魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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13-3.星降る祭典(スターダスト)

 ☆

 

 Bブロックの試合が始まる直前になって、ようやくレイが戻ってきた。

 一旦月組の面子の所へ行って、思う存分褒めてもらった後、クァトランとニアニャが出ていって空いた私の隣の席に座った。

 

「随分遅かったじゃんか……」

「すいません、ちょっと道に迷いまして」

「レイちゃん、格好良かったよ~、初戦突破おめでとー!」

「わー、ありがとうございますメアちゃん! ほら、リーンちゃん、こういう褒めを最初に持ってくるべきなんじゃないですかぁ?」

「おめでとーおめでとー」

 

 お前が負けると思ってなかったから、あんま祝おうという感じでもなかったんだよな……。

 

「で、次はとうとうお姫様ですか」

「うん、ちゃんと見て対策立てなよ……まあ、意味があるかはわかんないけど……」

「そりゃ規格外なのは知ってますけど……そんなにですか?」

「そんなにだよ。まあ……見てなって」

『それでは、Bブロック第一回戦を開始します!』

 

 というわけで、やっぱり関係ないところはダイジェスト。

 Bブロック一回戦、聖イーヴィス魔法女学院二年、ウシュム・アシュムvsアイフィス魔法大学附属三年、神門(みかど)ユニィナ。

 

「妾と相対したのが運の尽きであったな?」

 

 濃い褐色の肌に赤い瞳、ファラフに劣らないエキゾチックなコスチュームのウシュムは《砂塵を操る魔法(ウシュム・マジック)》の使い手で、自身のエーテルを細かい砂の粒子に変え、〝削り取る〟戦いをするらしい。要はエーテルそのものが、紙ヤスリの数百倍えげつない奴になるってことだ。周囲の構造物を破壊すればそれも「砂」になるので破壊力はどんどん上がる。

 

 しかし、決着は一瞬だった。

 蒼く長い髪をポニーテールに結いた神門ユニィナ選手は、鞘に収まったままの長剣を両手で構え、一言。

 

「解放、第一段階」

 

 呟きと同時に放つ横薙ぎの一閃で、砂塵が吹き飛んだ……いや、凍りついた。

 驚き、動きを止めた隙をそつなく突かれて腹部に一撃。ウシュム選手は、真価を見せることなく気絶してしまった、勝者神門ユニィナ。

 

 そして二回戦は、ついにやってきた我らがクァトラン・クアートラの出番だ。

 穏便に済ませてほしいけど、無理かもしれない。

 だって全身からすごいオーラが立ち上ってるもん。

もうね、やる気満々なことがひと目でわかる。やる気というか殺る気というか。

 一発目でド派手にぶち上げて会場を戦慄させてやるという意思がビンビンに伝わってくる。

 せめて対戦相手が生きて帰れることを祈るしか……という私の願いが届いたのかどうかわからないが……。

 

「………………?」

 

 一足先にリングにあがって、今か今かと生贄を待っているクァトラン。

 しかし、いつまで経っても相手が出てこない。心なしか、観客もざわついている気もする。

 てか、聖イーヴィスのベンチのほうが、なんか騒々しい気がする、何かあったのかな……。

 

 すると、ぴんぽんぱーん、と音がなった後、こんなアナウンスが流れた。

 

『……会場の皆様に申し上げます。Bブロック第二回戦に出場予定だった、聖イーヴィス魔法女学院二年、フェリア・エルフェリィ選手及び、リザーバーのフィリア・エルフェリィ選手両名が先程トラブルにより医務室に運ばれたとの連絡が入りました! よって……』

 

「…………は?」

『第二回戦はクァトラン・クアートラ選手の不戦勝となります!』

「ちょっ……はっ、ええ!?」

 

 まさかまさかの、《個人戦(スターダスト)》不戦勝。

 誰のせいでもないから、ブーイングとかは起こらなかったけど、観客のトーンダウンが凄まじい…………いや、それより、消化不良のクァトランが地団駄を踏むたびに地震みたいに会場全体が揺れて怖い。

 

 何かあった時のためのリザーバー制度だというのに、二人揃って倒れるとは……名前的に双子なのかな。

 

「あーあ、何があるかわかんないですねえ」

 

 レイが他人事の様にそう言った。

 気を取り直してBブロック第三回戦、次も勝手知ったる我らが道化ニアニャ・ギーニャvsアルカシェーン国際魔法アカデミア三年のマキュリエル・マーキュリースター。

 

「マキュリエルか、彼女は強いぞ」

「知ってるの? ラミア」

「中等部時代に、交流戦で何度かな。彼女の剣は空間を斬り裂く……言ってしまえば、私の上位互換だ」

 

 なるほど、《空間を切り裂く魔法(マキュリエル・マジック)》って感じかな?

 両手に水晶でできた剣を構えた美麗な剣士、マキュリエルはすでに臨戦態勢。

 対してニアニャは肩にくーちゃんをのせてヘラヘラしていた。

 

 ……今更だけど、ニアニャの固有魔法(オリジン)は《約束を交わす魔法(ニアニャ・マジック)》……メアと同じで、戦闘に寄与しないタイプなんだよな。

 

 予選は持ち前の技術と出力で勝ちすすんだみたいだけど、全魔法少女の上澄みが揃う本戦ではどうだろうか。

 

「おいおいリーンっち~、ニアニャを舐めんなよ~?」

『無礼られたら殴るナー!』『許すにゃ許すニャー!』

 

 表情から言いたいことを読み取ったらしいクローネが、後ろから楽しそうに言った。

 

固有魔法(オリジン)が戦闘に関係ねーのに、あたしと喧嘩できるのが、ニアニャなんだぜ~?」

 

 クローネの言葉通り。

 

「あはははははは! すごいすごーい! キミ、強いねー!」

「くっ! はっ! 何だ、この数、これは…………!」

 

 レイの様に本命が別にあるが故の見掛け倒し……じゃない。

 ニアニャを中心とした衛星の様に、投げナイフ型の《魔弾》が数百発、ぐるぐると回って土星の輪の様になっていた。ニアニャが手を降ると、それらが一斉にマキュリエルに襲いかかる。上下左右前後、逃げ道を塞ぐ様に追い込み、進む道を阻む様に突き刺さる。

 

「あれ、ニアニャさん、すごいことしてますよ」

「どういうこと?」

 

 後ろの席のファラフが、冷や汗を流しながらそういった。

 

「あのナイフ、《魔力(エーテル)》を三層にしてるんです、こうやって……」

 

 と、ファラフの指の間に、《魔力光(エーテルライト)》の色は違うものの、ニアニャが飛ばしているものと同じ、短剣型の《魔弾》が生成された。

 

 ……凄いっていいながら、しれっと自分も同じことするんだよな。

 

「薄い金属のような状態と、《魔力光(エーテルライト)》の中間状態を保っているんです、だから質量が存在してて……いえ、それもすごいんですけど、それを外側から薄いエーテル、濃いエーテルの順で層を作って……ほら」

 

 ナイフの一本がマキュリエルの肩に飛び、防御の為に《防壁》が展開される。

 ナイフはその防壁に触れて、一瞬だけ静止した後……ガラスを割る様に《防壁》を貫通した。

 

「外側の層が触れたものに侵食して、防御を突破して、内側の層が相手の体に当たるようになってるんです。黒い《魔力(エーテル)》をナイフ経由で直接叩き込むわけですから……」

 

 防御不能、かつ全身を急所と捉える、地味に見えるが致命の連撃、ということだ。

 

「同じものは作れますけど、僕じゃ同じ効果は出せません、本当にすごいや」

 

 ……ファラフがいると、解説ありがたいなあ……。

 当たれば相手を侵して砕く、黒い《魔力(エーテル)》の刃、五本目が体に突き刺さった時点で、勝負はついた。勝者、ニアニャ。

 

 相手選手を自分の上位互換だと語っていたラミアは、なんとも複雑そうな顔をしていた。

 

 第四回戦――――ああ、大丈夫かな、クァトラン。

 なんかトラブル起こしてないかな、リザーバーとしてついていけばよかったかも知れない。

 

 エメラリア・マジカルハイスクール三年、トゥレリア・クアートラ……例のクァトランのお姉さんvsアルカシェーン国際魔法アカデミア一年、パティ・シエル。

 

 遠目から見た第一印象だと、似てると言われたら似てるし、似てないと言われたら似てないな、だった。

 

 首元で二本のおさげを作りながら、後頭部にポニーテールを揃えた髪の毛三本仕様。

 

 豪奢な羽織のようなコスチュームに、クァトランの色をもっと濃くしたような真紅の頭髪。

 

 そして……額に位置する、ストロベリーブラッドのスフィア。

 左目の下には強者の証である、三印が刻まれている…《個人戦(スターダスト)》に勝ち残るような魔法少女ですら、これがあるのはクァトラン、トゥレリア、ニアニャ、シャクティーバの四人だけだ。

 

 即ち、相応の強者ということで―――結論から言うと、今までの中でも、最も早く終わった試合だったかもしれない。

 パティ選手が魔法の杖を構え、《魔力(エーテル)》を収束させた。

 

「《流星を降らす魔法(パティ・マジック)》!」

 可愛らしく美味しそうな魔法少女ネームに反して、かなり凶悪な固有魔法(オリジン)だ。

 

 明るい青空の向こう側で何かがチカっと光って、凄まじい勢いで会場目掛けて飛んでくるのが見えた。おいおい、これ直撃したら大丈夫なのかよ、と思った瞬間。

 

 

「『灼破(しゃっぱ)』」

 

 

 トゥレリア・クアートラが爆発した(、、、、)、かに見えた。

 

 彼女を中心に、凄まじい発光と熱量が生じた。観客席を守る《防壁》がなかったら、間違いなく全員焼け死んでいた――そういうレベルの、大火力。

 隕石は着弾前に燃え尽きて塵になり、リングの一部は融解し、空気が揺らぎ続けていた。

 

「……無意味だわ。本当に」

 

 リングの中心に立つトゥレリアは、ただ一言、そう告げた。

 《防壁》を展開できたかどうかもわからない、仮に出来ていたとしてもこの範囲にあんなもんばらまかれて、無事で済むわけがない。

 

『パ、パティ・シエル選手、安全装置(フェイルセイフ)起動確認――トゥ、トゥレリア選手の勝利です』

 

 実況の声も引きつっていた、観客たちも同じく、だ。

 

「……レイ、あれに勝てそう?」

 

 隣を見ると、苦笑いをしながら、一言。

 

「なるようにしかならねーんじゃねーですかね」

 

 

 

 





【挿絵表示】


【トゥレリア・クアートラ】
エメラリア・マジカルハイスクール 高等部三年所属。
クアートラ王国の第三王女。クァトランを毛嫌いしている。
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