳選したのだが、さすがサ!」

 

 そんじょそこらの魔法少女なら、一撃で仕留められるクローネのぬいぐるみと渡り合えるのだから、つまりそれぐらいの性能があるということだ。

 

 ――もっともそれですら、哀れな魔物はクローネに一瞬の隙を作るだけで、儚い命を散らしてしまう。

 

 が――――同格の戦いにおいて、一瞬の隙とはすなわち。

 

「だがね! ――――――魔物を生み出す怪人が、その魔物より弱いわけはないサ!」

 

 …………致命傷になりうる。

 

「ぐえっ!?」

 

 長い指で顔面を思い切り、鷲掴みにされた。クァトランにもよくやられるアイアンクローだが、込められた力は完全に握りつぶすつもりのそれだ。

 

「フ、ヒ、ハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 たまたま真横にあった服飾店のディスプレイに思い切り頭を叩きつけられ、ガシャンと盛大にガラスが割れる音――しかしそれだけでは、この怪人(フロム・ヒドゥン)は止まらない。

 

「ハーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハ!」

 

 クローネを建物に押し付けたまま、長い脚を駆使して走り出す。外壁を砕き、柱をへし折り、おろし金で大根おろしでも作るような気軽さで、モールの建物が崩壊していく。

 

「ハ ハ ハ ハ ハ――――――――!」

「ぎゃっ、ぎゅっ、げっ、ごっ、がっ!?」

 

 視界が揺れるどころじゃない、頭が文字通り砕けるような衝撃を連続で感じながら、クローネは無理やり《魔力(エーテル)》の糸を絞り出した。

 ぬいぐるみ達がフロムを追う。

 小さい分身軽で、速度だけなら荷物(クローネ)を抱えたフロムより上

――――。

 

「ボク様とキミの違いを教えてあげるサ! クローネ!」

 

 お見通しだ、と言わんばかりに、フロムはその場で跳躍した。

 当然、建物にクローネを押し付けたまま――つまり破壊方向が横から縦になった、突き上げる衝撃に加え、進行方向の建築物(しょうがいぶつ)に挟まれて、内臓が悲鳴を上げた。上下左右の区別がつかなくなる、自分が今どこにいるかわからない。

 

「キミの眷属はアナログ操作、あれはあくまで驚異的な処理能力でキミが直接操っているにすぎない! 一度に何十体ものぬいぐるみを同時に操作しながら戦えるのは驚愕に値するがね! 操る余裕さえ奪ってしまえば(、、、、、、、、、、、、、)問題ないのサ!」

 

 それでも追いすがろうとするぬいぐるみを、魔物たちが抑え込んだ。群がり、引き裂き、原型を留めなくなるまで破壊する。あそこまで壊せば、もう布と綿の塊だ、ぬいぐるみじゃない。

 

「対してボク様の愛しき魔物共はオートマティック! 操作に意識を割く必要はなく、例えボク様が死んだとしても自分で判断して行動する!」

 

 二階の店舗も破壊して、クローネの頭を掴んだまま跳躍。勢いよく回転し――――。

 

「優劣を競っているのではないサ! シチュエーションに合致するかどうか! この戦い、この戦場においてはボク様のほうが有利であると、そういう話サ!」

 

 ――――硬いタイルの地面に、思い切り叩きつけた。

 





【挿絵表示】


【フロム・ヒドゥン】
クロムローム魔法学園 高等部一年星組所属。

自称“怪人”

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