人類生存圏外で1人ごつ   作:チヂミ蓮華五式

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ちいかわから着想を得ました。
嘘ではありません。


プロローグ

「ハァ、ハァ、ハァ…」

 

「おい!走るスピードが落ちてるぞ!」

 

「そんなこと、わかってる、けど…」

 

草一つない荒野、ボロボロになった建物の残骸を背景に、マントを着た2人の人影が移動している。

 

「チッ!来るぞ!」

 

その声を皮切りに周りの瓦礫が弾け、小さい何かが地面を這って2人へと襲いかかった。

 

「クソッタレがぁ!!」

 

男が小銃を取り出してその何かへと連射した。

銃弾はカキィンと金属音と火花を上げて弾かれ、黒い影の1つが小銃を持った男へと飛びかかった。

 

「走れ!さやーーー」

 

直後爆発が男を襲った。

至近距離での爆発、装備越しであったから生きているかもしれない、だがーーー。

 

「ッ……!あああああ!!」

 

残った1人は走り続ける。

ここは『壁』の外、足を止めることをこの世界は許さない。

先程男を襲ったなにかと同じものが2体、マントの少女を追いかける。

 

「ハァ、ハァ、くそ……」

 

そして走っていた少女が振り向き小銃を連射する。

だが弾丸の隙間を縫ってそれらは少女へと近づいていく。

 

「ハァ、もう、使うしかないか」

 

すると少女はマントを前方に放り投げ、ポーチから中心が青く光る円柱状の機械を取り出した。

 

「…クズ鉄どもめ」

 

そしてその機械を、今まさにマントの下から這い出てきた小さな影に向かって放り投げ、後ろへと走る。

 

小さな影二つはマントを飛び出した瞬間、少女が投げた機械へと向きを変える。

そしてその機械へと飛びかかり、先程男を襲ったものより2回りほど大きな爆発を起こした。

 

 

 

「……けほ」

 

爆発の余波を受け、うずくまっていた少女が起き上がった。

 

「あぁもう、大損だよ…」

 

少女は土埃を叩いて落としつつ、爆発した方向へと目を向けた。

そこには人ひとりはすっぽり埋まってしまいそうなクレーターができていた。

 

「そうだ、おじさんは…」

 

少女が先ほどまで走っていた道へと視線を向ける。

そこには爆発を受けて横たわったままの男の姿があった。

 

「追い打ちはされてないか…」

 

そして少女はクレーターを迂回して男の元へと歩き出した。

 

 

瞬間、轟音がして、背景でしかなかった建物の残骸が爆発した。

 

「くぅ、コンクリワーム!?」

 

瓦礫が辺りに降り注ぐ中、少女はその姿を捉えた。

 

コンクリワーム、彼ら彼女らの勝手につけた異名のようなものだが、その名の通りコンクリ地帯などの硬いエリアでも根こそぎ削り、喰らいながら進む大型機械である。

 

「まずい…おじさん!」

 

コンクリワームはその半身のみを地上に出し、まるで何かを探しているかのように先端部をあちこちに向けている。

 

「おじさん!おじさん!」

 

「ぐ……逃げろっていったろ…」

 

「言ってない!起きて!」

 

その男は爆発の中心である左腕が血まみれになっており、顔も真っ青でとても無事とはいえない様子だ。

 

「ワームだぞ……足手纏いを連れて逃げられるわけが」

 

「うるさい!」

 

少女は男の装備を次々と解いていき、ロープで体を固定し、背中に括り付けて背負った。

 

「くぅ……」

 

身軽になったとはいえ、成人男性1人分の重量である。

装備のサポートがあっても背負ったまま走れるはずがない。

 

後方で爆発音がした。

 

ワームがついにこちらを見つけたのだろうか。

嫌な予感が脳裏によぎり、気持ちの悪い汗が出てきた。

 

ギイイイイイイイイイと大型機械特有の稼働音がし、地面から衝撃が伝わってきた。

 

「ハァ、ハァ」

 

もうダメなのだろうか。

やっぱりおじさんを見捨てるべきだったのだろうか、さっさと走って、いや、私がもっと早くあの装置を投げていれば。

 

走馬灯の様に後悔がぐるぐると自分の中で渦巻いていた。

 

「もっと、おいしいもの、食べて、いたかったなぁ」

 

脳内を走っていたものが、ついに口から漏れ出た。

その事を認識すると涙が奥から奥から溢れ出してきた。

 

怖い、恐い、こわい。

 

 

気づけば膝は折れ、頭は項垂れて、とても動けそうにもなかった。

 

 

「なんだ、あいつ……」

 

おじさんの声が聞こえた。

 

その声は、自分の今の気分とは違い、驚愕に満ちていて、

それに釣られてゆっくりと後ろを振り向いた。

 

そこにあったのはーーー

 

 

ワームの巨大な躯体の上に佇む、1人の男であった。

 

 

「あー……やっぱり、ワームは嫌いだなァ、コスパが良くない」

 

 

その男はこちらのことはまったく目にも留めていなかったが、私はその男から目を離すことができなかった。

 

「チッ、なんか使えるパーツあっかな」

 

私にとってその男は、紛れもなくこの世界で1人輝く希望そのものだった。




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