地面に崩れ落ちた虎杖。
その胸には,真人の鳩尾から伸びる巨大なトゲが、
心臓を正面から貫通していた。
真人は、それを静かに引き抜きながら、
勝ち誇ったように微笑む。
真人「……だから、言った通りだったろ?」
虎杖を見下ろすようにして言葉を投げかける。
「オマエじゃ、俺には勝てない、ってさ♪」
ぐにゃり──
真人の右腕が、滑らかに変形する。
指先から肘にかけて、薄く鋭利な刃物状へと変貌。
──心臓を潰された時点で、通常なら即死。
だが、虎杖悠仁の中には、呪いの王がいる。
両面宿儺。
宿儺は,6月,少年院で,
自らの心臓を抜いたまま動き続け、
その後,修復すらやってのけたと聞く。
このまま虎杖が死ねば,宿儺も死ぬ。
宿儺とて,指15本の損失は痛いだろう。
よって,"心臓を潰しただけ"で虎杖を見逃せば。
この致命傷でさえも、
宿儺の反転術式で”帳消し”にされる。
だからこそ、真人は容赦しない。
宿儺すら修復不能なレベルで、虎杖の肉体を破壊する。
そう、今ここで──
真人(首を斬る──それで完全に仕留める)
腕を振りかぶる。
今まさに、虎杖の首を断ち切ろうとした──その瞬間。
──ぬるっ。
異質な呪力。
気配の輪郭すら掴めない、不気味な圧力。
真人「……っっ!!?」
背中に走る、ぞわりとした圧迫感。
反射的に、真人は後方へ跳ぶ。
その直後──
ズオォォォォンッ!!!!
──呪力ビーム。
つい先程の瞬間まで真人がいた場所に着弾。
地面が爆ぜ、砕け、瓦礫が火花のように四散。
その爆煙の中──ゆっくりと、“何か”が立ちはだかる。
それは──
異形の式神——リカ。
無言で宙に浮かぶそれは、
虎杖の身体の前に、まるで守るように立ちはだかっていた。
そして、その背後から。
???「虎杖君に,それ以上手出しはさせない」
──現れたのは、一人の少年。
黒髪を垂らし、長い刀を下げ、怜悧な眼差しを浮かべる。
そして——全身から呪力が立ち上っている。
乙骨憂太。
真人「……は? オマエ……」
乙骨はそのまま、無感情に言葉を続けた。
乙骨「本来なら,虎杖君の"処刑人”として来たんだけどね」
「でも僕は、虎杖君を殺す気なんかない──最初からね」
──ズズッ……
乙骨の背後。リカが低く唸るように咆哮。
乙骨「だから,君が虎杖君を殺すなら…君を祓う」
真人の口元から、自然と笑みが消える。
その代わりに浮かんだのは、微かな緊張。
特級術師との殺し合いが,始まろうとしていた。
そして,乙骨が虎杖の胸に触れた瞬間。
その掌から,正のエネルギーが流れ込み—-
シュウゥウ……ッ……
真人は,目を見開く。
それは、治癒。"反転アウトプット"。
破壊されたはずの心臓が、形を取り戻す。
乙骨は,淡々と手を離した。
乙骨「すぐには目覚めない。けど──助かる」
虎杖の意識は戻らない。
心臓が潰れていた以上、完全な覚醒までは数時間を要する。
しかし──
死の一撃は、帳消しにされた。
真人の口から,苦々しく、奥歯を噛み締める音が漏れる。
(チャンスを潰された……! いや、それだけじゃない)
“反転アウトプット”──つまり、
正のエネルギーを、直接対象に叩き込めるということ。
それをされたら—-呪霊には,致命傷だ。
真人は,魂を術式で守っているため,
即死とはいかないだろうが,
確実に有効打になる——大ダメージは避けられない。
真人「……殺す」
即断。
真人「領域展開──《自閉円頓裹》!!」
乙骨は即座に応じる。
乙骨「領域展開──《真雁相愛》」
ギイイイイイィン……ッ!!!
空間が軋み、領域の押し合いが発生。
両者の必中効果は、打ち消された。
真人は,即座に思考。
(反転アウトプットが脅威でも、触れられなければ問題ない)
(改造人間をベースに撹乱する……!!)
──が。
乙骨「──動くな」
真人「っ!?」
呪言。
真人(……しまったッ!!)
咄嗟に呪力で防御しようとするが──
不意の一撃。間に合わない。
肉体が、拘束されたように動きを止める。
乙骨の眼光が鋭く細まる。
視線の先は──動きを封じた真人、ただ一人。
そのまま、音もなく距離を詰める。
乙骨「──終わりだ」
真人(……ッッッ!!)
本能が警鐘を鳴らす。
(触れられたら……“詰み”だ!!)
逃げたい。全力で逃げたい。
だが──肉体が動かない。
そして、乙骨の掌が目前に迫った──その時。
パリィィン……ッ!
領域の外郭が,一部ひび割れる。
領域への——侵入者。
ギイイイィィィン!!
乙骨と真人の間に,"切断バリア"が出現。
乙骨「っ──ッ!?」
すぐに踏みとどまり、手を引く。
触れていたら──手首が落ちていた。
乙骨の表情が、警戒へと切り替わる。
???「ごめん真人……遅れた!!」
現れたのは,
右腕をぐしゃぐしゃに潰されたままの──祈月。
祈月「言われた通り、アイツ(脹相)は始末したよ!」
片腕の激痛をものともせず。
祈月は,真人の傍らに駆けつけた。