私は今、古塔を下り私の住む街への道を竜車で走っていた。帰ったら狩人学校の先生に寛大に怒られるだろうが生きてられるだけで嬉しい。
何せあんなあり得ない状況の中に居たのだから今ここに生きて存在しているのが奇跡に思える。というより奇跡そのものである。古塔までの道で殺される。ミラルーツに殺される。ミラボレアスに殺される。と三つの死を乗り越えて今生きていられるのが本当に嬉しい。
そして、もう一つ嬉しいことがあってミラルーツが「私も龍たちに共存を呼びかけてみます。」と言ってくれたことである。人にさえ理解されなかったのにまさか龍の王に理解されるとは予想もしてなかった。
まぁ、私があの場所へ行ったことは絶対に他言するなと釘をさされたが。その理由はわかる。私も殺されるし、勿論ミラルーツも人間に襲われ、最悪の場合殺されてしまうからだ。
もしそうなれば共存など夢のまた夢、リオレウスから雌火竜の天鱗がとれる可能性に等しいほど可能性は低下するだろう。
そんなちょっと嬉しいことを思い出しながら竜車で走っていると私の住む街が見えた。 先生に怒られるのはいやだなぁ。なんて思いつつ私は街に向かい竜車を走らせた。
私が街に帰ってきたのは朝の8時くらいだった。
街に帰ってきた私は真っ先に私の学校に向かった。・・・ばれないかなーという夢を少し見ながら校門を開いた。
そして、先生とガッツリと目が合った。あ、これ死んだわ私。
「こんの大馬鹿野郎がぁああああ!!!」
「ヒイイイィィィィ!!!ごめんなさぁーい!!!」
学校に先生の怒号と私の半泣き状態の私の謝罪が学校全体を震わせた。この音量ならガレオスが砂から飛び出してきそうだ。いや、ディアブロスくらいはいけそうな音量な気がする。
「勝手に狩場に行くなど下手すれば死んでいたぞ!何考えてんだこの大馬鹿が!!5日も狩場にいて死ななかったのは運が良かったと思え!!」
「ひゃい!すみませ・・・い、5日!?」
ちょっと待った。私は記憶を探るがミラルーツと会ったので1日。その後、あの死線をさまよった黒龍との遭遇に1日。いくらなんでも5日は・・・
まさか気絶してたのが3日なのだろうか?もしそうなら教えてくださいミラルーツさん。だとしたらなんだかんだで私、結構重傷じゃないですか・・・・
「まったく・・・・次同じことやったら火山に縛り付けて置いていくからな!!」
「え?」
「返事!!!!」
「ははははははいぃぃぃ!!!!!」
火山に置き去りとか絶対死ぬ。でもこの先生ならやりそうで怖い。というかこの先生なら間違いなくやるだろう。
最近私の人生の選択肢によく死がまざってる気がする・・・。とりあえず教室へいこう・・・。
時は少し進み、学校の休み時間。私はこの時間が当然ながら一番好きだ。友達とわいわい話しながら過ごすこの時間はやはり楽しい。今日、私はネタにされているだけだが・・・。
からかわれつつ楽しく友達と話していると突然教室の扉が勢いよく開かれた。そこにはかなりハイテンションな状態の私の幼馴染み、レオが一枚の紙を持って立っていた。
「おい!リーファ!ギルドが新しい武器の開発に成功したらしいぜ!!しかも明日実物が見れるらしいぜ!すごくないか!?」
「凄いけどそんな叫ばなくていいでしょ!」
昔からレオは騒がしいが今日は一段とテンションが高くて面倒くさい。自分のせいだけど疲れてるので静かにしてほしい。切実に。
因みにリーファは私の名前だ。龍大戦時代の前、人が自然と共存してた頃にハンターをやっていたおじいちゃんが『自然を大切に思える子になるように』という意味でつけてくれた名前だ。
「なぁなぁ!明日一緒に見に行かねぇか!?どうせ暇だろ!?」
「どうせってどういう意味!?いつも暇みたいな言い方やめて!?」
「え?じゃあ用事あんのか?」
「・・・ないけど」
「なら行こうぜ!」
「う、うん・・・」
なんかいつも暇な奴で通された気がする。余計なこと言わなきゃよかった・・・。
しかし、こんな小さな後悔よりもっと大きな後悔をすることをまだ私は知らなかった。
次の日、私はレオと一緒にギルドの発表会の会場に来ていた。ステージには大型モンスターと同じ程度の何かに布が被せて置かれていた。
私は武器か、撃龍槍の新型ではないかと思うが、こんなに人を集めるということはよほど凄いものなのだろうか?一撃でリオレウスを倒せる威力の撃龍槍とかを私は勝手に想像した。
「お、始まるぜリーファ!」
「あ、本当だ。」
いろいろと想像しているとギルドの技術面の偉い人らしき人がでてきた。その人がステージ上の何かに被せられた布を剥がし、その何かの姿が見えた瞬間私は全身から嫌な汗が噴き出した。
それは、機械に竜が取り込まれたようで、所々に継ぎ接ぎ見えるおぞましい何かだった。
「なに・・・・あれ・・・・?」
その言葉は自然と口からこぼれ出た。この世界には決してあってはならない何かのような気がして、本能的にあれを私は拒絶した。
『あれは異常だ』『あれはあってはならない命だ』と頭の中を言葉が駆け巡る。ただただ醜悪で、おぞましい何か。それが私の目の前に今、存在しているのだ。
『これは、【竜機兵】というものです。我々人類が龍に負けぬため、生み出した絶対的な力。これがある限り我々に滅びなどはありません!』
研究者が叫び、歓声が沸き上がる。何故あんなものの前で平然としていられるのか私にはわからない。自然をねじ曲げ造り上げられた嘘の塊を見ても私は美しいなんて思えない。
私には人が、あの黒龍より恐ろしいものに見える気がした。