嘘つき天使のショータイム 〜その奇跡、詐欺です〜   作:蒼く生きる

3 / 4
こちら第1話の続きです!お気に入り登録がオススメだ!!


第一羽 angel's gift Part2

彼女の勧誘には…思わず耳を疑っちゃったよね。ホント、目の前の天使さんは相当平和ボケしてるみたいだ。詐欺師の天使なんて正気とは思えない。

「…意味分かんないんだけど。君は僕を天使にしようとしてるの?詐欺師の僕を?悪いけどキューピットの矢を乱射するお仕事はゴメンだ——」

「ま、勿論完全な天使じゃないわ。お試し期間って事で半分だけ天使よ。私と地上に降りて、迷える人々を救済するの。そうやって徳ポイントを積めば…復活できるわ。」

「ちょっと待ってくれる?」

…今復活って言った?オレンジ色のデカ玉を3つ集めた覚えはないよ。そんな魅力的な案、受け入れたいに決まってる。問題は僕が大嫌いな人助けがその唯一の手段だってコト。

「大丈夫。君、詐欺師なんでしょ?君の能力は買ってる。…正直認めたくないけど…君の腕は確か。100均の壺を10万で売るなんて馬鹿なこと、神でも出来ないわ。」

「…つまり…人助けじゃなくて詐欺をやれってこと?」

「違うわ!!…でも、人を思いやるのが凶器になるみたいに、人を欺くことが救済になることだってあるはずよ。」

「天使とペ(テン師)でシナジーあるじゃん!これ運命?」

メタトロンが無邪気にそう言った。

 

…そもそも天使ってさあ。純粋無垢な少女が適役なんだよ。人を笑顔にする天使。対する僕。薄汚れた詐欺師。僕が見た笑顔は、壺を売ってもらって喜ぶあの滑稽な笑顔しかない。美しいくらい真反対だ。

「…うん。やっぱ無理!残念だけど僕じゃ役不足だ。そんな簡単に天使になれるなら他を当たるのがいい。少なくとも詐欺師以外をね。」

…しばらく沈黙が続く。ほらね。やっぱり僕じゃ無理そうだ。

「…君みたいなのは大勢いたわ。柄じゃないって。」

おや?説得かな?僕は簡単になびかないよ。

「当然よね。人を散々傷つけておいて人助けなんてバカげてる。人の罪は消せない。クズはヒーローにはなれない。」

…そう思ってた。ずっと。

ラファエルの視線が遠のく。

「人間は醜い。…醜く…何度でも這い上がる。どれだけ深い穴に落ちても…空を目指す。…絶対に諦めない。そういう生き物だって…教えてくれたのよ。あのバカ人間がね…。」

遠くを見つめるラファエルの目は何かを思い出してるみたいだった。大切な…何かを。

だから…諦めてほしくない。——君にも魅せたい。私たち天使が何羽でも飛び回れるくらい、染み渡った青い世界そらを。私は…少しでも多くの人に…空を見上げてほしい。」

…だからそんなポエムじゃ揺れないって。

「…お節介。嫌いなんだよ…僕。」

「しょうがないわ。この羽の燃料はお節介なんだから。」

そうやって悪戯っぽく笑った。…僕にそんな道徳的な台詞を吐いたセラピストは五人いた。どいつの言葉も大したことなかった。こいつだってそう。

…だけど一つ。一つだけセラピストたちと違うポイントがある。…僕を真っ直ぐ見つめる瞳。カルテなんかじゃなく、僕の心を見つめる瞳。全く、思わず照れちゃうくらいだよ。

「…いいよ。しょうがない。君の瞳に相乗りしてあげる。僕はノリと音楽と…それから僕と目を合わせて話す人の言葉に乗るのが大好きなんだ。

「やったぁぁぁ!!じゃ決まりね!いくわよ環!あ、ちなみに私の名前はラファエルよ。様付けでも陛下付けでもどちらでもいいわ!」

飛び跳ねて喜ぶ姿はまさに無垢。天使ってカンジ。…それにしても最悪な2択を迫られてるな。今日は2択問題が多いね。

「…ちなみにどうやって地上に降りるの?エレベーターは見当たらないケド?」

「あら環、知らないの?」

天使には羽があるのよ。

そう言ってラファエルは僕の背中を叩いた。

次の瞬間、僕の背中から宵闇みたいに真っ黒な羽がメキメキと生えてきた。不思議と痛みはなかった。しかし30万円もする高級スーツは御釈迦になった。

「うおぉぉ!!すごい!!」

「うーわ…クッッッッロ!!!こんなドス黒い羽見たことないわ!!堕天使の方がマシな羽してる!」

…酷いな。ちょっと気に入ってたのに。

「…まあいいわ。地上に着いたら羽はしまって。」

「…そんなに汚い?」

「もお!!違う!!救済相手以外に羽を見せてはいけないの!!」

「へぇ。じゃ君の輪っかは?僕にはないよ?」

「これは上級天使だけ!!地上に着いたら消える!!」

イライラしてるねえ。とてもさっきのポエマーとは思えないね。

「…ったく。君喋りすぎよ!!もう、早く飛ぶわよ!!」

飛ぶ?ここから?この羽で?

「…じゃあ遺影選ばせてよ。」

「そんなヒマない!ほら行く!どーん!」

「おおおおおおい!!!??」

天使はまだ心の準備もついてない僕を突き飛ばした。

 

 

猛烈な速さで落ちていく。僕の黒羽は言うことを聞かない。

「ほら何してるの!早く羽ばたいて!」

美しく、大きな羽で、ラファエルは巧みに風を操る。

対する僕のは…——風に煽られる洗濯物みたいだ。

地上が近づいていく。ラファエルの声も遠のく。その時、ふと屋上の光景に目がいった。運命とかじゃない。本当に偶然——

靴を脱ぎ、手すりに乗り、虚な目をした女の光景が。そして案の定、足を滑らす。

「ッ…もう!!」

歯を食いしばる。拳に力が入る。そして同時に…黒羽がはためく。

「嫌だなぁ、全く!!」

まるで…まるで僕が…

「ヒーローみたいじゃないか!!!」

これまでの人生の最大風速で僕は落下する女に手を差し伸べる。——これが、天使。

間一髪女を助けた僕は、空いてる窓からビル内に入った。

「ッ…あっ…あの…」

「…ゴメン。余計なお世話だっ ——」

「ありがとうございます!!本当は…怖くて。

でっ…でも!足を滑らせちゃって…。」

「手すりはね、手で掴むためにあるわけよ。」

「ごめんなさい…あの…どうして助けてくれたんですか?」

「…さあ?なんでだろう?」

…本当は知ってる。でも教えてあげないよ。僕は詐欺師だからね。ここは嘘をつかせてよ。

「…撤回するわ、環。似合ってるわよ、その汚い黒羽。」

遅れてきたラファエルが窓際に腰掛けている。

「…褒められてる気がしないな。」

「フフッ。冗談よ。じゃ、そろそろ目的地へ飛ぶわよ。」

…え?

「寄り道したのは君よ。恨むなら自分を恨んで。」

「それも冗談だよね!?ねえ!?ちょっと!?また飛ぶの!?」

…どうやら僕は、こんな冗談みたいな展開にこれからも付き合わされていくみたい。

でも、こんな展開は…

正直、嫌いじゃない。




第一話はこれにて終了!!次は二話!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。