真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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陀艮捜索、渋谷再来

2018年11月8日。

──渋谷事変から、1週間。

 

都心の傷跡は全く癒えず。

瓦礫と呪力の残滓にまみれた渋谷の街には、

不気味な静けさが漂っていた。

 

その空気を切り裂くように、ふたりの呪霊が舞い戻る。

祈月と真人。どちらも,全身を完全に癒し終え。

呪力は全回復していた。

 

彼らの目的は。

真人の呪霊仲間で,唯一,生存の希望がある,陀艮の捜索。

そして,逃げ帰った"あの日"からの,術師達へのリベンジ。

 

祈月「……渋谷、まだ呪力が濃く残ってるね」

 

真人「そりゃあ,どいつもこいつも、派手にやらかしたからね」

 

祈月「真人もそのひとりでしょ?」

 

真人「ははっ、そーだな」

 

どこか懐かしさすら覚える空気の中。

ふたりは静かに歩き始めた。

 

陀艮が,もし生きているのなら――

既に渋谷からは離れている可能性が高い。

 

だが、真人は,渋谷駅の地下4階——

陀艮、漏瑚、脹相と最後に別れた場所を覚えている。

 

脹相も行方知れずだが,彼は呪霊ではない。

仲間ではあったが。真人には,探す理由はない。

 

今はただ、陀艮の行方を追って,術式の残穢を辿るだけだ。

 

もっとも,陀艮は既に術師に殺されている可能性も高い。

真人自身,そのことはわかっている。

ただ,だとしても,"確認"はしておきたい。

 

その途中には,

羂索が撒いた呪霊たちがおり。

 

それを祓い続ける術師たち,

そして,現場の後処理をする補助監督達が,

数人,ぽつぽつと渋谷に残っていた。

 

だが――

 

・術師A:背後に展開された彩城魔壁に気づかず動いた瞬間,

真っ二つ

・補助監督B:無為転変でぐにゃりと変形させられ、爆散

・術師C:何かを言いかけた瞬間、切断と変形で死亡

 

祈月と真人は、ほぼ無音で排除していった。

 

祈月「……最近、殺し方が洗練されてきた気がする」

 

真人「お互いにね♡」

 

祈月「地獄の相性良すぎて怖い」

 

そうして,辿り着いたのは。

 

真人「……ここだ。陀艮と最後に別れた場所」

 

陀艮が大量の水を撒き、

地下4階の一般人達を飲み込んで一掃した場所。

その,ぬるりとした水の気配。

呪力残穢が,僅かに残っていた。

 

祈月「術式の使用痕で,ギリギリ感知できるレベルだね…

まあ,1週間も経ってるわけだし当然だけど……」

「……生きてると、いいね」

 

真人は,すっと顔をあげて言った。

「うん,行けるとこまで行ってみよ。…とりあえず,方向的にあっちだな」

 

そして,祈月と真人は。

かすかな呪力の痕を頼りに。

少しずつ,あの日の陀艮が通った道筋を,なぞっていった。

 

何度も道を間違え、

何度も「次どっち?」と立ち止まりながらも、

微かに残された陀艮の呪力の痕跡を、諦めずに辿り続けた。

 

──そして、ついにたどり着いたのは。

渋谷駅構内、マークシティ連絡通路。

 

その場に残されていたのは。

一眼でそれとわかる戦闘の爪痕。

ひび割れた壁。黒く焦げ付いた床面。

 

そして、空気の底に沈むように漂う。

呪霊の,消失痕。その,残滓。

 

祈月は立ち止まり、そっとその場を見つめる。

そして、呟いた。

「……ここ、だね。陀艮の……最期」

 

呪力の波形から察する限り、

陀艮はここで領域展開を行っている。

つまり、本気で戦った上で、敗れたのだ。

 

敵側に、領域展開を使える者がいたのか。

あるいは、簡易領域のような対策で押し切られたのか。

──それとも、全く別の“異物”が介入した結果なのか。

 

それは、わからない。

 

真人は数歩前に出て、静かに,陀艮の最期の残滓に触れた。

そして,小さく俯いたあと,

──くるりと辺りを見渡して言った。

「……仕方ない。あの日は、戦争だったんだし」

 

いつも通りの、軽口まじりの声。

だが、その口調の奥に、ほんのわずかな感情の揺れがあった。

 

真人「それにさ……この焼け跡。漏瑚の呪力反応だよ。」

「つまり、陀艮が死んだあと、漏瑚がここに来たんだろうってこと」

「だったら──陀艮を殺した術師なんて、もういないよ。

漏瑚が殺したはずだから」

 

祈月「……そっか」

 

祈月にとって、“仲間”とは──真人が初めて。

誰かを喪った経験など、一度もなかった。

だから、こういう時に、何を言えばいいのか分からない。

 

ただ、そっと言葉を絞り出す。

 

祈月「……帰ろっか、真人?」

真人「うーん、そーだね。

術師たちも、もうそんなに渋谷に残ってなさそうだし……」

 

ふたりは、そのまま構内を離れ、井の頭線方面の階段を下っていく。

地上へ降り,視界が開けたその時──

 

ドゴォォォ……ン…………

 

道路の向こうから反響する,鈍く響く破壊音。

石材を砕き、コンクリートを叩き割るような音。

 

“拳”で何かを叩き潰したような、

それでいて生々しい音の余韻。

 

そして次の瞬間──

ビリビリと肌に伝わる、強い呪力反応。

 

祈月の表情が一変した。眼差しが鋭く細まる。

「……いるね。手練の術師」

 

真人も、立ち止まって顔を上げる。

その口元には、ニヤリとした嗜虐的な笑みが浮かんでいた。

「……うん。これは──“来てる”ね」

 

 

 

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