真人「ナイス。君、最高」
真人はそう言い、しかし視線は乙骨から逸らさない。
即座にスッと手を伸ばし、祈月の肩に触れる。
──“無為転変”。
グシャグシャに砕けていた祈月の右腕が、
肉の蠢きと共に爆速修復される。
そのまま,左腕も。ジュルル……と不快な音を立て,
裂傷と筋断裂が縫い合わされるように瞬間治癒。
真人「アイツに触られんなよ。
反転アウトプットあるから。
それから、呪言も飛んでくる。」
口調は軽いが、その語気には余計なものが一切ない。
短く、速く、必要な情報だけを伝える。
祈月は、小さく頷いた。
祈月(……間に合ってよかった)
実際、祈月がここに至るまでの経緯は――
一瞬の判断の連続だった。
脹相を両断,殺害し、戦闘を終えた直後。
あの“ぬるっ”とした、
異質で得体の知れない呪力を再び感知した時点で。
迷いはなかった。
祈月(あれ……真人に向かってる…!!近い…!!)
即座に判断し、限界の身体で全速力で走る。
呪力感知を最大精度にして、空間座標を読んで──
そして,その目的地にあったのは黒い球体。
領域の結界。
それを目視した瞬間、
祈月は迷いなく外郭の一部をこじ開け,内部にダイブ。
──乙骨の《真雁相愛》。
──真人の《自閉円頓裹》。
今、この空間では両者の領域が互いに干渉し、
必中効果が打ち消し合っている。
ゆえに、領域を展開していない祈月にも、
「必中の攻撃」が飛んでくることはない。
それでもこの空間に飛び込むのは──相応の覚悟が要る。
だが、祈月にとっては、
迷う理由など最初から存在しなかった。
祈月(真人を殺させるくらいなら、死ぬ)
あの日,渋谷で邂逅した瞬間から。
祈月の魂は、そう決まっている。
──その魂を、真人は感じ取っていた。
一方、乙骨。
(……通せなかった)
呪言によって動きを止め、
そこに反転アウトプットを叩き込む。
対呪霊における、“殺し切るための最強にして最速手順”。
それを、止められた。
寸前に現れた祈月によって──
“リカ”との接続時間は、5分のみ。
この5分が過ぎれば、術式も封じられ,領域も解除される。
そして,呪言は。
来るとわかっていれば,対策できない術式ではない。
耳から脳にかけてを呪力で守ればいい。
だからこそ,あの初見殺しで真人を仕留めておきたかった。
乙骨(だが仕方ない。切り替える…短期決戦だ)
そして、式神・リカ。
リカは、乙骨の傍に座し,ただ命令を待つ。
3者(あるいは4者)の思惑が交錯する領域空間。
戦いの鐘は,静かに鳴り響いていた。
※ちなみに気づいている方は多いと思いますが…
──このルートでは、真人が吸収されておらず、
死滅回遊も発生していないため、
乙骨は「烏鷺の空を操る術式」などの術式を
一切コピーできていません!
(そもそも烏鷺たちが受肉していない世界線なので!)。
よって,コピー術式に関しては呪言一本で戦ってます。