魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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11-5.月組(ルナ・クラス)vs星組(ステラ・クラス)!

☆ イーストエリア 南部 ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 ルーズ・リック ☆

 

 二人をおいて逃げるのが、とても心苦しい。役割がない以上は仕方ないが、特にラミア……《集団戦(マギアパーティ)》では既に何度も戦闘を重ねている、心配だ。

 

 表立って支えることも、助けることも出来ない自分が憎らしい。

ともすれば、側で戦えるリーンのことを、羨ましいとすら思ってしまう。

 

 ……二人の恋は、禁断である。

 

 リック家とジュリィ家の軋轢は、もう数え切れないほど昔から続いていて、なかったことにするには、流れた血が多すぎた。

 

 今の世代の自分たちには関係ないじゃないかと、言い捨てられない程には。

「いけませんわ……っ」

 

 余計なことを考えてしまった、集中せねばならない。ラミアとリーンが難敵を背負ってくれている以上、与えられた役目を全う出来ずして何が高貴なる使命(ノブレス・オブリージュ)か。二人に合わせる顔がない。

 

 リーンの話では、恐らくこの辺りの建物に、ターゲットが潜んでいるはず……らしい。

 

「…………」

 

 左手のスフィアから《魔力(エーテル)》を取り出し、家宝の杖……〝栄光なる(エリエラ)リック〟に注ぎ込む。

 

 身の丈程もある巨大な《魔弾》を生成し、とりあえず近くの建物にぶち込んでみた。

 

 大玉が通過した部分が削り取られる様に破壊され、ずずず、と床ごと地面に沈み込み、爆発。

 

 建物が吹き飛び、まず一棟が消滅した。どうやら中には誰もいなかったらしい、じゃあこっちの方かしら、と杖を角の宝飾店に向けた瞬間。

 

「きゃーーーーーーーー! あたったら絶対死ぬーーー!」

 

 バンッ、と扉を開けて、ルーズよりも色の濃いピンク色をした、魔法少女が飛び出してきた。

 

「あら、イチゴ様、ごきげんよう」

「ごきげんようルーズ姫――あの、一応聞くけど、お願いしたら、見逃してくれたりする?」

「しませんわ♡」

「だよねーっ!」

 

 ボンッ、ボンッ、と、当たれば高出力で相手を爆散させる《魔弾》を背中を向けて走るイチゴに向かって容赦なくぶっ放す、当たれば確殺、避けられても障害物は吹き飛ぶ。

 

 威力はあるが弾速が遅いのがルーズの《魔弾》の欠点で、《集団戦(マギアパーティ)》における本来の役割は『固まってる相手をまとめて一掃』なのだ。

 

「きゃーーー! いやーーー! ナハトの馬鹿――! 誰もこないって言ったのにー!」

「待ってくださいまし! せめて一人は片付けないと点差が縮まりませんのよ!」

「確殺宣言じゃん! ……ね、ね、いいこと教えてあげるから、ちょっとだけ待たない?」

「後で控室に戻りましたらゆっくりと聞かせていただくということで……」

 

 《魔力(エーテル)》を杖に込めて打ち出すまで五秒。威力比を考えれば驚異的なスピードと言ってよい、この大火力を雑に振り回せるのがルーズの強みだ。

 

 逃げる方向に一発、後から追いかける形で一発、こちらはカーブする動きを先行入力しなければいけないので少し時間がかかる――――。

 

「私の居た角の店内に、フロムが残したでぇ~っかいタマゴがあるんだけど!」

 

 イチゴが苦し紛れに発した一言に、ルーズは一瞬だけ、動きを止めた。

 それは、リーンがミーティングの段階で警戒していた『モノ』だったから。

 

 本当にあったんだ、という驚きと、それを知った以上、破壊せねばならない、という焦燥。優先順位をどうすべきか――――僅かに思考が逸れた瞬間。

 

「今だっ」

 

 イチゴはデコメガホンを構え、息を吸い込み、

 

「わっ!」

 

 と叫んだ。大きな声ではあったが、指向性のある衝撃波が出るわけでも、ビームが出るわけでもなかった。

 

「っ!」

 

 ただ――――その音を体が認識した瞬間、頭の中が『歌』で埋まった。

 

 

 

 

 

 

 ●ストロベリー☆エール(作詞作曲編曲歌:明星イチゴ)

 

 ストロベリー! エール!!!!(エコー)

 

  (Aメロ)

 どっかんってやらかして、失敗しちゃった日はがっくり!

 でも、窓の外を見て? 朝の光がキラキラって

 キミの背中を押してるよ!

 ちょっとくらいヘコんでも ドンマイ☆もう一回チャレンジ!

 泣き虫な君は昨日でサヨナラ! 大丈夫、私の声を聞いてみて!

 キミが頑張ってるの、私はちゃんと見てるから!

 

  (ここからサビに突入しますが以下略)

 

 

 

 

 

 

「余計な情報が入ってきましたの――――っ!」

「よし、今のうちっ!」

 

 思わず頭を抱えてしまう――それは、逃亡を許すには十分な隙だった。

そそくさと背を向けて、イチゴは連絡通路を抜けて、ウエストエリアに向かって走っていく。

 

 イチゴの固有魔法(オリジン)、《声に想いを乗せる魔法(イチゴ・マジック)》は集団を指揮するのに適した魔法だが、より強烈な指向性を持って行われる切り札がこれだ。

 

 一言に過剰な情報を乗せて相手の頭に叩き込むことで、脳の処理能力をパンクさせてくるのだ。今ルーズの頭に入ってきたのは、イチゴのオリジナルソング(全五分二十五秒)の歌詞と曲だった。厄介なことに今も頭の中でぐるぐるリピート再生している、しばらく消えないかもしれない。

 

「…………うう」

 

 イチゴが向かった先……ウエストエリアには今、メアとグレープ&ダヴィニアが交戦している最中のはずだ。一対三になってしまったら――――。

 

「…………本当に、驚きですわ」

 

 ――――全てが、語辺リーンの作戦通り(、、、、、、、、、、)だということになる。

 

『イチゴさんがもし逃げたら、追わなくていい。むしろ、ウエストエリアに追い込めるなら、追い込んでもらったほうが助かるかも。それよりも――』

 

 自分たちのクラスで……いや、魔法少女全体で見ても、彼女の戦闘力は、ものすごく失礼を承知で――ほんっとうに、大した事ない。

 そう、大したことないのだ、誰であっても圧勝できて、誰にも勝てない魔法少女。

 

 なのに、自分たちは彼女が指揮を執ることに異論を挟まなかったし、従うことに疑問も感じなかった。ルーズ自身を含めて、魔法少女というのは大抵は我が強く、わがままな物なのに。

 

 変わり者で、斜に構えていて、なのにいつの間にか輪の中心に居て、自分の出来ることをきっちりとやる、そんな不思議な魔法少女。

 

「……いえ、タマゴの処理が最優先、ですわね」

 

 だから、自分もすべきことをせねば、と思うのだ。

 立ち上がり、スカートの汚れを払って、イチゴが潜んでいた店舗に目を向ける……と同時。

 

「あ、ルーズ姫!」

 

 バタバタと駆けてくる、二人分の足音が聞こえた。

 

「リーン様、ご無事で!」

 

 どうやら、ヘクセンナハトを撃破出来たらしい。リーンの後ろから小走りでやってきたラミアの姿……ああ、傷だらけだ。鎧もあんなに凹んでいる。痛かっただろう、辛かっただろう、今すぐ抱きしめて慰めてあげたい……しかし、それは許されないのだ。この試合は世界中に中継されていて、お互いの父母にも、親族一同にも、きっと届く。努めて険悪な顔を見せ、

 

「あら、あなたも無事でしたの。無様にやられていればよかったのに(ああ、そんなに傷ついて……あなたが無事で良かったわ!)」

「それはこちらのセリフだ……敵を取り逃がしたのか? まともに仕事もできないとは(私の傷なんてどうでもいい、君に痛みがないのなら……嗚呼、よく深追いしなかった)」

「あら、作戦を聞いてませんでしたの? 全て予定通りですわ(ええ、だって……また貴女に会えると信じていましたから)」

 

 冷たい会話の中に潜ませる副音声も、今ではすっかり自然にやり取り出来るようになってしまった。間に挟まれるリーンには……申し訳ないと、心から思うのだが。

 

 今もほら、遠い目をして空を見ている……。

 

「リーン様、イチゴ様が……」

 

 茶番に突き合わせるのも申し訳ない、とかいつまんで状況を説明すると、リーンはしばし沈黙した後、

 

「よし、タマゴ壊しにいこう。それと、二人とも」

「はい?」「どうした?」

 

 あー、と少し言い淀んでから、しかしリーンは……ラミアとルーズからすれば、とんでもないことを言った。

 

 

 

 

 

「もし―――――――になったら―――――――して―――――――欲しいんだけど、出来る?」

 

 

 

「それは……その、不可能ではない、とは思いますが……」

 

 嘘だ、実現可能だ、何せ試したこと(、、、、、)がある。

 

「しかしリーン、それはつまり、この女と……」

 

 ラミアの顔にも動揺が見えた。しかし、まさか衆人環視の前で――――。

 

「二人の仲が悪いのは重々承知だけどさ」

 

 リーンは非常に申し訳無さそう――――でもないな、なんかちょっと遠くを見ている。この表情はなんと表現すればいいんだろうか。ルーズには分からなかった。

 

「メアに申し訳が立たないんだ、お願い、頼むよ」

 

 夢見メア、今も一人で、敵を引き付けてウエストエリアで囮になってくれている仲間。

 そして、ルーズにとってのラミアのように、彼女にとっての大事な人。

 その名前を出されては、そのリスクぐらい背負えなくてどうする、という気持ちになる。

 不思議なものだ――ほんの少し前までは、世界には自分とラミアの、二人だけが居ればよいと思っていたのに。

 

「………………わかりましたわ。ご随意に」

「……リーダーの決定だ、従おう」

 

 カメラ越しに、しぶしぶ、という様子だけは見せておく。せめてもの抵抗だ。

 

「よし、それじゃあタマゴを壊しにいこう」

 

 そうして、イチゴが隠れていた店舗の中に入り、三人はそれを見た。

 

「…………」「…………」「…………」

 

 大きい。ルーズの背丈は一五〇cmもないぐらいだが、明らかに自分より背が高い。

 しかも何か、揺れている。内側からガリガリとひっかく音もする。

 有り体に言って、今すぐにでも生まれそうだった。

 

「…………壊すか」「うん」「ええ」

 

 三人の意見が一致し、ラミアが折れた剣を構えた。

 生まれる前ならばまだ、外殻ごと破壊すればなんとかなるだろう、と思う。

 が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやめになってええええええええええええええええええ」

 

 その時、何かが凄まじい勢いで地面を這ってきた。

 





【挿絵表示】


【明星・イチゴ】
クロムローム魔法学園 高等部一年星組所属。
割とよくいるアイドル系魔法少女。
集団戦で生かしておくとろくな事が無いので大体真っ先に狙われる。
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