魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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第四話 魔法少女は退かない。
12-1.二日目終了後の嵐


 

 『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』二日目の夕食は、ホテルのレストランでの立食ビュッフェだった。

 や、座る席もあるんだけど、皆話したり動いたりで忙しない。

 

 かなりグレードの高いホテルの、かなり美味しいメニューが和洋折衷食べ放題、ステーキ何かの類はその場でシェフが鉄板で焼いてくれるし、お寿司は注文すれば握ってくれるような場所だ。

 

「すいません、サーモンおかわり」

「お嬢さん、サーモンばっかり食べるねえ」

「好きなんですよ」

 

 私はというと寿司カウンターに鎮座して、ひたすらサーモンを貪っており、呆れたメアとレイヴンは他のエリアにいってしまった。沢山働いてお腹ぺこぺこの食欲モンスターの世話を上手く押し付けられたので良しとしよう。

 

「くんやしー! ほんっとにくやしかーっ! ファラフさんっ! 帰ったらもっかい勝負しましょう! 勝負!」

「ぼ、僕はちょっと、しばらくこの勝利の余韻に浸ってたいなあ……」

「そげなこといわんでほしいべ! おら、もう、くやしくてくやしくて、今すぐ飛びたい……飛んできていいべか!?」

「はっはっは、アイミ、ちなみに法に触れるからやめておこう!」

 

 魔法少女の《(ブルーム)》は個人が飛行できる便利な道具だけど、指定された区域以外で利用するには免許とか許可証とか煩雑な行政手続きが必要になる、無規制でビュンビュン飛んでたら危ないもんね。……アトリ、その辺の良識はあるのかよ。

 

「ところで委員長、《(ブルーム)》、大丈夫なん?」

「駄目ね……メインの加速器までボロボロ。でも試合中の損壊だから保険が効くみたい」

 

 ミツネさんと委員長は、そんな三人を少し離れたから眺めていた。

 ちなみに皆、《集団戦(マギアパーティ)》優勝をそれはそれは盛大に祝ってくれたので、背中は叩かれたし頭はぐしゃぐしゃにされて髪の毛は乱れるし、抱きしめられてぐるぐる回転させられたし、ついでにダンスも踊らされたのでしばらくは放置でいいや。

 

 ラミアとルーズ姫は、いつの間にか姿を消していたので……まぁ、多分密会でもしてるんじゃなかろうか。今日はたくさん頑張ったし、好きなだけイチャイチャしていてほしい。

 

「語辺さん! 今日はありがとう! お疲れ様!」

「おーっほっほっほ! よくもやってくれやがりましたわー!」

 

 一〇貫目のサーモンを食べ終えて、次は炙ってもらおうかな、なんて考えてたら、一つ隣の席にイチゴさんとナハトお嬢が並んで座った。

 

「おじさま! アジとコハダ、それとハモ……あら、芽葱もありますわね、これもいただきますわ! こちらのイチゴさんにはいくら、とびっこ、数の子の軍艦を!」

「あいよ、いい趣味してるねえ」

「おほほほほ! 育ちと舌がよいもので!」

 

 凄い、人生で一度も言う機会がなさそうな言葉が聞こえてきた。

 

「お疲れ様、対戦ありがとうございました。魚卵好きなの?」

「プチプチしてるのが好きなんだー。それより! いやー、悔しかったなー、あんなふうに閉じ込められるなんて思ってなかった! ……あれ、イーストエリアが封鎖されてたらどうするつもりだったの?」

「そりゃあもちろん、ウエストエリアに逃げ込んでから同じことをするよ」

 

 メアにダヴィニアとグレープを奥に引き付けておいて貰えば、逃げ込む隙も出来るだろうし……ナハトお嬢が生き残ってるとラミアの《魔力(エーテル)》を同化されてしまうから、どっちにしても彼女の足止めは必須だったのだけど。

 

「そちらが一枚上手でしたわね。わたくしたちは少々、仲間を信じすぎてしまったかも知れませんわ」

 

 早速眼の前に並べられたお寿司を丁寧な所作でつまみながら、ナハトお嬢。

 

「信じすぎたって?」

「わたくしたちは仲間が勝利すること(、、、、、、)を前提に作戦を考えました。フロムはクローネ様に勝つはずでしたし、ダヴィニアたちはメア様をもっと早く倒せるはずだった。わたくしも同様に、あなたたち三人を一人で相手どるつもりでしたもの」

 

 まあフロムは言うことを聞きませんが、と苦笑し、形と色彩の違う双眸を、私に向けた。

 

「ですが貴女は失敗も織り込んで考えていた(、、、、、、、、、、、、、)。惜しい勝負ではありましたが、究極的にはそこに尽きると思っていますわ」

「そりゃ、自分が失敗してばっかりだからさ」

 

 脂と甘みの強い厚切りのサーモンを味わいながら、私も、鏡合わせのように苦笑した。

 

「そうですわね、何より自分の失敗を顧みない、わたくし自身が一番の敗因でしたわ」

 

 お茶を一口飲んで、ふぅ、と息を吐き、おもむろに立ち上がると、

 

「くーやーしーーー! でーすーわーーー!!!」

 

 と叫び散らかした。

 

「どうやって自分を倒したのかは聞かないの?」

「自分のことですもの、おおよそわかりますわ。となると、あれは貴女の切り札でしょうから、吹聴するのもどうかと。もちろん、次に試合をするときはクラスで共有して、注意を払わせてもらいますが」

 

 なんてありがたい配慮なんだろう、ウチのクラスにもこういう思いやりのあるリーダーがいてくれたらどれだけありがたいか。

 

「私も、もうちょっと頑張る! 少しでも戦えてたら、逃げなくても良かったかも知れないもんね。……あ、そうだ!」

 

 ぽん、と手を叩いて、イチゴさんは私に向き直って座り直し、真剣な顔で言った。

「明日ね、その……そっちのクラスのことも、もちろん大事だと思うんだけど」

 結構はっきり言うタイプの彼女にしては珍しく、少し言い淀んでから、

 

「……レイヴンの事も、ちゃんと応援してあげてほしいの。凄く頑張ってたから」

「ああ」

 

 なんだ、そんなことか。

 

「それはもちろん、家族だもん」

「そっか、そうだよね、よかった」

 

 安心したようにふう、と息を吐くイチゴさん。

 

「……ちなみに、頑張ってたってどれぐらい?」

「わたくしとダヴィ、それにフロム。《個人戦(スターダスト)》に誰が出るかを考えていたわたくしたちを、片っ端からなぎ倒すぐらいですわね」

 

 ナハトお嬢は小さく微笑んだ。

 

「レイヴンさんの固有魔法(オリジン)にあんな使い方があること、知りませんでしたわ。中等部の頃は隠してたんですのね。それほど、気合が入っているということなのでしょうけど……結果論だけでいうなら、お陰で《集団戦(マギアパーティ)》に注力できましたし……どうせなら皆で一丸となって優勝しよう、という目標を保つことが出来ましたわ」

「それは、ナハトお嬢的には良かった?」

 

 私が聞くと、ナハトお嬢は笑った。

 

「もちろん! おかげで、皆、団結力がアップしましてよ?」

 

 それから少し話して、二人は他のクラスメートの所へ向かっていった。

 どうやら全員に挨拶をして回っているらしい、なんてコミュ力だ。

 

「ああ、居た居た。アンタずっとここにいたの?」

 

 その後、しばらく炙りサーモン、トロサーモン、味変の鉄火巻を挟んでスモークサーモン……とサーモン祭りを繰り広げていたら、山のようにローストビーフを積んだ皿を持ったクァトランがやってきた。

 

「ほらー、リンリン、サーモンばっかり食べてるっていったじゃーん」

「おっすリーンっちー!」『よく頑張ったナー!』『お疲れだニャー!』

 

 クローネとニアニャも一緒だった。クローネはパスタにピザにフライドチキン、ニアニャは地獄みたいに真っ赤でグツグツ煮立っている石の鍋を持っていた。熱くないのかあれ。

 

「だって回らないお寿司なんて食べる機会あんまりないし……あ、そうだ」

 

 私はクァトランの顔を見て、言った。

 

「《個人戦(スターダスト)》予選突破、おめでと。ニアニャもね」

「えへー、サンキュサンキュー!」

 

 と笑い、ピースサインをするニアニャ。一方クァトランはふん、と鼻を鳴らし。

 

「祝われるほどのことじゃないわよ、どーせ優勝するんだし。三種目総取りは史上初なんでしょ? あまり乗り気じゃなかったけど、そういうのは悪くないわ。少し楽しみになってきたわ」

「そりゃ対戦相手には不幸なことだね……」

 

 やる気になったクァトラン、という存在がどれほど恐ろしいかは身に沁みて知っているので、そういうほかない。身内としてはレイにももちろん頑張って欲しいけど……そしてどちらが勝つかを問われたら、未だに即答はできないのだけど、しかしクァトランが負けてる姿というのは――たとえ死体を見たことがあったとしても――想像つかないんだよなぁ。

 

 というわけで、《個人戦(スターダスト)》の予選は私たちの《集団戦(マギアパーティ)》決勝戦終了後に行われた。

 

 狭いエリアに二人の魔法少女が対峙、相手を倒したら、同じく一勝した次の対戦相手がすぐに現れる。それを残り一六人になるまで繰り返す――という相手ランダムの高速トーナメントみたいな事をしたらしい。

 

 レイもしっかり勝ち抜いて『よゆーですよ、よゆー』と言っていた。全学生魔法少女中、ベスト一六に、これで少なくともクロムローム魔法学園から三人が収まったわけだ。

 

「んで、リーン。悪いんだけど、明日の朝、ちょっと付き合ってくんない?」

「明日? 別にいいけど、何するの?」

「リザーバーの登録したかったんだけど、本人のスフィアを確認しなきゃ駄目らしいのよ」

「ふうん、そりゃそうだ、入れ替わりがあったら大変だもんね。――――なんて?」

 

 流れで頷いてたけど、今なんつった?

 

「だから、リザーバー。ルール上登録が必要なんだって」

「…………………………………え、誰が誰のリザーバーだって?」

「だから、アンタが私の」

「………………なんで!?」

 

 リザーバー、つまり控え選手。《個人戦(スターダスト)》で戦うのはもちろん一人なのだけど、試合前後にトラブルがあったり、予期せぬ負傷などがあった場合、不戦勝が起こらないように各選手一名ずつ、自分の代理を用意する必要があるのだ。

 

 同じクラス内であれば誰でも良いので、大体は《個人戦(スターダスト)》の枠を逃してしまった二番手だとかが入る。こっちは他の競技に出ていても問題ない……んだけど。

 

「だってクローネはニアニャのリザーバーやるっていうんだもの。じゃあアンタしかいないじゃない」

「委員長に頼めばいいじゃん!」

 

 クァトランに万が一があるとは思わないし、思いたくもないが、それでも試合に出れなくなった場合、ウチのクラスで最も個人戦に向いてる奴を出すべきじゃないのか。ミツネさんとかラミアとか選択肢は他にもあるだろうに!

 

「はぁ?」

 

 私の抗議に、クァトランはほんっとうに呆れたような顔をして、私の頭を軽くデコピンで弾いた。頭が思い切り弾け飛んだような衝撃と痛み、首がすごい伸びる感じ。

 

「痛ぁあああああああああ!」

「あのね、そもそも私、試合を欠場するつもりなんてねーから」

 

 じゃあそれこそ誰でもいいじゃないか、という私の声なき声を見透かして……いや、聞き透かして、クァトランは続けた。

 

「だったら、私の後ろにいるのはアンタしかいないでしょ」

「……………………」

 

 返す言葉を失った私の対面で、職人のおじさんが突如、せっせと指を動かした。

 金色の豪華なお皿に、分厚く切った大トロのお寿司が二貫、それを何故かクァトランの前に置いた。

 

「どうぞ」

「あら、ありがと」

 

 疑問も呈さず皿を受け取り、寿司を一口で頬張って、

 

美味(おい)し」

 

 と、年相応の女の子みたいに笑った。

 

 

 

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