一方──
脹相と祈月は,無言で対峙していた。
初対面。何の因縁も関係性もない。
だが。
脹相は、兄として,弟である虎杖悠仁に加勢し,支えるために。
祈月は、魂で選んだ相手である真人の敵を排除するために。
ふたりは既に結論を下していた。
「目の前の相手を殺す」
——それは,まるで虎杖と真人の代理戦争のように。
祈月は静かに,すっと右手をかざす。
その動きは探るように、空中の一点一点をなぞる。
切断バリアの“設置座標”を精密に測るための動作。
だが。
それが完了するよりも先に、脹相が動く。
脹相「百斂──穿血!!」
瞬時に圧縮された血が、掌に収束。
一直線に祈月を貫かんと放たれる!!
ヒュウン──!!
祈月は地を這うように身を低くし、穿血を躱す。
そしてそのまま──路面を蹴って、走り出す!
大きくカーブする軌道のダッシュ。
滑らかに軌道を変える穿血をかわしつつ,
脹相めがけて走る。
祈月の術式、彩城魔壁。
空間座標に,薄い刃のような“切断バリア”を貼り付ける術式。
ただし、その設置座標が離れていれば離れているほど、
精度はブレやすくなる。
10月31日,羂索との戦闘では。
「逃げる祈月 vs 追う羂索」の構図だった。
自分の背後に仕掛けたバリアの位置に、
相手が勝手に突っ込んでくる。
殺せなくても、バリアを当てられなくても,
追跡を牽制し,逃げ切れればそれでよかった。
だが──今は違う。
脹相は真正面から対峙する敵。
しかも、一級術師相当の実力者。
バリアを"肉体直置き"で殺せる“足切りライン”の相手ではない。
だからこそ、祈月は“読み”に徹する。
脹相の動きを予測し、狙いを定め、
切断バリアを“空中”に設置し、
そこに突っ込ませる必要があるのだ。
穿血を躱しながら距離を詰めた祈月は、その勢いのまま──
跳躍し、脹相へ向けて鋭い蹴りを放つ。
脹相は即座に反応し,後方へ跳び退く!
その瞬間。
──ズパァッッ!!
祈月が、後退先を予測して予め設置していた切断バリア。
脹相は、直撃こそしなかったものの—-
バリアの端が、脇腹をかすめた。
その直後。
ドバァッ!!
裂かれた傷口から──不自然なほどの大量の血が、爆発するように噴き出す。
祈月「!?!?」
思わず飛び退く。
この出血量は、普通じゃない。
(…ッ、これ──アイツの術式……!?)
ならば、これを被るのは危険だ。
大量の血飛沫が、祈月の視界を奪うように舞う。
──その瞬間、脹相の姿は消えていた。
祈月「……っ、どこ!?」
視界を覆う血飛沫の幕。
姿を消した脹相の気配を、
祈月は即座に呪力探知へと切り替えて探る。
その瞬間──視界の端に微かな揺らぎ。
浮遊する、小さな赤い球体。
脈打つように震える、呪力を帯びた“血の塊”。
祈月(っ──!?)
「──超新星」
ズバババババババッ!!!
血の球が一斉に破裂。
そこから放たれた無数の血の散弾が、
拡散射撃のように祈月を襲う!
だが──
超新星が放たれるその寸前,
反射的に、祈月は身体と血の球の間にバリアを展開し,
身を守るように滑り込ませていた。
血の弾丸の大半はそこで防がれる。
しかし、全ては防ぎきれず。
ズバッ!
祈月の左腕を、鋭い一発が掠める。
肉が裂け、鮮血が飛ぶ。
祈月(っっ……今の、直撃してたら──終わってた……!!)
──脹相の血液は、人間にとっては“毒”に等しい。
彼が呪霊と人間のハーフであるがゆえ、
その血は人外のもの。
通常の人間であれば、血液同士が混ざった瞬間に拒絶反応が起き、戦闘不能となる。
だが──祈月は呪霊。
同じ“人外”であるため、その毒性は通じない。
しかし——
脹相(毒が効かずとも,物理的に削り殺せば良いだけだ)
腕を抑えながら、祈月は呪力の方向を探る。
“超新星”への呪力の射出位置
──そこから、今の脹相の居所を読み取る。
祈月(そこか……!)
即座に駆け出す。
──だが、その一歩に合わせて。
脹相「赤血操術──苅祓!」
ヒュオン──!!
鋭い軌道を描いて、飛来する血のチャクラム。
だが祈月は止まらない。
軌道の前方、空中にバリアを瞬間展開!
チャクラムは、バリアに激突。
バチィッ──!!
祈月「彩城魔壁──逆流波!!」
相手の攻撃から呪力を吸収し、その方向を反転──
バリアに溜めた呪力を一気にビームとして逆流発射!!
ズオオオンッ!!
強烈な直線ビームが、脹相を撃ち抜かんと襲いかかる!
だが!
脹相「赫鱗躍動・載!!」
瞬時に体内の血中成分を操作し、身体能力をブースト!!
そのブーストされた動体視力のままに,
ギリギリで逆流波の射線から離脱!!
スッ──!!
祈月のビームが脹相の頬をかすめ、
背後のコンクリート壁を貫く。
地響きとともに、粉塵が舞い上がる。
祈月(っ……避けた……!?)
脹相(避けられた…が,ギリギリだったな…)
目にも止まらぬ高速のステップで、脹相は再び姿勢を整え
——-
両者、再び対峙。