モンスターハンター 第二次龍大戦時代   作:無一文

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第五話 狂気の龍

 シュレイド城、過去に最高の技術を誇り、人類の繁栄の証である巨大な城である。広場から見える広大な空には、美しい青空が広がり、城下町には活気が溢れ返る。まさに人類の理想郷と言うにふさわしいものである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"はず"だった。

 

 今のシュレイド城はシュレイド王国を西と東に分断する人類にとって忌々しい壁である。青い空が見えていたはずの空は沢山の闇が混ざり合ったかのように重く、おぞましい空へと変わり果て、活気に満ちた人間の声は聞こえず、まるでこの世に入り込んできた地獄のような光景になり果てている。

 そこに在る生命は今や、黒龍ミラボレアスただ一つだけである。人類最大の敵にして、旧シュレイド王国を滅ぼした張本人。そして、"人類の滅亡"を理想とする者。それがミラボレアス。

 人々に伝わるおとぎ話の黒龍伝説では『天と地を覆い尽くす』と言われ、ハンターズギルドでは『討伐すべき者』としてギルドの旗などに刻まれている。

 伝説上のものと思われていたが、すでに何人もの上級ハンター達がシュレイド城に向かい、帰ってきていないということが、黒龍の存在を証明している。

 そして今、一人の男が黒龍と対峙していた。

「うおおおおぉぉぉぉ!!」

 

ガィイン・・・・

 

 男は太刀を黒龍の尾に思いきり降り下ろしたが、切り裂くのは愚か鱗に傷さえもつかない。

「くそっ!なら足だ!」

 男は黒龍の足に向かい走り、その勢いのまま切りつけたが、それさえも弾かれる。

「なっ!?」

 男はあまりに硬い鱗に驚くが、動きは止めず甲殻の薄い股下を狙い太刀を降り下ろすが弾かれる。

「嘘・・・・だろ?」

 男の動きが止まった一瞬、ミラボレアスは尻尾で男を吹き飛ばした。

「ぐっ!?」

 男は広場の中心から壁際まで飛ばされたが、すぐに体制を立て直して黒龍の姿を視野に入れようと探すが見当たらない。何処にいったのかと思った瞬間に上から炎の塊が降ってきた。

「うぉわぁ!?くそ!飛びやがったのか!」

 ブレスはよく見ていれば回避できない攻撃ではない。軌道は直線だし、自身の真下には撃てないから、注意しながら真下に移動しようと男が考えたそのとき、ミラボレアスが空から男へ向かい急滑降してきた。しまったと後悔したときにはもう遅く、男は滑降に巻き込まれた。

「ぐあああぁぁぁぁ!!!」

 悲鳴と共に男は地面を転がり、壁に叩きつけられる。それを嘲笑うかのようにミラボレアスは口から炎を溢れさせ息を吸う。

 『逃げろ!!』と男の頭は命令し、警報をあげるが足が瓦礫に挟まれ動くことができない。男は必死に足掻くがその直後、ミラボレアスのブレスが視界を埋めた。

「くそ!クソオオオオォォォォオオォオオオォオオオオオォォ!!!!!」

 男の叫びはブレスの炸裂音と炎に呑まれ消えていった。

 もともとそこにいた男はもはやただの哀れな焼死体と成り果てて、身に付けていた防具も熱で溶けてしまい原型を留めていない。その人だったものをミラボレアスは口で拾い上げ、そして呑み込んだ。

 黒龍は殺した相手を喰らい、自らの鱗や甲殻の強度をあげることができる性質を持っている。簡単に言えば合金のように堅い鱗や甲殻を生成するための材料にするために相手を喰らうのだ。

 男を殺したミラボレアスはゆっくりと歩き、広場の中心で眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミラボレアスは不快な羽音を聞き、目を覚ました。

 羽音の正体はすぐにその姿を現した。流れる溶岩の如く紅い翼を広げ、血衣を纏ったかのような深紅の甲殻をもつ自らの同族。【紅龍】ミラバルカンである。

 怒れる邪龍と人間に称され、地殻運動を自在に操ることのできる天災級の力を持っている。

「何をしに来た。バルカン。」

 ミラボレアスは苛立ち混じりに聞く。

 ミラバルカンはそれに対して少し愉しげな表情で答えた。

「大した用じゃない、ただ・・・・」

「ならば失せよ。邪魔じゃ。」

 言葉を言い切る前にきられミラバルカンは少し不満な顔をするが、すぐに調子を戻して再度話しだす。

「まぁ少しくらい聞けよ。大したことじゃないしすぐ終わるって。」

「なら早く用を済ませて失せよ。」

 相変わらずの調子のミラボレアスに呆れるかのようにミラバルカンは溜め息を一つ吐き、少し間をおいてから口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の【本当の目的】はなんだ?」

 その問いに、ミラボレアスは一瞬顔色を変えたが冷静に言葉を返した。

「何を今更言い出すかと思えばそんなことか?ぬしにも言ったはずじゃ。儂の目的は人間共をこの地上から消しさること以外にないわ。」

「そこはいいさ。賛成だよ。あいつらを皆殺しにすることはな。そうなりゃ最高だと思うぜ俺は。」

 ミラボレアスの答えにミラバルカンはケタケタと笑いながら言葉を返す。

「満足したならば早く此処から」

「それだけじゃねぇだろ?人間を全部ぶっ殺してお仕舞か?」

 ミラボレアスが言い切る前にミラバルカンが口を開いた。追い詰めるかのように一つ一つの言葉を強く、ハッキリと言いながら質問をする。

 ミラボレアスは喋らない。

「人間のいない龍の理想卿を作るために人間を殺す。こいつはお前の野望じゃなくて【建前】だろ?」

「・・・・・・・」

 ミラボレアスは何も答えない。

「お前が本当に望むのは"自分のための理想卿"だ。」

「気に食わねぇ奴はみんなぶっ殺して創るお前だけの理想卿。屍を敷いて創る血に塗れた世界がお望みか?」

「・・・・・・・」

 まだ答えない。

「他のお前に賛同しない奴等は勿論として、ルーツのことも殺す気だろう?」

 ミラバルカンは笑う。

「結局お前、最後にゃ独りになるぜ。」

「誰にも好かれず、誰も、何もいない世界にただ独りになるだろうよ。」

 ミラバルカンは少し息を吐いてから、また口を開いた。

「それとも、そいつがお前の本当の理想卿か?」

 ミラバルカンが話を終えると暫くの間沈黙が続いた。短いが、長く重い沈黙を破ったのはミラボレアスだった。

「なるほど。ぬしの部品の足りぬ頭でよくまあここまで考えたものじゃな。だが煩わしいのも気に食わぬのも全て人間だけじゃ。」

「まだ腹の底見せようとしねぇのか。」

「底も何もないわ。」

 ミラボレアスは至って冷静に言葉を返す。ミラバルカンはミラボレアスを睨みながら黙りこんだ。

「何もない世界など望みはせん。まぁ人間を全て殺すために手段は選ぶつもりはないがの。」

「その結果があの黒い雌火竜か。」

 ミラバルカンの言葉にミラボレアスの顔色が変わる。無関心だった瞳に驚愕と怒りが映り、重い殺気が辺りにみちた。

「図星か?ボレアス。」

「貴様、何処でそれを聞いた。」

「全てを壊し、殺すあの悪魔はお前が造ったものだろ?」

 もう一度、次は長い沈黙が流れる。

 静寂を破る溜め息と共に口を開いたのはまたもミラボレアスのほうであった。

「確かにアレは人間を殺すために儂が造ったんじゃが、助太刀に向かわすと決まって皆殺してしまうんじゃ。」

「お前。お前に賛同しないやつばかり殺しに行かせているだろ。」

「それがどうした。」

 ミラボレアスは口角を上げ、笑いながら、楽しそうに、禍々しく言い放った。

「邪魔なものも、儂を煩わすものも全て」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         「皆死んでくれれば清々するわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 笑いながら放った言葉には憎悪の念が込められていた。恐らく本気でそう思っているのだろう。邪魔な奴等は皆殺し、自分が気にくわないものなら死ねばいいと。

 ミラボレアスはさらに言葉を続ける。

「ぬしもルーツも、儂の邪魔をするならば殺すかもしれんの。」

「はっ!お前が?俺を?無理だね。」

「試してみるか?」

「試させてやる理由がねぇな。」

 ミラバルカンが言い切った直後、特大の火球がミラバルカンが立っていた地面を焼き尽くした。空気さえも焼け焦げるような火球だが、ミラバルカンは深紅の翼で身を包み平然とそこに立っていた。

「この姿ではやはり力が弱いのぅ・・・・」

「龍の姿でも人の姿の俺にカスリ傷さえつけれねぇだろうよ。」

「貴様・・・・」

 ミラボレアスがミラバルカンを消し飛ばしてやろうとしたとき不意に足音と何者かの声がが響いた。

「ほら、お前の客だ¨嫌われ者¨まあ死なねえように頑張れや」

「ふん・・・・」

 ミラバルカンは姿を戻し空に飛びたち、ミラボレアスは鬱陶しい来訪者を消し去るため姿を戻した。

(¨嫌われ者¨か、丁度良い。)

(嫌われ者は嫌われ者らしく独りの世界を創ることにするわ。)

 訪れた人間を爪で切り裂き、ミラボレアスは狂笑した。

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