2018年11月8日。
──渋谷事変から、1週間。
虎杖悠仁は、脹相と共に行動していた。
──両面宿儺による大虐殺。
──七海建人の死。
──釘崎野薔薇の生死不明。
──東堂葵の左腕喪失。
そして──
──そして、命を懸けて追い詰めた真人に逃げられたこと。
あの時、横から現れた女の呪霊に、全てを崩されたこと。
加えて、五条悟が封印された獄門疆すら,
羂索に持ち逃げされたこと。
それら全てが、虎杖の胸を苛んでいた。
“自分がもっと強ければ”
"せめて,責任をとってから死ななければ"
──そんな自責が、今も刃のように心を切り続けている。
虎杖は、兄・脹相と共に、未だ渋谷に残る,
羂索によってばら撒かれた呪霊たちの討伐を続けていた。
人を守るためというよりは、呪いに呑まれないため。
何かをしていないと,壊れてしまいそうだった。
だが、その殺意は怒りではない。
焦りでもない。
ただ、静かに研がれた“殺すための意志”だった。
脹相は、そんな弟の姿を、痛ましさを覚えながらも、
口出しはしなかった。
ただ寄り添い、共に行動し,呪霊を祓い続けることで、
弟を支えていた。
虎杖が先行し、異形の呪霊を引きつけて駆けてくる。
虎杖「……脹相!!」
脹相「——赤血操術・苅祓(かりばらい)」
ギュゥゥゥンッ!!
空気を裂くように、血で形成されたチャクラムが飛ぶ。
ズバァァァ!!
呪霊の脚が両断され、その胴体がバランスを崩して崩れ落ちる。
脹相「悠仁。」
ドゴォォォォン!!
虎杖の呪力拳が、
コンクリートの壁に呪霊を叩きつけるように振り下ろされる。
その拳は,呪霊の頭部を潰し、呪力が内部で炸裂。
ザフッ……
呪霊の体は、一撃で霧散した。
言葉少なに。だが、完璧な連携だった。
二人の動きには、迷いも齟齬もない。
その直後。
渋谷駅、井の頭線方面——
そちらから、ビリビリと肌を刺すような、
極めて濃密で、殺意に満ちた呪力反応が伝わってくる。
虎杖の瞳がわずかに揺れた。
──絶対に、忘れない。
あれは。
大勢の人の命を弄び。
順平を殺し,七海を殺し,釘崎を壊し。
東堂の左腕を破壊した。
自分の手で「絶対に殺す」と誓った、宿敵の気配だった。
脹相「……悠仁。気づいたか」
虎杖「ああ。……来るのが早すぎる。だが——」
鋭く、視線を切り替える。
虎杖「挟み撃ちにするぞ。今度こそ──確実に祓う」
頷き合ったその刹那。
虎杖と脹相は、即座に二手に分かれ、
呪力の奔る方向へと走り出した。
それは、宣戦布告。
因縁の再戦は,開始まで秒読みとなっていた。