魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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13-6.星降る祭典(スターダスト)

 

 ☆

 

『続きまして……準決勝、第一回戦、レイヴン・グレイヴ選手vsシャクティーバ・シュラクシャリア選手!』

 

 凄惨な戦いが続いたが、それでも歓声止まず、ボルテージが跳ね上がっていくのは、彼女の登場によるものが大きいんだろう。

 

 シャクティーバ・シュラクシャリア――三度目の登場。

 スター選手の存在は、場の熱を高める。彼女の試合だって、全部勝負とも呼べない一方的な塩試合だったはずだけど、それでも連覇という〝期待〟は予想以上の燃料だ。

 

 それに――多分誰もが見たがっている。

 隙間時間に軽くSNSを眺めてみただけでも、その話題でもちきりだったからだ。

 

 聖剣を片手で砕いた最強の魔法少女、クァトラン・クアートラ。

 魔法少女の最高傑作、シャクティーバ・シュラクシャリア。

 二人が戦ったら、一体どんな勝負になるのか――どちらが勝利するのか、と。

 

 そういう観点から見れば――――。

 

「うわー、アウェイですねー」

 

 誰も、レイヴン・グレイヴの勝利なんて、期待してなかった。

 得体の知れない勝利を重ねる、禁忌を犯した魔法少女。

 映像が公共の電波にのっているから、誰も口にはしないけれど、レイの黒く染まった瞳は、あいつがかつて禁じられた呪法に手を出した、明確な証明だ。

 

 その手の文化に詳しい人が少ない《地球(アースフィア)》ならまだしも、《魔法の世界(マギスフィア)》においてそれは、黒いスフィアを有することに匹敵するぐらいの――――穢れ(、、)だ。

 

 レイとシャクティーバが、一定の距離をおいて対峙する。

 

「一つ問いたい」

 

 シャクティーバが、小さく口を開いた。多分、観衆には聞こえない声。

 

「私の後輩を――フェリアとフィリアを傷つけたのは、お前か?」

 

 冷えた声だった、情けも容赦もない、敵にしか送らないだろう、温度のない音。

 

 対して、レイははて、とわざとらしく首を傾げた。

 

「すいません、寡聞にして知らない名前なんですけど……やーだぁ、そんな怖い顔しないでくださいよぉ。じょーだんです、じょーだん。最初に手を出してきたのはそっちだって聞いてないんですか?」

 

 ……クァトランが不戦勝になったの、お前のせいかよ。なにやってんだ。

 いや、別に、無条件で理不尽な暴力を振るう奴じゃないけどさ。

 なにかされたんだろうと、思うけどさ。

 

「………………私は許せないのだよ」

「はぁ、何がです?」

「正しき者が、間違った者にその歩みを止められることが」

「……あのー、前々から気になってたんですけど」

 

 レイはどうにも怪訝そうな顔で、そう言った。

 

「なんでアンタが〝正しさ〟を決めるんですか?」

 

 その返答が来る前に――――

 

『――――試合開始!』 

 

 戦闘の火蓋が、切って落とされた。

 レイがつい、とタッチペンを掲げるのに対し、

 シャクティーバは、動かなかった。

 白いレースの目隠しの向こうから、じ、とレイを見据えている。

 

「――――おせーんですよ」

 

 それがいかなる余裕から生じるものか、あるいは油断だったのか、何が目的だったにせよ。

 レイに先手を譲ってしまった以上、勝負は、もう着いた。

 

「…………っ!」

 

 シャクティーバが膝をつく。観客にどよめきが生じる。

 今までの試合と違って、《魔弾》によるカモフラージュすらない、正真正銘、直接行われた『心音天使(カデンツ)』。

 起動には、レイの《魔力光(エーテルライト)》がほんの少しだけ、相手に触れればそれでいいのだ。

 だから見た目には、ただ相手が勝手に倒れ伏すように見える。

 

「ま、どっちだっていーんですけどね。正しかろうが、間違ってようが」

 

 厳密に言うと、相手の心臓を停止させられるわけじゃない。リズムを操る魔法であって、リズムを途絶えさせたり、生じていないリズムを発生させられる固有魔法(オリジン)ではないからだ。

 

 ただ、身体機能を維持できないレベルまで遅くしたり、逆に壊れるぐらい速くしたり、それを交互に繰り返して負担を与えて、結果的に停止させたり。

心臓を握る、というのは、そういうことだ。

 

「勝ったほうが正しーんですよ」

 

 その状態でなお、レイは《魔弾》を生成した。

 『心音天使(カデンツ)』の発動をごまかすフェイントとしてではなく、相手を攻撃する為の本気の《魔弾》、高密度に圧縮されたライムグリーンの《魔力(エーテル)》はわずかに細長く、貫通力を高めた形状。

 

 それが放たれる直前で――――――。

 

 

 

「では、やはり間違っているのはキミということになるな」

 

 

 光線が、レイの肩を貫いた。

 

「!」

 

 それでも形成した《魔弾》を霧散させず、打ち返す。

 しかしその《魔弾》は、シャクティーバに触れる前に停止し、ふわ、と溶けて消えてしまった。

 

「な…………!」

「何を驚く? キミの固有魔法(オリジン)の種など、とうに割れている。私が対策をしていないとでも?」

 

 シャクティーバは悠然と立ち上がった。今度は聴衆に聞こえるように、高らかに告げる。

 

「相手の心臓に干渉する固有魔法(オリジン)、なるほど、確かに強力だ。道を誤った邪悪が、愚かしくも《個人戦(スターダスト)》で日の目を浴びようなどという思い上がりをする程度には」

 

 メアが驚きの表情でこちらを見る、私だってわかんないよ。

 なんであいつは心臓を操作されて動けるんだ。

 私の心の声が聞こえたわけでもないだろうに、その疑問に応える様に、シャクティーバは鷹揚に腕を広げてみせた。

 

「私の《光を支配する魔法(シャクティーバ・マジック)》とは、即ち魔法少女の根幹、《魔力光(エーテルライト)》を支配する力」

 

 シャクティーバの周囲に光が収束していく。一片の穢れもない、まばゆいばかりの純白(ピュアホワイト)

 

 ……《魔力光(エーテルライト)》の色は、薄ければ薄いほど他の色に干渉されやすく、濃ければ濃いほど強いとされる。

 

 その原則からいえば、白は決して強い色じゃない、むしろ私の透明(クリアー)の次には弱い色彩(いろ)と言っていいはずだ。

 

 けれど、シャクティーバが放つ光は、他の色と交わるような弱さなど一切ない。

 

 ただ白く……そこにあり続ける、穢れなき正義を示すかのように。

 

「私の《魔力光(エーテルライト)》は他の色に干渉されない――だけではない。魔法少女はスフィアを介して外部の《魔力(エーテル)》を取り込み、あるいは生成し、身体を巡らせている」

 つまり――――。

 

「血液よりもなお力強く――体を巡る《魔力(エーテル)》を、私は支配している。心臓を己で動かす事など、私にとっては造作もない」

「っ!」

 

 穿たれた肩を押さえながら、レイは《魔弾》を形成した。細かいものから鋭いものまで、一斉掃射。

 

 そのすべてが、触れる前に白い光に阻まれた。彼女の《魔力(エーテル)》は、他の《魔力光(エーテルライト)》の色彩に染まらない――だから、防御も攻撃も絶対不変。防ぐ手段も貫く手段もない。

 

 魔法少女の――最高傑作(、、、、)

 

「キミに行く手を阻まれた、全ての魔法少女が可哀想で仕方がない。輝かしい晴れの舞台で、思う存分戦いたかったろう、研鑽した力を見せたかったろう。勝ちたかっただろうし……仮に負けるとしても、己の力を使い切り、勝った相手を称賛できる、誇らしき戦いでありたかったはずだ」

 

 シャクティーバが軽く指さすと、チカ、と明滅し、それを認識した時点で、もうレイの身体が貫かれている。細く細く鋭い《魔弾》の光線。

 

「きゃっ、あっ、ぐっ」

 

 肩、脚、手、レイがなにかしようとすると、その前に光線が放たれる。立ち上がることすら出来ずに、リングの上を転がされる。

 

「たかだか一芸。便利な固有魔法(オリジン)を得て勘違いをしてしまったんだろう? これなら楽勝だと、誰が相手でも勝てると。この日の為に重ねてきた、努力を! 決意を! 誓いを! 想いを!  浅はかな願いの為に全てを踏みにじっても許されると!」

 

 パチン、とシャクティーバが指を弾く。一瞬、周囲で明滅が無数に生じ、身体を貫く光線が――同時に八本。

 

「だからキミは間違っているんだよ」

 

 次は十六本。

 

「致命的に、愚かしいまでに」

 

 次は三十二本。

 

「誰がキミの勝利を望む」

 

 ジジジ、と時間をかけて、《魔力光(エーテルライト)》が圧縮されていく。

 今までの光線が爪楊枝くらいの細さだとしたら、この《魔弾》は人の腕ぐらいの太さがある。

 

 肉体を貫くようなあの威力で、そんなものを喰らったら。

 

 

「高望みしたことを後悔し、全ての魔法少女に謝罪しろ――愚物」

 

 

 光が放――――――放たれる前に、消えた(、、、)

 

「――――む?」

 

 それは、シャクティーバの意図した挙動ではなかったらしい、怪訝そうな指をして、再度指を弾く。今度は細く長い光が――ああ、何本かも数え切れやしない。

 

 着弾まで、本当に間がないのだ、一瞬だけ光ったと感じた頃には、もう命中している文字通りの光速――――が。

 

「やぁっと……わかりました(、、、、、、)よ」

 

 それらは、レイの身体を、貫かない。

 外れたわけでも、避けたわけでもない、ただ、途中で消えてしまったようにしか見えない。

 

 体中を穴だらけにされながら、レイは立ち上がった。

 はぁ、と大きく息を吐いて、タッチペンを再び振り上げる。

 

「――――無駄な抵抗を」

 

 再度、シャクティーバが光を放つ。しかしもう、その白光は届かない。

 レイヴン・グレイヴ、秘中の秘、最後の奥の手。

 

「『色彩変遷(カラーチェンジ)』」

 

 その光がレイの広げた《魔力光(エーテルライト)》の空間に入った瞬間。

 ライムグリーンへと変じ(、、、、、、、、、、、)、レイのスフィアに吸収された。

 

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