魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
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というわけで、ここからは私の見た試合を、ざっくりダイジェストでお送りしよう。なにせ選手が多いから長い長い……あ、全員呼び捨てなのはどうかご了承願いたい。
Aブロック二回戦、ヴァミーリ高等学校・魔法少女科二年の
「甘いわね、私は《魔弾》すらつかめるのよ!」
威力の強弱に関係なく掴み、投げ返せる、それがマユミの真骨頂のようだ……しかし。
「なんでも? 違うね」
「存在しないものは、掴めない」
《
三回戦、ルード・ゴード魔導院唯一の《
『なんと二人は小学生時代の先輩後輩同士で、同じ剣道道場に通っていたそうです! お互い強くなって《
という感動的なエピソードとともに始まった戦い。実況を聞く限り、固有魔法はそれぞれ《
二人共、武器は日本刀で、数多の暴力と技巧の追求による戦いは、制限時間三〇分をフルに使いかけるほどの激戦の末、サクラ選手に軍配が上がった。
「やっと――二勝目だよ、モネカ」
「次は私の一〇一勝目だ、サクラ姉」
戦いが終わった後、そんなやり取りを経て二人が握手する姿は清々しいスポーツマンシップに溢れ、大きな拍手が巻き上がった。私もちょっと拍手した。いい試合だった。
隣を見ると、クァトランが目元を拭っていた。いや、こういうのに弱いのかよ。
「お嬢泣いてるー!」『響いちゃったナー!』『ソワソワしたニャー?』
「うっさい!」
そして四回戦、私立アイフィス魔法大学付属高等学校二年、エリーサベル・ベル選手と対峙するのは――――――。
「では――――正しき規範を見せるとしよう」
魔法少女の最高傑作、聖イーヴィス魔法女学院三年――シャクティーバ・シュラクシャリア。
彼女がリングにあがった瞬間、場の空気が凛、と張り詰めた気がする。
対峙したエリーザベルは、青いゴシック調のドレスに身を包んだ魔法少女だが、既に冷や汗を流し、攻めあぐねる――というよりも、本能で察しているかのようだ。
何をしても、眼の前の相手には勝てない……そう感じているから動けない、みたいな――。
「緊張しなくていい、キミの畏れはもっともだ」
試合開始の合図がなっても対峙したまま動かない相手に、シャクティーバは口元に微笑みすら浮かべて、告げた。
「だが、魔法少女とは勇気あるもの、何が相手でも立ち向かい、己の矜持を示す事こそが、正しい魔法少女のあり方だ」
両手を広げ、恐怖や警戒を迎え入れるように、手を広げた。
「キミの怖れを受け止めよう。かかってきたまえ――キミが正しき魔法少女であるのなら」
「っ! 《
エリーザベルの背後に、《
ゴン、と音が鳴り、空間に波紋が広がる。それ自体が指向性のある破壊力を帯び、周囲に在るものを全て削っていく――――ゴン、ゴン、と鐘が揺れる度に、その威力は増幅していく。
ちなみに観客席やベンチは開催実行委員の魔法少女たちが総力を上げて、色んなアイテムを駆使し、高強度の《防壁》を常時展開しているので、基本的にこっちに被害が及ぶことはないのだけど……凄い
四度、鐘が鳴り、いよいよリングを形成する魔法の石材までめくりあげ、破壊するほどの威力になった際。
「確かに、キミの思いを受け止めた」
チカ、とシャクティーバの指先が明滅し。
エリーザベルが、
背後にあった鐘はその中央をなにかに貫かれ、大きな孔が空いて、崩壊していく所だった。
――なんだ、今の。
「…………え?」
何も見えなかった。少なくとも私の視界からは。
後ろに座っているファラフを見る……しかし、彼女も首を横に振った。
隣のクァトランは眉がぴく、と上げて……いつの間にか、頬杖を解いていた。
『出ました、シャクティーバ選手の《魔弾》……防御不可、回避不可の絶対攻撃!』
シャクティーバはエリーザベルに近寄ると、ゆっくり手を差し出し、
「続けるかね?」
そう問いかけた。
エリーザベルは数秒の沈黙の後、静かに首を横に振って、彼女の手を取って――決着。
「ありがとう、だが、キミの思いは受け止めた。この胸に刻み、先に歩みを進めよう」
こうして、Aブロック一回戦が終了した。
魔法少女の最高傑作、シャクティーバ・シュラクシャリア。
《魔弾》を文字通り、光速の領域に引き上げる絶対者。
その
☆ 個人戦 選手控室 連絡通路 ☆
☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 レイヴン・グレイヴ ☆
竜になれるのは格好いいと思ったが、だから何だという話だ。
勝利に必要なのは、別に目立つことではない。大事なのは勝つ事、立っている事だ。
そりゃあ大きな興行でもあるのだから、見た目の派手さを求められる事も理解はしているけれど、じゃあ地味な戦い方しか出来ない魔法少女はいけないのだろうか?
レイヴン・グレイヴは自分の勝利に何ら恥じることはないと思っているが、観客を冷ますのはまぁよくないよな、とちょっと自省するぐらいの繊細さは持ち合わせている。年頃の女子でありますので。
まあ、もっともこの後も、自分と戦う魔法少女は塩試合を要求されるわけで、それはもう、運が悪かったと思ってもらう外ない。
「……ありゃ」
しまった、考え事をしてたら道を間違えた、こっち反対方向じゃねーですか。
全く、ベンチに戻ってこの複雑な気分をリーンやメアに慰めてもらえないと夜しかぐっすり眠れないっていうのに。
ちぇ、と舌打ちをして振り返ると同時――――
「もう、お姉がご飯食べてるから!」
「ごめんごめんー!」
よそ見をしながら走ってきた二人組に、どんっ、とぶつかってしまった。
「きゃっ」
無警戒だったから尻餅をついてしまう、一方、相手はなんか頑丈みたいで、全然立ちっぱなしだった。ええい、こっちが軟弱みたいじゃないですか。
「わあ! ごめんなさい大丈夫ですか!?」
「お姉ってばほんとにもー! すいませんすいません!」
「いえ、別に大したことじゃ……」
慌てて謝る二人、立ち上がりながら、姿を見る……あれ、この二人、聖イーヴィズか。あの気に食わない目隠し女と同様の、白地に金糸のデザインのコスチュームだ。
天使のように明るい金髪に、青い瞳。髪型がアシンメトリーになっているが、顔もそっくり、どうやら双子らしい。仲良し姉妹は羨ましい限りだが、しかし……。
そして、向こうも恐らくこちらに気づいた……こちらの外見とネックレスを目にした瞬間、露骨に顔をしかめて、謝っていた殊勝な態度はどこへやら、一歩退いて、じろ、と敵意の視線を向けてきた。
「お姉、この人、ミスティ先輩を……」
「うん……アンタ、どんな卑怯な手を使ったのよ」
「は?」
いきなり難癖をつけられてしまった。卑怯もなにも、やるべきことをやっただけだ。
「ふつーに戦っただけですけど」
「あんなへなちょこ《魔弾》でミスティ先輩がやられるわけないじゃん! 馬鹿にしないで!」
どうやら個人的に親交がある相手だったらしい……面倒な話だ。
別にもう倒した相手のことなので半ばどうでもいいのだが、次の試合もあるので厄介事は避けたいのだ。
「アンタ、クロムロームなんでしょ! 卑怯で、最低で、間違った魔法少女たちの巣窟! シャクティ先輩が言ってたもん! アンタ達全員、魔法少女にふさわしくないって!」
「………………はぁ」
またシャクティーバ某だ。
あの女は余程慕われていて、そして余程偏った思想を学友に教えているらしい。
「だから、何が正しくて、何が間違ってんですか。誰がそれを決めんですか?」
いけないな、と頭ではわかっていても、つい反論してしまう。売り言葉に買い言葉、決着などつくはずもなく、ただ疲れて不快なだけだと理解はしているのに。
「そんなの決まってるじゃない!」
双子の片割れが、自信満々、得意満面、声高らかに言い放った。
「〝
〝
《
それぞれが〝大罪〟と呼ばれる特別な魔法を有し、この世界を侵略し、いまや八大魔界と呼ばれるようになってしまった異界の主たち。
「魔王を裏切ったなんて言われたって、信じられないわよ! 大虐殺者
ライフリング・スローター。
それがかつての安倍ハルミの名前であることを、レイヴン・グレイヴは知っていて、
「覚悟してなさいよね! 当然、シャクティ先輩が大本命だけど……イーヴィスの誰かが優勝したら、あんた達なんておしまいなんだから!」
ああ、なんだ、こいつら。
全員、目的は同じなのか。学年やクラスの枠を超えて、シャクティーバ・シュラクシャリアと同じ思想をもって、同じことをしようとしているのか。
「――――教えてあげましょーか」
だから、レイヴン・グレイヴは、す、と、カラスの意匠が刻まれた、愛用のタッチペンを取り出した。
「は? 何を」
「あんた達のなさけねー先輩が、どう無様に負けたかですよ」
「……なんですってぇっ!」
お姉、と呼ばれている方は、頭に血が上りやすい性格らしい。
詰め寄って、襟元を掴んで持ち上げてきた。
スフィアが励起し、《
「言っときますけど」
さすがにここまでやられたら、正当防衛でいいだろう。
「先に手を出したのは、そっちなんで?」
まあ、どっちでもいいし、同じことだ。
この二人はもう、
「――――がっ! あっ! はっ!」
「お、お姉!? どうし…………け、はっ!?」
二人共、揃って呼吸を荒げ、膝をついた。
ぜぇ、と深い息を吐く度に目を見開き、苦しげにうめき、胸元を押さえて、倒れていく。
「わたしの
指先に小さな《魔弾》を作る。軽く波打たせて飛ばし――それは途中で速くなったり、遅くなったりした。
「そもそもリズムってのはなんだって話ですよね、自分の
多分もう聞こえていないはずだ、痛みでそれどころじゃないはずだ。うめき声が小さくなっていく……ああ、でも殺しちゃまずいのか。
「リズムってのは波長なんですよ、波なんです。一定の周期で波打つもの、それがリズム。じゃあここで問題です」
答えが返ってこない問いを出すのは、意地悪な教師と言えるだろうか。
まあこの場合は、返す余裕がない、という話なのだけど。
「
予想通り、正解は聞こえてこなかった。
まあ仕方ない、このまま放っておいてもあれだし、そろそろ戻してあげるとしよう。
「魔法少女はスフィアがあれば生きていける……でも、だからって、それ以外が無くても大丈夫ってわけじゃあねーんですよね。食べたら胃で消化するし、空気は肺に吸い込んでるし」
タッチペンをしまって歩き出す。もう、背後の二人には興味がなかった。
だってそうでしょう、格付けは、もう終わった。
「――
《
止めることも、加速させることも、射程範囲にさえ収まれば、誰であろうと問答無用で。
「竜の心臓の位置はどこなんだよー、って、《魔弾》を当てて
ただでさえ傷ついた心だ、さらに癒やしが欲しくなる。
ベンチに戻ったら、リーンちゃん「で」遊ぼう、と、レイヴンは身勝手に次の行動を決定した。
【挿絵表示】
【レイヴン・グレイヴ】
クロムローム魔法学園 高等部一年星組所属。
個人戦予選を、心臓の鼓動を支配する『
【挿絵表示】
【
魔王
魔王を入れて八人で、それぞれ日本八大魔界を支配している……と思いきや結構代替わりなどしている。
◆
担当は「魔都マチダ」。
現在は語辺リーンの《
◆
担当は「アバシリ監獄」。
囚人達を鍛え上げ独自の軍隊を作っている。
◆
担当は「キョウト伏魔殿」だった。
魔王を裏切り《
司法取引で死刑を延期している。
◆
担当は「サカイ霊廟」。
「かみさま」へ捧ぐ生け贄を作る「人間牧場」を経営している。
◆
担当は「ハチジョウジマ冥界」。
「楽園」を作っている。
◆
担当は「奈落孔ヤマガタ」。
裏界に通じる「孔』を広げている。
◆
担当は「シコク迷宮遍路」。
単独で進入してきた魔法少女「龍宮ココロ」と無限の闘争を繰り広げて心が折れそうになっている。