魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
☆ イーストエリア 南部右角店舗内 ☆
☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 語辺リーン ☆
私が悪かった、ああ、私が悪かったとも。窮地を切り抜けた安心感で、離脱した所まで確認しなかった。真っ二つにぶった切って安心してた所もあるとも!
その化け物はもちろん、ナハトお嬢だった。
上半身だけの状態で、両手で這いずって追いかけてきたらしい。私はもう今後一生、テケテケを見ても驚かない自信がある、だって一度見たもん!
「よくもやってくれましたわねぇぇぇぇぇ」
「なんで生きてられんの!?」
「気合! 根性! ですわぁぁぁぁぁ!」
「一生まともな生物を名乗るんじゃないぞ!」
見たくはないが、断面を見てみると、傷口が塞がってはいるので……
「おーっほっほっほ! 褒め言葉ですわー!」
もはや一刻の猶予もなかった。ナハトお嬢とタマゴ、どっちを攻撃してもらうか一瞬だけ悩んで、私はタマゴを選んだ。
ナハトお嬢は死んじゃいないけど死に体(多分)だ、こっちに孵化される方が怖い。
「ラミア、今すぐ壊してそれ!」
「ああ!」
しかしラミアが剣を振り抜くのと――――タマゴに亀裂が入るのは、ほぼ同時だった。
「うわーーーーー!」「きゃーーーーーーーー!」
私とルーズ姫の悲鳴が重なった。横薙ぎの剣を押しのけるように、殻を割って、内側からでてきたのは、まぁ有り体に言って、化け物の中の化け物だった。
タマゴの中で体を丸めていたらしく、全長は多分三m近く。
手兼脚みたいなのが八本、一本一本が私の胴より太く、明らかに尋常ではない筋繊維が体表に浮かんでいる。
牙は鋭くゾロリとしていて、全てが独立してガシャガシャと動き、こぼれた粘液が床に触れると、即座に木材を腐らせて地面を侵食した。
極めつけは頭部だ、クワガタみたいなギザギザのハサミがついていて、あれで挟まれたら秒で両断されるだろうな、という嫌な確信がある。
多分イチゴさんの《
お…………終わった…………?
『ぎぎぎぎぎぎぎ…………』
さすがのラミアも一歩退いて、ちら、と私を見た。
ごめん、流石に打つ手ないかも……三人で仲良くやられよっか、と諦めモードに入った瞬間。
『………………ゲボェッ!』
「えっ」「えっ」「えっ」
三人で声を揃えてしまった。
孵化したての巨大魔物は、殻から這い出して表に出た後、そのままごば、と血なのかなんなのかよくわからん緑色の体液を大量に吐き出して、その場にぶっ倒れた。
よく見ると、タマゴの底の部分、下半身はまだ骨と肉がどろりとした状態になっていて……なんだろう、これって……。
「………………もしかして、孵化に失敗した?」
栄養となる《
脅威の化け物は、その力を振るう前に絶命してしまった。
「…………死んじゃったけど」
「…………そうですわねえ」
「…………実は生きてるってことは」
「…………なさそうですわねえ」
『試合開始から三五分が経過しました。五分後、ウエストエリアを閉鎖します。ウエストエリア閉鎖から一〇分後に、次の閉鎖エリアが発表されます。続けて、現在の生存者と、得点を発表します――』
その瞬間、状況を見計らったかのように、アナウンスが鳴り響いた。
『クロムローム魔法学園一年月組、八点、クロムローム魔法学園一年星組、九点――――』
……ああ、クローネがフロムを倒しているようだけど、メアもやられてしまっている。
でも、この状態のナハトお嬢なら三人で囲んで棒で叩けば流石に退場まで追い込めるだろう、そうすれば点差は――――。
「おーっほっほっほっほ!」
アナウンスの声に、私は安堵した……それはつまり、油断という意味だ。
先程のミスなんてこれと比べたら可愛い、致命的な失敗だった。
突如上半身だけで高笑いを始めたナハトお嬢が、
「――――
両腕を床に叩きつけ、跳躍し――クリーチャーの死体の上にべチャリと着地した。
「? 何し、て―――――…………あ」
ナハトお嬢の
ただ唯一、生物だけは対象外、
じゃあ、
さっき見たじゃないか、ナハトお嬢は――他の魔物と同化して、尾を生やしていた。
そもそもナハトお嬢の身体――ツギハギだらけの皮膚、強固に筋繊維、形の違う眼球。
全部全部、元は戦死してしまった他の魔法少女の肉体を取り込んだもので――――。
「おーっほっほっほっほっほっほっほ!」
死体になったはずの化け物の身体が、ギチギチと動き出す。
フロムの魔物は死ねば塵に還るが消滅するまでのタイムラグがあって。
その間なら、取り込める――これも、ナハトお嬢本人が、言っていたことだ。
「――――――ここは私が食い止める!」
とっさに叫んだ、それしか無い、と思ったし、実際にそれ以外の選択肢はない。
「だ、だが――――」
「いいから早く! とっとと行って!」
今、二人の茶番に付き合ってる暇はない――どっちにしても三人まとめてここでやられるわけにはいかないのだ。
まだ完全に同化しきってない今なら、逃げ出す余裕ぐらいあるはず、私が囮になるのが一番効率的なことぐらいは、二人だってわかるはずだ。
逡巡は一瞬、ラミアとルーズ姫が駆け出した。あとは――――。
「……時間稼ぎ、できるかなあ」
「無理ですわねぇーーーーー!」
身を起こしたナハトお嬢with化け物が、私に向かって突っ込んできた。
☆ ウエストエリア 西部店舗内 ☆
☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 ダヴィニア・ヴァランザ ☆
時間は少し遡り――――。
ダヴィニアは争いが嫌いだ。出来ることなら草原に寝転がって草花を愛でるのが好きだが、自分がそれをやると枯らしてしまうのが困りもの。
「にぇっ、にぇっ、にぇっ、よく頑張ったにぇっ」
グレープ親分――かつて
決して悪い娘じゃないのだが、調子に乗りやすくて感情的なのがたまにキズだ。
大丈夫、私は親分のいい所をちゃんと知っている。苦手な野菜も残さず食べるところとか。
とにかく、二人は敵の魔法少女を追い詰めていた。強力な大玉をブッパしてくる相手だったが、ダメージというものがさして意味をなさない汚泥の身体を持つダヴィニアとは相性が悪かった。こればっかりは仕方ないと思う。
「Drrrrrrr……」
お疲れ様、よく頑張りました。そう労いたいけど、やはり意味のある言葉にならない。不便な身体だ。だが、これが仲間たちの役に立つなら悪くない。
現在地はウエストエリアの、H字の左側の、一番下だ。よくここまで逃げおおせたものだが、途中、グレープ親分の《毒魔弾》を脚に喰らい、ついに動けなくなってしまったようだ。
「はっ、はっ、はぁ……あっ……」
全身を痛みと高熱が襲っている事だろう。放っておいても辛いだろうし、なるべく苦痛のないように退場させてあげようと、ダヴィニアは腕を伸ばした。
「Drrr……」
「はぁ……はふ、うう、これまでかぁ……うん、ありがとね、ダヴィニアちゃん、こういう時、なんていうんだっけ……」
「
グッドゲーム、と言おうとして、やっぱり言葉が形にならない。ちょっと悲しい。
しかし、追い詰められ、これからやられるはずの、毒で苦しいはずの敵は、あ、と声を上げた後、えへ、と笑顔で、こちらを見た。
「それだ、ぐっどげーむ!」
「Drrr……!」
発音(のようなもの)から意味を汲み取ってくれたみたいだ。通じ合ったようでとても嬉しい。腕の一部を固めて、べしゃん、とメアの体を押しつぶす。
「にぇっ、にぇっ、にぇっ! やったにぇ! ダヴィ!」
「Drrr……」
二人で挙げた成果だ、嬉しくて当然。ダヴィニアも嬉しい。
そして、ちょうどその瞬間、
『試合開始から三五分が経過しました。五分後、ウエストエリアを閉鎖します。ウエストエリア閉鎖から一〇分後に、次の閉鎖エリアが発表されます。続けて、現在の生存者と、得点を発表します――』
アナウンスが鳴り響いた。グレープが『にぇっ!?』と悲鳴を上げた。
「た、大変だにぇっ! ダヴィ! 早くあっちに戻るにぇっ!」
「Drrrrr…………」
ウエストエリア、つまり今自分たちが居るエリアが禁止エリアになる。時間が来るまでに離れなければ、強制離脱だ。向こうに点は入らないが、生存点は獲得できなくなる。
……だから、夢見メアはここまで二人を
ダヴィニアはゆっくり身を倒すと、頭を低く下げた。グレープの身体がすってんころりんと転がって、落ちた。
「にぇっ! ダ、ダヴィー、どうし……」
「Drr…………rr……」
ダヴィニアは首を横に振った。膨大な質量を秘めた汚泥の身体は、強力で頑丈で、やられることは殆ど無いけれど、動きは緩慢で、走ったり急いだりすることが出来ない。
ダヴィニアの速度では、ここから
「にぇっ!?」
実を言うと、メアの狙いがこれであることは気づいていた。気づいていたのだが、頭に血が上ったグレープにそれを伝えるには、少し余裕が足りなかったのだ。
それに、もうちょっと時間を稼がれていたら、グレープすらも巻き込まれていたはずで、実際の所、かなり際どいラインだった。ダヴィニアの分は引かれてしまうが、グレープが生存できれば差し引きでは一点有利。策に引っかかりながらも、ちゃんと仕事をしたと言える。
「ダ、ダヴィー! 嫌だにぇっ! 一緒にいこうよぉ!」
ひし、と身体が汚れることをいとわず、グレープが抱きついてきた。そう思ってくれるのは嬉しい、しかしこのままではまずい。
「
ダヴィニアは、柔らかい泥パンチでグレープを弾き飛ばした、べちょん、と音がして、親分が尻餅をついた。
「ダ、ダヴィ……」
「Drr……」
再度、首を横に振り、行け、と示す。子分が出来る精一杯のことを、ダヴィニアはした。
「…………ご、ごめん、ごめんにぇ、ダヴィー、そうだよね、ぼ、ぼくが行かなきゃ、ダヴィーの頑張りも無駄になっちゃうんだよね」
こく、とうなずく。目をゴシゴシ擦って、グレープはダヴィニアに背を向けた。
親分が走り出すのを見届けて、ダヴィニアは力を抜いた。
クラス一丸となって勝利を目指す……今までなかったことだけど、これがなかなか楽しかった。放課後の練習、テーブルを囲んであーでもないこーでもないと議論する時間、言葉が発せなくとも、ちゃんと参加できていた、と思う。
「…………Drrr」
そして頑張ったのだから、やっぱり勝ちたいのだ。相手は月組、相手にとって不足なし。
頑張れ親分、頑張れ皆、と思いながら、ダヴィニアは空を見上げた。
「…………Drrrrr!?」
――――天まで伸びるかのような、巨大な剣が、イーストエリアの方から