私は女性に・・・うん、もうミラルーツでいいや。ミラルーツに自分がどんな理由で此処に来たかや自分の考え方を全て話した。ミラルーツは感心してるというか呆れてるというかなんとも微妙な表情で私の話を聞いてくれた。
・・・ただ、頷くなりなんなりもう少しリアクションをとってほしい。話してるうちに何故か泣きたくなった。此処に来た理由も馬鹿げたものだしいっそ笑ってくれと言いたい。いや、笑われたら笑われたで泣いてたかもしれないけど・・・
「い、以上が私のここに来た理由です。」
何か作文みたいになった。あぁ、さっきから恥ずかしいことしかしてないよ私。本当に死にたくなってきた。
私がネガティブ精神を爆発させてるとミラルーツが口を開いた。
「貴女、かなりの変わり者ですね。その考え方は私も好きです。共存することが出来れば嬉しい。」
「え・・・?」
思ってもみない言葉だった。誰一人として共感してくれる人なんていなかった私の考えに共感してくれる人(?)がいるなんて夢にも思ってなかった。
私は嬉しくなって上機嫌で声をあげた。
「ほ、本当ですか!?」
「ですが、貴女は私に殺されなかったとしても人間達に裁かれるのでは?」
「え?」
「貴女は特別な位を持ったハンターではないのでしょう?上の方々にそんな平凡な人間の意見は届かないのではないですか?」
まさかの飴からの鞭である。と言うより飴からの竜撃砲の気分だ。もうやめてくれ私のライフは0を吹っ切っているんだ。
まぁ確かに私は大したことのない初心者ハンターだ。防具も買えるものだし、狩猟経験なんて人工フィールドで狩ったドスランポスくらいだし、貴族の子というわけでもない本当に普通の初心者だ。
狩場には人工狩猟訓練所の森林地帯にしか行けず、本物の狩場になんて出たこともない。今此処にきたのが私の初・非人工狩場である。
「それに、脅威とみなされなかっただけと言われればそれまででしょう。」
「うぅ・・・おっしゃる通りです・・・」
今、自分が何故こんなにも無謀なことをしたのか後悔してる。本当に後悔してる。もう私は死んだほうがいいんじゃないだろうか?
私がまたもネガティブ精神に浸っていると不意に遥か彼方から羽音が聞こえてきた。
「・・・!あれはもしや・・・」
「え?ど、どうしたんですか?なにか・・・」
いるんですか?と言い切る前にミラルーツが焦り混じりに言葉を放った。
その言葉に私の質問への答えはあった。しかしそれは人間にとっては最大の敵であり、絶対に聞きたくない名だった。
「入り口の方に隠れてください!ミラボレアスです!!彼は人間に容赦などありません!」
「なっ!?ミラボレアス!?」
【黒龍】や【邪龍】と呼ばれ文献によれば過去最高の文明、シュレイド王国を3日で滅ぼしてしまい、シュレイド城の跡地に住み着くとされる最強最悪の龍。完全なる人間の敵。それがミラボレアスという龍である。
そんなものに見つかれば折角助かったこの命も欠片さえ残らずに消え失せて無くなってしまうだろう。それは絶対に嫌だ。生きてられる希望があるのに死ぬのはいくらなんでも辛い。
私は言われた通りに隠れることにした。その後すぐに空の果てに黒く染まった鱗に身を包む漆黒の龍が姿を見せた。
まだかなりの距離があるにも関わらず、私はもう黒龍の殺気に押し潰されそうだった。あんなものと戦争をするつもりなのだろうか人間は。馬鹿げてるとしか思えない。本能から恐怖が込み上げてくる。怖い。ただ、純粋に【あれ】が怖かった。
そうこうしてる内にミラボレアスは古塔に降り立とうとしていた。四本の角を生やし、禍々しい眼は水晶のように透き通っており、恐ろしくも美しいものだった。しかし、あれから発せられる殺気が恐ろしさ以外を感じさせてはくれない。
「久しいですね。ミラボレアス。」
重苦しい殺気に包まれた中で、場違いなほど美しい声が響いた。それに続きミラボレアスが降り立ち、ミラルーツと同じように人のす・・・がた・・・に・・・?・・・・・・うん。もう驚かない。何があっても絶対に。
ミラボレアスは黒髪の青年に変わり、ミラルーツと同じく古代の衣服を纏っていた。
「久しいのう、ルーツ。」
だが、声色はミラルーツと違いまるで闇のように冷たい。そして変わらずに放たれる重苦しい殺気のせいで私はきを保つので精一杯だ。
「人間が居たのか?」
ミラボレアスの放った言葉に心臓が弾けそうになる。見つかった訳でもないのに死を覚悟した。
「ええ、変わり者でしたから少し話を聞いてみたくて。」
「そんなことに興味などないわ。ちゃんと殺したんじゃろうな。」
「ええ。もちろんですよ。」
会話が怖い。ミラルーツが私を庇ってくれているのは解るのだか洒落にならないことの上、言ってる人(?)が人なので恐ろしすぎる。
「ほう、おぬしならば殺さなかったとでも言うと思っておったが。」
「時代が時代ですから。ですが殺すのは気分が悪いものですよ。」
心臓に悪い・・・バレたら確実に殺される状況で『~だと思った』とか止めてほしい。
「ルーツ、人間を殺したと言うことは『人間と共存する』のは諦めたんじゃろう?ならば、奴等を滅ぼすことに異論はないな?」
「それは・・・」
私は隠れているのに声をあげそうになった。『共存する』それは少し前まで普通だったのにもはや人間側も龍側もそれを否定するのか。と私は思うが声をだす訳にはいかない。
「まぁ良いわ。王たるぬしが人間を殺したとあらばどのみち共存など有り得ぬ話。だがもし人間側に付くなどと言いおった時にはすぐに儂はぬしを殺す。」
「わかってますよ。」
言い終えるとミラボレアスは再び龍となり、飛び去っていった。
私は人と龍の間の溝の深さを改めてしることになった。それはとても深く、悲しいものだった。