真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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もふもふ、そして、改造

温泉から上がったふたりは、

脱衣所で髪を整え,新しい服と靴に身を包んでいた。

 

──昨夜の,渋谷での出会いは、

吸収されかけていた真人と,

ほんの直前まで虚無の底にいた祈月。

 

どちらも髪ボサボサ,

服も靴もどっか行ってるか,はだけてるかで,

ボロボロの状態。

 

その後,逃走劇、倉庫で添い寝を経て,温泉。

“ちゃんと整った姿”で向き合うのは、これが初めてだった。

 

先に準備を終えた祈月が、くるりと真人の方を向く。

 

祈月「……っ!!?ちょ、えっ……!?」

 

真人「ん?」

 

祈月「ちょっ……え、真人……なにその……っ」

 

指を差しながらわなわな震える祈月。

その先にいるのは、髪をしっかり乾かし、

灰青の三束おさげをもっふりと揺らす真人。

 

真人「ん、俺? どうかした??」

 

祈月「いやいやいやいや!!

そのもふもふの三束、なに!?

あたしの性癖ピンポイント狙撃なんだけど!?!?」

 

真人「え?性癖??」

 

祈月「今朝までの真人はボサボサだったでしょ!?

え??完全体って…こうなの??」

 

まるで,

幼馴染が突然爆ビジュで登場したかのような衝撃。

 

真人「あー,そういえば,この髪型見せるの初だっけ。

戦いの中でよくほどけちゃうんだけどねー。

いつもこれだよ?」

 

祈月「……最高。もふっていい??」

 

そう聞いたものの。

許可など待つはずもなく,三束おさげに手櫛を通す。

 

祈月「……もっふっっ!!〜〜はぁぁ〜〜〜♡」

 

真人「え,その反応してきたやつ,初めてなんだけど?

これ,どんな表情すればいいの,俺??」

 

祈月「いいよぉ…気にしなくて……♡」

そう言って,真人の髪に顔を埋める祈月。

額が触れるたびに、おさげがふわりと揺れて、

微かに真人がくすぐったそうに肩をすくめる。

 

真人「……いや、まあ……

君がそんなに喜んでくれるなら、別に、いいけど」

 

そう言い,戸惑いつつも,祈月の方に視線を向ける真人。

 

真人「でもさー、君だって。

髪ふわふわになってるし、

ウサ耳の毛並みも復活してるし。

人間の女よりずっとかわいい見た目してるじゃん、

ギャップすごいよ。」

 

祈月「そりゃあ…今の真人の隣に立つならさ。

あたしも本気じゃないと。釣り合わないじゃん??」

 

真人「君,俺への評価やたら高くない??」

 

祈月「極めて正当な評価だよ??」

 

そしてふたりは、本来のビジュの状態で。

湯上がりのほかほかした感覚そのままに。

山の斜面を下り、小さな住宅地の路地裏にたどり着いた。

 

真人「.....ん、ここでいいか。補充しとこ。」

 

祈月「ほじゅー?」

 

真人「ま、見てなよ」

 

真人は路地裏の向こう側から歩いてきた人間にすっと近づき、

なにげない動作で肩に触れる。

「一無為転変」

 

ドクンと肉体が震え、そのまま縮小。

たちまち指サイズの人間が、真人の掌に収まった。

 

祈月「え、なにそれ??」

真人「改造人間。俺の武器,兼、駒だよ。

昨日の戦闘で,全部使い切っちゃったからさ」

 

真人は、手のひらの上の"ストック"を指2本でひょいと持ち、祈月から見やすいように軽く振った。

祈月は、興味津々な様子で見つめる。

 

祈月「真人の術式って、魂に干渉するん...だったよね??

ってことは、それ、生きてるの?」

 

真人「もちろん。魂はちゃんと残してある。

戦わせる時は、元のサイズに戻すよ。一ーこうやってね」

 

真人は、今作ったばかりの改造人間ストックを、

路地裏の空きスペースにぽいっと投げた。

 

その瞬間,

バシュウッ!!と音を立て、空中で爆発的にサイズが戻り、改造人間の肉体がぬるりと地面に着地。

 

その姿は、関節が3つある不気味な手足、

筋肉の走り方も歪。

だが、その改造人間が脚を大きくスイングした瞬間。

ベキイッ!!と音を立てて電柱がへし折れた。

 

祈月「うわ、白兵戦の駒に使えるじゃん。便利~」

真人「だろ?......おっ!...逃げちゃだめ♡」

 

路地裏でスマホをポチポチしていたところ。

突如現れた改造人間の電柱破壊スイングに震え上がり、

その場から逃げ出そうとしたひとりの男。

 

真人は、上機嫌な様子で、その背中にポンと触れ。

瞬く間に、男は指サイズに縮小され。

ストックその2が出来上がった。

 

真人「ふーん、コイツの魂...

今のやつと合わせて"撥体"にできそう♪

複数の魂を混ぜた"多重魂”で、拒絶反応のエネルギーを使うやつ。

混ぜた瞬間、自爆するみたいに質量が跳ね上がるんだ」

 

そう言って,真人は,

電柱破壊スイングをした改造人間に触れ,再び縮小。

再度ストック化し,掌におさめた。

 

祈月「拒絶反応で質量爆弾?めっちゃ応用効くじゃん!

他にはどんなことできるの?」

 

真人「ん~,あとはね〜!幾魂異性体っていう、逆に拒絶反応が微弱な魂同士で......」

 

遊園地に向かう親友同士のように、

楽しげに話しながら歩き去るふたり。

 

路地裏には、破壊された電柱だけが残され。

ストックとなった人間の行方を見たものはいなかった。

 

——-こうして,渋谷への来訪の準備は。

着々と,進められていた。

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