(お前、ものすごく稀な生まれ方をしたな。)
(え?稀な生まれ方?そうなのですか?)
「…ん、」
あー頭いてぇ、誰か知らねぇがぶつかってきやがって…ってスライム?
おそらく気絶していたであろう俺は身体を起こして念話で話し合っているヴェルドラと見るからに知性のあるユニークモンスターらしきスライムに目を向け、聞き耳(というか念話を盗聴)を立ててみる。
(あぁ、異世界から召喚されこちらに来る"異世界人"という者と異世界からごく稀に転生してくる"転生者"がいるが、異世界からの転生者で魔物に転生した者は我の知る限り事例はない)
ふむふむ、どうやらスライムさんは異世界からの転生者らしい。それも魔物に転生した超絶激レアな生まれ方をしたようだ。
いやいやいや、すっげぇな。俺も異世界人には何人にもあったけど俺以外の転生者は初めて見た!
(?ということは人に転生した転生者は知ってるのですか?)
(あーうん、まぁな。というより、お前がぶつかってそこで伸びてたそいつが転生者だ)
二人(二匹)の視線がこちらに向けられる。スライムさんは背中(どこが背中かはわからんけどそんな感じがした)を向けていたのか念話に集中していたのかこちらに気付いていなかったようでこちらを見て謝り倒していた。
(すみません、まさか人がいると思わずぶつかってしまって)
(いや、こちらこそ良ければよかったのによけなかった俺にも悪いところはあるので)
(いやいや、こちらが…)
(いやいや、俺が…)
((…))
お互いに誤り譲らない俺とスライムさん。この光景に妙な親近感というか、懐かしさが湧いたと共に、おそらく俺たちの考えは一致したものに到達していた。
――この人絶対日本人だ…――
(あの…)
(…なに?)
(さっきヴェルドラさんからえっと、ヴィクトルさん?が転生者だと伺って…)
(…うん)
(ヴィクトルさんって前世では…日本人だったりします?)
(…そちらも?)
俺がそう返すとスライムさんは手の様な部分を伸ばして俺の手を握った。
(良かった!同郷の人がいてすごく安心したよ!!)
(お、あぁ。それは良かった…ですね)
スライムさんが俺の手を握ったままブンブンッと腕を振るわせ、心の底から嬉しそうにそう言う。俺はもう転生して17年も経つからそんなことを考えたこともなかっけど、見知らぬ土地に独りぼっちって時に同郷の人がいたらそりゃ安心するかとも思い直したところでヴェルドラが「我、不機嫌です!」といった感じで喋りかけてくる。
(我を仲間外れにするな!水臭いではないか!)
(ごめんごめん)
そこから俺とヴェルドラとスライムさんはいろいろ喋った。
スライムさんが元の世界で何をしていたのかとか、この世界での話とか、ヴェルドラが負けた美しい女勇者の話とか、いろいろだ。
そして俺がそろそろ帰路につくと話を切り上げようとするとヴェルドラがいつもの調子で言ってきた。
(なんだ?もう行ってしまうのか?…もう少しゆっくりしていってもいいんだからね!)
(なぜにツンデレ?っていうかこの前もそれで1か月ぐらい洞窟で過ごす羽目になって俺具合悪くなったじゃん。)
(うーむ、ならまた来ると良い。待っておるぞ。)
俺とヴェルドラがいつもの会話をしているところに声が掛かった。
蚊帳の外にされていたスライムさんが、丸い身体を揺らしてこっちを見ている。
俺としたことが、うっかり放置しちゃってた。話をしてみてこのスライムさんはどうやら他の同郷の者にも会ってみたいようだし一緒に連れて行くのもいいのだが…ヴェルドラがますます拗ねそうなんだよなぁ…。
どうしようかと悩んでいるとスライムさんは思わぬ提案をしてきた。
(あの、二人とも。自分…いや俺と友達になってくれないか?)
((なっ/おっ?))
予想外の提案に面食らってしまった。俺としては構わん。こんな面s…じゃなくて愉快なスライムさんと友達にならないかと提案されるなんて人生何が起きるかは分からないものだ。
(ス、スライムの分際でこの暴風竜ヴェルドラとトモダチだと⁉)
(い、いや嫌ならいいだけど…)
(馬鹿お前!誰も嫌だなどと言っておらぬだろう‼)
(え、そう? じゃあどうする?)
(そうじゃなぁ…どうしてもと言うなら…考えてやっても…)
本当めんどくせぇなコイツ。昔から知ってはいたけど素直に"我も友達になりたい。友達になろう"でいいじゃん。気持ちは分からなくもないけど、損な奴だよなぁ…。
(どうしても、だ。決定な‼嫌なら絶交、二度と来ない!)
(ちょっ、し、仕方ないなぁ!我が友達になってやるわ!)
(おう!よろしくな)
そうそう。ヴェルドラはめんどくさい竜だからこっちから強引にいかないとダメなんだよなぁ(後方腕組み彼氏的な)。スライムさんにはヴェルドラ検定2級を進呈しよう(何様かな?)。
…それにしてもどうしたものか、会話に入るタイミングを逃した。どうする?いまから「俺も友達になってもいいかな?」とか聞くのか?なにそれ超めんどくさい奴じゃん…(ブーメラン)。
どうしようかとテレテレしているヴェルドラを視界に収めながら俺は思考を巡らせていたがそんな俺を見かねたのかスライムさんが撥ねながらこちらに寄ってきたので俺はしゃがんで目線をできる限り合わせる。
(ヴィクトルも!よろしくな!)
(え?お、俺も?)
(あぁ、それとも俺と友達になるのは嫌か?)
(いや、願ってもないことだ!)
俺はスライムさんに手を伸ばし両手で抱き寄せる。
気を使わせてしまったが、これからは善処することにしよう。なんたって友達、だからな!
(さて、この封印どうするか)
((ん?/え?))
俺の腕の中でスライムさんは目線(おそらく目線、たぶん)をいまだ照れているヴェルドラの方へ向けそんなこと言う。
(だって、友達を放って行けないだろう)
コイツ…なんていい奴なんだ?俺もヴェルドラと仲が良くなってきた頃、無限牢獄からヴェルドラを出してやりたいという一心でスキルやいろんな技を使い全力でこのくっそ堅い無限牢獄に攻撃を行ったが物理ダメージを無効化するこの牢獄の前には亀裂が入る程度で、それもすぐに無効化されてしまったことから俺は諦めていた。
結構、マジでやったから亀裂が消えた時、かなりショック受けたんだよなぁ…
そんなことを考えていると自分のスキルと喋っていたスライムがヴェルドラにとんでもない提案を行っていた。
(ヴェルドラ お前、俺の胃袋に入る気ない?)
(ククク、クハハ、クァーッハッハッハ!面白い、是非やってくれ!お前に我のすべてを委ねる‼)
(…ヴェルドラ…)
ノリノリでその提案を受けるヴェルドラの前に歩を進め俺はヴェルドラに目を向ける。
俺とヴェルドラの視線が交差し、辺りが静寂に包まれる。
(本当に、良いんだな?)
(クハハ!すぐに出てくるからお前も待っておれ)
(…そっか、さっさと出て来いよ!ヴェルドラ!)
(クァーッハッハッハ!あぁ、しばらくの別れだ!ヴィクトル!)
(じゃあ、別れの言葉も済んだし、お願いしてもいいかな?)
(ああ、じゃあヴェルドラ。これから『捕食者』でお前を喰うけど…)
(おっとその前に、お前に名をやろう。お前も我らの共通の名を考えよ、同格と言うことを魂に刻むのだ)
("テンペスト"とかどうだ?)
(素晴らしい響きだ‼今日から我は{ヴェルドラ=テンペスト}だ‼そしてお前には…)
――"リムル"の名を授ける!{リムル=テンペスト}と名乗るが良い‼
お…おぉ!なんかわからんけど感動してきた!
俺がニコニコパチパチ手を叩いているとスライムさん…いやリムルが俺に喋りかけてきた。
(ヴィクトルはいいのか?)
(俺はヴェルドラからもういろいろ貰ってるからもう大丈夫だよ共通の名前については…そうだなぁまぁ、折を見て頂戴するかも。)
(そっか。わかった。)
(では頼んだぞ、友よ‼)
(さっさと無限牢獄から脱出して来いよ?ヴェルドラ!)
(そんなに待たせずまた相まみえようぞリムルそしてヴィクトル)
――ユニークスキル『捕食者』
一瞬で無限牢獄と同じくらいに大きくなったリムルが瞬く間にヴェルドラを牢獄ごと飲み込む。
シンッと静まった洞窟内でリムルと俺だけが残される。
(リムル、ヴェルドラのこと頼んだぞ)
(あぁ、任せておけ)
リムルが景気よくそう返事をすると俺は荷物を纏めリムルを抱き上げ歩き出す。
リムルが降してくれと訴えてくるが俺はそれをガン無視で洞窟を入口に向かって歩を進める。正直ひんやり冷たくてもちもちしてて抱き心地が良かったからというのは秘密だ。
(これからよろしく、リムル!)
(こっちこそよろしくな、ヴィクトル!)
Episode.IV{暴風竜と人間とスライム(II)}
いやぁ書ききったぁ…(謎の達成感)
ここまで読んでいただきありがとうございました。
やっと本番始まってきたって感じです。これからも頑張りますのでまた読んでいただけると嬉しいです!