魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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11-7.月組(ルナ・クラス)vs星組(ステラ・クラス)!

☆ イーストエリア 北部店舗内 ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 語辺リーン ☆

 

 

 客観的に見て、この化け物を一分間足止めできた時点で、大健闘じゃないだろうか。

 

「ええ、本当に。――――瞬殺の予定でしたもの」

 

 もうね、このバケモン、火は吐くわ酸は吐くわビームも出るわ爪は伸びるわ。

 室内だからあれだけど翼も生えてるから多分飛べるぞこいつ。

 で、今は腹部のハサミに文字通り挟まれて、身体が両断されかけてる所。

 

「ナハトお嬢さぁ…………どこまで考えてたわけ…………!?」

 

 有り余る《魔力(エーテル)》で作り出した《防壁》でなんとか耐えているけれど、これは身体を守れているわけじゃなくて、万力に対して綿でクッションを作ってるようなものだから、本当にただ両断されてないだけ、って感じ。

 

 少なくとも、この拘束からは絶対に逃げられない……逃げられる可能性は、存在しない。

 

「これは奥の手も奥の手、秘蔵の一手でしたわよ。間に合うかどうかもわからないけど、一応仕込んでおいた保険のようなものですわ。それを使わされてしまったあたり、さすがと褒めるべきなのでしょうが」

「そりゃ何より…………ぐえっ」

 

 まずい、中身が出る。色んな死に方をしたことがある気がするけど、内臓全部吐き出すか、上半身下半身真っ二つは初めてかもしれない、最悪な二択だ。

 

「ど、同級生を真っ二つにして心は痛まないのか……!?」

「わたくし、先程まさに真っ二つにされましたわー!」

 

 そうだった、じゃあ駄目じゃん。

 しかし、そうなってくると……私がまだ生きていられる理由の一つに、ナハトお嬢がまだこの化け物の身体と完全に同化しきっていない……というか、操るだけで一杯一杯なのもありそうだ。

 

 元々体力も《魔力(エーテル)》も消耗していたところで、こんな複雑な器官をもつ化け物と同化してしまったのだから、そりゃあ負担も大きいだろう、多分、容量(キャパシティ)いっぱいいっぱいのはず。

 

 付け入る隙があるとすれば――――――ぐえっ!

 

「この状況でも逆転の手を考える、貴女のそういう所がわたくし、好きですわ」

「愛の告白……? 悪いけど先約が……」

「あなた方の関係に割り込もうなどとは思ってませんわー!」

 

 軽口で誤魔化そうとして、ぴしゃりとシャットされた。

 

「要するに、わたくしは貴女を舐めておりませんの。最弱といえば聞こえは悪いですが、貴女は持てる手札を躊躇なく、最大限に活用できるタイプですわ。わたくしと同じ様に」

 

 遂に私の《防壁》が耐えきれなくなった……というか、時間経過につれて、スフィアを通じて《魔力(エーテル)》がこの化け物の体を巡りだし、ハサミからもナハトお嬢の《魔力(エーテル)》が滲み出して、私の《魔力光(エーテルライト)》を侵食し始めたのだ。

 

「ですから全力で潰します。それを伝えたかったのですわ」

「そりゃ、どうも……嬉しいよ」

 

 人から評価される、という経験が少ないので、まあむず痒いことだ。

 なら…………最後の最後まで、一応抵抗、してみようか。

 

「……実はまだ奥の手があるって言ったら、信じる?」

 

「だったら見せてごらんなさいませ、わたくし、それをも打ち破りますわー!」

 

 宣言と同時にハサミが完全に閉じて、私の身体は両断された。

 同時に、集めた《魔力(エーテル)》を解き放つ。結果は、多分見届けられないだろうけれど。

 

 

 

 

 

 

 

☆ イーストエリア 北部 エリア間通路前 店舗内 ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 ラミア・ジュリィ ☆

 

 この光景はきっと中継されていて、一族皆が見ていることだろう。

例えクラスの勝敗がかかっているとしても――いや、仮にリック家が正しい側にいるのであれば、それを理由にした悪逆をも厭わない家だ、戻った後、糾弾される事は想像に難くない。

 

 ラミアとルーズが力を合わせる、という行為は、そういうことなのだ――それでも、尚。

 

「今回限りだ、《汚れた王冠のリック家(ディミドレア・リック)》」

「こちらのセリフですわ、《血濡れた手のジュリィ家(ラヴァルハン・ジュリィ)》」

 

 聞いただけで心が痛むような罵倒を送り合いながら、折れた剣を二人で握る。

 語辺リーンから与えられた最後の策は、くしくも二人が切り札としている合わせ技。

 

「《物の大きさを変える魔法(ルーズ・マジック)》」

 

 《魔力(エーテル)》を注ぎ込めば、ラミアの剣がみるみる大きくなっていく。

 

『もしウエストエリアが禁止エリアになったらラミアの剣をルーズ姫が大きくして、ラミアの固有魔法(オリジン)で入口を塞いで欲しい』

 

 それが別れ際、リーンが二人に遺した指示だった。

 

 ラミアとルーズの連携は作戦に組み込まないようにする、とリーンは事前の打ち合わせでは言っていたのに、いざ有効な場面がくれば容赦なく採用し、使い倒そうとする。

 

 全く、とんでもない魔法少女だ、彼女は。

 内心でため息を吐きながら、ルーズの力によって大きくなっていく愛剣を見上げる。

 店舗の中で魔法を発動したものだから、屋根を突き破り、建物を破壊し、それでも尚、大きく大きく、柄はもはや丸太の様に膨れ刈り、刃はそれ以上に巨大になり……やがて、自重に耐えきれず、ゆっくり傾き始めた。

 

「はぁ……っ、ど、どうぞ」

 

 使える全ての《魔力(エーテル)》を注ぎ込んだのだろう、その場でしゃがみこむルーズを……あえて冷たく見えるように、一瞥して。

 

 しかし、最大の感謝を心に秘めながら、ラミアはその剣とも呼べなくなった剣に、体ごとしがみついた。

 

「《斬撃を空間に残す魔法(ラミア・マジック)》」

 

 そして、残る全ての《魔力(エーテル)》を注ぎ込み、固有魔法(オリジン)を発動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆ ウエストエリア 中央通路 ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 グレープ・クレープ ☆

 

 子分に見送られて、グレープは駆ける。ぽてぽて走りで速度は遅いが、それでも前へ前へと進む。生き延びねば、でなければ申し訳が立たない、親分失格だ。

 

「グレープ! ダヴィは!?」

 

 中央通路で、イチゴと遭遇した。どうやら向こうから逃げてきたらしい。

 グレープが沈痛な面持ちで顔を横にふると、イチゴはうう、と目を伏せた。

 しかし今は悼んでいる暇はないのだ。

 

「イチゴ! 何やってるんだにぇ! こっちは禁止エリアになるにぇ!」

「わかってるけど、戻ったら敵が居そうなんだもーん!」

「ふ、二人で突破するにぇっ! 誰か遭遇しても、倒しちゃえばいい!」

「う、ううう……そ、それもそっか!」

 

 血気盛んにやる気十分、グレープ・クレープは猛っている。

 後一分、走れば余裕だ――――そう思った矢先。

 

「――――――何あれ」

 

 ずずずずずずず、と巨大な剣が、イーストエリアから生えてきて…………。

 

「っ! あ、あいつら、壁を作って道を塞ぐ気だにぇ!」

「ず、ずっるー!」

 

 禁止エリアに閉じ込める! なんて卑怯な作戦を思いつくんだ!

 慌てて走るが間に合わない、ズンッ……と重い音を立てて、巨大な刃がイーストエリアへ続く道を塞いでしまった。

 

「ああ……!」

 

 しかし、絶望したのは一瞬。

 せっかく巨大化して道を塞いだ刃は、すぐにシュルシュルと萎んでしまった。

「……あれ?」

 

 きょとんとするイチゴ、先程まで眼の前にあった壁がない。

 

「………………ふふ、ひひ、わかったにぇ!」

 

 グレープはによによと頬を引きつらせながら笑った。

 

「あれだけのサイズを巨大化させて、《魔力(エーテル)》がそう長く保つはずがないにぇっ! 試合も後半戦だし、きっと、使い切っちゃったんだにぇ!」

「あ、そっか。そーよね、《魔力(エーテル)》だって無尽蔵じゃないし」

「ひひひっ! 《魔力(エーテル)》が切れてるなら怖くないにぇ! 居場所もわかってるし、乗り込んで倒して――――」

 

 そうして一歩踏み出した所で――――。

 

「――――――まったぁ!」

 

 イチゴが叫び、グレープの来ている服の襟を掴んで引っ張った。

 

「ぐにぇっ!?」

 

 蛙を潰したような声、しかしそれが功を奏したと言える。

 体を後方に引っ張られることによって、伸びた脚が先に前に出て、一部だけイーストエリアに侵入した瞬間。

 

 

 

 

 靴の先を、斬り飛ばされた。

 

 

 

 

「――――――にぇ?」

「…………う、嘘でしょぉ」

 

 よくよく見れば、そこには〝壁〟があった。《魔力(エーテル)》で出来たオレンジゴールドの壁。

 イチゴは足元に落ちていた建物の破片を拾って、軽くそれに向かって投げてみた。

 ずば、と勢いよく両断されて、ぼたりと地面に落ちた。

これは、固有魔法(オリジン)だ。空間に斬撃を、つまり刃が通過した場所(、、、、、、、、)に、当たり判定を残しておく魔法。

 

 どれだけ大きかろうと、折れていようと、刃は刃、剣は剣。

 持って振るえば斬撃だ――例えそれが、道を塞ぐほどの大きさの刃の通過後であっても。

 

「わ、私たち、閉じ込められた……!?」

「に、にぇっ!?」

 

 

 

【マップ更新】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

「――――待って、でも、私たちがここで退場しても相手に点は入らないわ。向こうは六点スタートで、フロムがやられて七点よね。フロムを倒したクローネさんと……ラミアさんとルーズさんは間違いなく生き残ってるから、最低でもプラス三点…………」

 

 残り僅かな制限時間、イチゴは指折り計算を始めた。暫定も含むけれど、間違ってはいないはずだ。語辺リーンが曲者で、イチゴはこの試合で彼女の姿を見ていないから生存の可否は不明だが……。

 

「ぼ、ぼくらの点数は?」

「二クラス残った時点で八点、メアちゃんは倒したから九点、誰でもいいからヘクセンナハトが倒せば……一〇点、追いつける!」

「に、にぇっ! まだ試合終了まで一〇分以上あるにぇっ、狙い通り(、、、、)、孵化させたタマゴの中身をヘクセンナハトが取りこんで〝完成〟していれば、なんとかなるはず!」

 

 事前の練習でも一度試してみたが、あの形態はまさに無敵だ、負担が大きいのは確かだが、あの姿なら戦いを重ね消耗した他の月組のメンバーを蹴散らすのは造作もない――――。

 

 思考がそこまで及んだ時、禁止エリアの指定時間が訪れた。

 グレープ、イチゴ、離れた場所にいるダヴィニアが、強制退場となり、そして。

 

 

『試合終了――――第二十四回、『大魔爛祭(マギアラフェスタ)

集団戦(マギアパーティ)》の優勝チームは――――』

 それと同時に(、、、、、、)アナウンスが鳴り響いた(、、、、、、、、、)

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ 月組 控室 ☆

 

 ハサミギロチンを喰らって真っ二つになった体も、完全に元通りになっていて、傷も痛みもまったくなかった。

 

 首飾りの安全機構、本当に便利だなぁ……。生産にコストが凄くかかるらしいのと、事前に準備した特定の結界の中……今回でいうと試合会場……でしか使えないから、《魔界》や《迷宮》攻略では使えないのが非常に惜しい。

 

 これが恒常的に使えれば魔法少女の生存率はぐんと上がるだろうに……それはさておき。

 

「リーンちゃん!」

 

 隣に座ったメアが、私の手を握り、

 

「ん」

 

 私もそれを軽く握り返して、ディスプレイに表示されたスコアを見る。

 

 ・一位 クロムローム魔法学園一年月組 一一点(、、)

 

 二位の星組が一〇点、それから一校ずつ順位が発表されていき、最後に選手名と脱落時刻、各得点のスコアの集計がずらりと並ぶ。

 

 私は自分の名前を目で追って、その横にある数字を確認し――優勝が決まった後だと言うのに、それでもほっとため息を吐いた。

 

 

 ・語辺リーン 如月塚ヘクセンナハト 撃破 + 一点 

 

 何せ、私の奥の手が発動したのは、体を真っ二つにされて退場する寸前だったから、結果を確認出来なかったわけで。

 

「皆も、お疲れ様」

 

 控室に戻ったクラスメートたちに改めて向き直る。クローネは疲労からかベンチにぐったり横になって言葉なく片手をあげた。ルーズ姫とラミアは、もうお互い距離をとっていた。

 

「これ以上、誰か一人でもやられてたら負けだった。皆頑張ったよ、ありがと」

 

 いや、お礼を言うのも違うのかも知れないけど、一応作戦を立てた身としてはね。

 

 とにかくこれで、ノルマ達成だ。クラスの総合優勝に大きく貢献できたはず……卒業して公式にデビューした際の魔法少女ランキングの初期値も、ぐっと上がるはずだ。

 

いや、ノルマどころじゃないか……同一大会での《箒競争(ブルームレース)》と《集団戦(マギアパーティ)》の連覇は、確か第三回以来じゃなかったっけ。

 これでクァトランが《個人戦(スターダスト)》を勝ち抜けば――史上初の、三種目完全制覇だ。

 

 …………もしかして結構歴史的な偉業の一端を担ってしまったか? んふふ。

 

「リーンちゃん、笑い方ちょっと気持ち悪い」

「幼馴染に向かってなんてこと言うんだ」

「幼馴染を捨て駒にしたくせに」

「適材適所だよ適材適所、メアは八〇点の動きをしてくれたじゃない」

「一〇〇点じゃないの!?」

「一〇〇点はグレープを倒しつつダヴィニアから逃げ切ることだけど……」

「要求ハードルが高いよぉ! ボク凄い頑張ったのに!」

 

 ぽかぽかと叩いてくるメア、冗談だって冗談…………待って痛い痛い。割と本気で《魔力(エーテル)》込めてる…………痛い! ごめん! ごめんってば!

 じゃれあっている私たちを見て苦笑しながら、ラミアが言った。

 

「……優勝は喜ばしい。未だに信じられんが……しかし、リーン?」

「ん?」

「キミはどうやってヘクセンナハトを倒したんだ? はっきり言うが……あれは無理(、、)だろう」

 

 無理、無理か……いや、そうだよなぁ。フロムとナハトお嬢、星組最強の二人が、最大出力を費やして実現した狂気の合わせ技は、クローネが万全だったとしても厳しかったと思う。

 

 あれと戦って勝てるのは、それこそクァトランくらいだろう。

 それを踏まえた上で、私は口元に指を立てて、ウインクして言った。

 

「内緒」

「……………………」

 

 めっちゃ怪訝な目で見られた……ううん、この戦いを通じて培った絆とか信頼みたいなものがふわっと瓦解していく感じがあるぞぉ。

 

「ま、後で映像記録(ログ)でも見てよ。私も正直、結構しんどい」

 

 普段あまり使わない頭をフル回転したし、まともに対面したら即死確定な各校のエリートとドンパチやるハメになってずっと緊張してたし……初期配置にも恵まれたな。

 

 一番角スタートだったけど、先に他の学園同士がぶつかりあってくれる位置だったから、悪巧みをする余裕があった。

 

「お疲れの所申し訳ありませんが~」

「うわぁ!」

 

 本当にいつの間にか、控室の扉が開いていて、ハルミ先生が立っていた。

 

「表彰式が始まりますので、移動の方を~……と、その前に~」

 

 ててて、と近寄ってきて、一人ひとりの手をぎゅっと握って、挙げ句にボロボロと泣き始めてしまった。

 

「本当に、本当におめでとうございます~! 皆さんは、凄いことを成し遂げたんですよ~! もう、先生、凄く嬉しくて…………嬉しくて、ちょっと涙出ちゃいましたぁ~」

「なんで先生の方が泣いてるんだよ……」

「だって、みんな本当にすごくて、もう…………ぐすっ、ずびびびび……先生、もう魔法少女協会に呼び出されてねちねちお説教されても『でもうちの子たち、《箒競争(ブルームレース)》と《集団戦(マギアパーティ)》で優勝しましたが?』って言えますよぅ~」

「アンタの権威のために頑張ったんじゃないぞ!?」

「冗談ですよ~、うふふ。でも……いいですか、皆さんは、結果を出したんです~」

 

 涙を拭い、いつもどおりの笑顔になって、

 

「持てる力をすべて使って、自分だけのためではなく、仲間のために、皆のために! ……だから、誰に何を言われようと~」

 

 ハルミ先生は、私たちに向けてそう言った。

 

「ひるまず、臆さず、やり遂げたと、堂々と胸を張って、表彰台に立ってください~」

「あははは」『いいこというナー』『最初からその気だニャー!』

 

 のそのそと起き上がり、マペットをつけなおし、ニヤニヤ笑顔が戻ってきたクローネ。

 

 私とメアはともかく……クローネも、ラミアも、ルーズ姫も。

 見せたくないものがあったはずで、見られたくないものがあったはずで。

 

 確認をしたわけじゃないから、確信があるわけじゃないけど。

 多分、そういうものを全部見せて、掴み取った勝利だから。

 

「じゃ、皆、いこっか」

 

 

 

 

 ――――表彰式の会場に姿を見せた瞬間、万雷の拍手が私たちを迎え入れた。

 

 

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