魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
☆ クロムローム魔法学園 観戦席 ☆
『ご来場の皆様、長らくお待たせいたしました。これより第二十四回『
ワアアアアアアアア、という声援が一斉に会場を揺らす。ぐるりとリングを取り囲むのは、運良くこの日のチケットを手に入れられた観客はなんと七万人以上。
試合中継を見ている人数は当然のことながらより多く、テレビ中継・ネット中継、その他諸々の配信の閲覧者数は、例年通りなら十億人以上を数えるまさにメインイベント。
ちなみに私たち『
「ち、出番が後なのは面倒くさいわね」
で、クァトランとニアニャは選手控室ではなく、まだこちらのベンチに居た。
Aブロックの第一回戦、休憩を挟んでBブロックの第一回戦、もっかい休憩が入って勝ち抜け同士の第二回戦と準決勝、最後の休憩を挟んで決勝戦、という流れで、Bブロックの選手は休憩が終わるまで(あるいは敗退が決まってやることがなくなったら)自校のベンチに居てもよいことになっている。
「まあまあ、このブロックの相手が決勝戦の相手になるわけだし、敵情視察しても損はないでしょ」
「誰が相手でもかわんねーって言ってんの。てか、一回戦、アンタの友達でしょ。強いの?」
私が勝手にクァトラン・クアートラvsレイヴン・グレイヴの心配をしていて申し訳ないのだけど、そう問われたら一言。
「強いよ」
と即答した。
「へえ?」
クァトランが少し目を開く――私は、クァトランやクローネ、ニアニャという相応の規格外と親しくしていて、知っていて、それで尚、そう答えた事に、多少なりとも興味が湧いたらしい。
『それではAブロック第一試合、国立クロムローム魔法学園一年、レイヴン・グレイヴ選手対、聖イーヴィス魔法女学園二年、ミスティック・ピクニック選手の試合を開始します』
そうこうしている間に――一回戦が始まった。
☆
対戦相手のミスティック・ピクニックは可愛らしいワンピースに白いエプロンを身につけた魔法少女だった。対面するレイはいつもの黒いワンピースドレスで、片手にカラスの意匠が刻まれたタッチペンを持っている。
「よりによってクロムロームね、シャクティの言う通り」
「? あー、アンタ、イーヴィスでしたっけ。あの変な目隠し女もそうでしたけど、クロ学叩きが流行ってんですか?」
選手たちの声は《
つまり相手の魔法少女は、観客には聞かせるつもりのない言葉を口にしている事になる。
「―――シャクティを侮辱しないで。あの娘はこれからの魔法少女の規範となる、最高傑作なの。あなたたちみたいな汚らわしい、間違った魔法少女とは違うのよ」
侮蔑と軽蔑が混ざった声と、表情だった。
ウチのベンチに居る魔法少女たちが全員、思わず眉をひそめるぐらいには。
「何を基準に正しいと間違ってるを決めてるかはよくわかんねーんですけど……ま、この場合は決まってますか」
対するレイは、ひょうひょうとタッチペンを掲げた。あたかも指揮棒の様に。
「――勝ったほうが正しい、ってことで一つ」
「じゃあやっぱり、あなたは間違いだわ!」
二人が交戦の構えを見せたことで、試合開始の合図が鳴った。わああああああ、と一斉に歓声が鳴り響く。
ミスティックの全身が、濃厚なアイボリーホワイトの《
次の瞬間、そこに魔法少女は居なかった。
『――――ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
竜だ、象牙色の鱗と翼を持つ、巨大な竜。高さは三mくらいはあるか? 頭部から尾までの長さは五m以上あるかも――――変身系の
『でました! ミスティック・ピクニックの《
実況も大盛り上がり。ちなみに私たちの戦いもちゃんと実況はされてたらしい、選手には聞こえなかったけど、なんて言ってたんだろう――おっと、今はそれどころじゃなかった。
とにかく、デカブツになってしまった相手に対し、レイはあー、とやる気なさそうに肩を落とし。
「〝
軽く指揮棒をつい、と振るった。
ライムグリーンの《
一つ一つはビー玉ぐらいの大きさだが、数が凄い。数百の《魔弾》が生み出され、嵐のように襲いかかる。
「〝
驚くべきはそれら一粒一粒が、複雑な軌道を描いていることだ。波打ち、曲射、速さも遅さもすべてが違う。
『おっと! レイヴン選手、先手を取りました! 凄まじい《魔弾》の技巧だぁ!』
何せ見た目がド派手なもので、観客たちは大いに湧いた。
だが、クァトランはんん? と怪訝そうな顔で私の顔をじろりと見る。
いや、言いたいことはわかるよ……実際、ほら。
『この程度の小玉がこの鱗を貫けると!?』
ミスティックは高らかに吼えた。
本人が言う通り、象牙色の鱗はレイの嵐の様な攻撃をものともしない。
『何をするかと思えば――予選は組み合わせの妙が良かったらしい、この程度の威力、我が女学院では一年の試し打ちにも劣る!』
「そーですかー」
あたったところで弾かれて、眼球に直撃しても微動だにしない。そんな威力だから、翼を広げて被弾面積を広がっても意に介さず、口の中に煌々と明かりが灯りだす。
《
『消え失せろ!』
「あー、はいはい、大体理解しました」
それがまさに吐き出される直前。
「じゃ、これで
レイがつい、ともう一度指揮棒を振ると――――。
ぴた、と竜が動きを止めた。
『ああっ! これはレイヴン選手ピンチか――――あれ?』
観客たちの戸惑いを、実況が代弁した。
『ガっ、カッ、ガガ――――』
収束していた《
その合間に、呑気に《
「えい」
やる気のないバスケ授業で、ボールをゴールに投げるぐらいの気軽さで放った。
『ガバッ』
口の中から《魔弾》が入れば、流石にダメージ無しとは行かなかったらしく、しばらくもぞもぞと悶えた後――――動かなくなった。
『え、あ、あれ? ミスティック選手? えー…………あ、その』
《
ワンピースとエプロンはちゃんとコスチュームだったようで、あられもない姿を全世界に公開するようなことにはならなかった。ただ、白目をむいて、もう動かなかった。
『っ!
ええっ、というざわつきと動揺が会場に広がっていく。
その様子を全く意に介さず、レイはくぁ、と小さくあくびをして、ひらひらと手を振った。
「はい、おつかれおつかれ、次も頑張りましょー」
背を向けてリングを降りようとするレイ、倒れたミスティックに駆け寄る、ベンチから飛び出してきた聖イーヴィスの生徒達。
「べ」
その向こう側に居るシャクティーバに向けて、舌を出したのを、私は見逃さなかった。
「…………ファラフ」
「はひっ!?」
まさかクァトランに呼ばれるとは思っていなかったらしい、ファラフがびくっと椅子の上で背筋をぴんと伸ばした。
「
その短い問いに、ファラフはちら、と私を見た。小さく頷くと、一度息を吐いてから、
「今の《魔弾》は、
そう告げた。
「……なるほどね、ふうん……リーン」
「何、クァトラン」
「あいつと私、戦ったらどっちが勝つと思う?」
私は答えた。
「わかんない」