魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
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お通夜みてーな空気のまま、次の試合が始まろうとしている。いや、みてーなっていうか本当にお通夜っていうか、アイデンティティである聖剣を砕かれた神門ユニィナ選手が呆然としたまま立ち上がれず、アイフィスの他の生徒たちが駆け寄って肩を支えて退場するまでの時間がいたたまれなさ過ぎて泣いちゃいそうだった。
『つ、続きましては……ニアニャ・ギーニャ選手vsトゥレリア・クアートラ選手!』
当事者を除くと、この空気の中司会進行しないといけない実況の人が可哀想だな……。
「やっほー! いえーい! ぴーすぴーす!」
そして、肩にくーちゃんを乗せたニアニャがもう全然空気読まずにこっちむけてピースしてきた。図太すぎる。
「………………」
対するトゥレリアは、変わらず無言で、表情にも変化は……いや、違う?
あれ……
『試合開始!』
開始の合図が告げられて、ニアニャはナイフ形の《魔弾》を瞬時に大量展開。
「お嬢のおねえさーん! よろしくねー? あ、それともそれとも、お嬢に会いたいかなー」
おいおい、いきなりぶっこんでくるじゃねえか。
いや、トーナメント表の名前を見たら、二人が血縁者であることは誰もがわかるだろうけど、そして一般の人はクアートラ王国お家騒動なんて知らないだろうけれど。
「……………………口を開くな」
「んに?」
「下賤、穢らわしい。忌まわしき黒、薄汚い黒……嗚呼、嗚呼!」
ごっ、とトゥレリアの周囲に、灼熱が生じた。
「その色がこの世になければ! 我が
ちっ、とニアニャの眼前で、火花が生じた。
「『
本当に、マッチみたいな小さな炎、それが一気に天まで届く紅蓮の火柱となって、ニアニャを包み込んだ。
「あははははは! あっつーい!」
ごう、と火柱の中から、元気よくニアニャが飛び出してきた。
全身をナイトブラックの《
ちなみに私の透明な《
閑話休題、ニアニャが飛び出しながら無数のナイフを放つ。
上下左右に分かれた刃の弾幕が、トゥレリア目掛けて収束して打ち出される。一本一本に時間差がつき、微妙に着弾地点が違う為、どう避けてもどれかは刺さる……みたいな悪辣な軌道。
「無為」
しかしトゥレリアは、回避を行わなかった。
ナイフが身体に当たる、その瞬間、
「んえっ!?」
ダヴィニアと同じように、身体を別の物体に置換するタイプの
厳密にはノーダメじゃない、黒い《
だから身体を通過する際に影響があるのは、その薄い方の《
あれがもし、物理的な質量を備えていない通常の《魔弾》だったら、炎に変化した流動する
ニアニャは《魔弾》を放つと同時に駆け出し、手に黒い《
が収束させていた、そのまま近接戦に持ち込もうという腹だったはずだ。
躊躇なく顔面狙いの一撃。しかしトゥレリアの身体は陽炎の様にゆらりとぶれて……。
いつの間にか背後に周り、ニアニャの頭を鷲掴みにした。
「!」
その瞬間のニアニャの行動は、迅速だった。
肩に乗せていた黒猫《
「うげっ!?」
『ぞる』
たまたま私の方に飛んできたので慌ててキャッチ。目の中の歯車がぐるぐる回る……そんな目で見ないでくれよ! ちゃんと受け止めたじゃん!
そして、その行為の意味するところはつまり――――。
「『
頭を掴んだ手から生じた紅炎が、ニアニャを焼いた。
「きゃあああああああああああああああああああああああ!」
ニアニャの口からは、聞いたこともないような悲鳴が聞こえた。
「ああああああああああ! ひいいいいいいいいいいいいいいい!」
「ちょっ、待っ――――」
安全機構は命の危機に瀕しないと発動しない。あの炎は身体を焼いているけれど、
――――ああ、なんだそれ。
ニアニャを焼くトゥレリアの嗜虐的な笑顔は、知っているそれと、よく似ていた。
『ぞる』
くーちゃんが私の腕から飛び出して、ニアニャの元に駆け寄っていく。口を大きくあけて、中から黒いものがドロリと…………ってまずいまずいまずい!
――――幸か不幸か、どっちだったのかわからない。
くーちゃんが中身を垂れ流す前に、炎が消えた。
しゅう、と煙が上がる、黒焦げのニアニャの身体。
トゥレリアはそれを、ぽいと投げ捨てた。
遠目から見ても、皮膚が無残に焼けて――特に、掴まれていた頭部に至っては、酷いことになっている。
もう、ぴくりとも動かない――――それから、一〇秒ぐらい経過しただろうか。
『
厳かに勝利が告げられた瞬間、クローネのぬいぐるみが三体、ニアニャに向かって駆け出し、身体をえっほ、えっほとベンチまで運んできた。
ニアニャが私たちの元にたどり着く頃には、
とはいえ、受けた痛みは実際のものだし、消耗だってあるはずだ。
「…………くそっ」
そりゃ、褒められた態度じゃなかったかもしれないけど、敵対しているかも知れないけど。
あそこまでやることないだろ、という憤りと……なんだかんだで、私はニアニャが負ける所も、想像してなかった。当然のように勝って、いつも通りクァトランにしばかれるんだろうな、と思っていたのだ。
「…………あははー」
むく、とニアニャが身を起こし、普段の無邪気なそれとは違う、困ったような笑顔を浮かべた。
「ごめん皆ー、負けちゃったー」
それを責めるものは、誰もいなかった。