三者の思考の交錯の後。
真っ先に動いたのは、真人だった。
真人「じゃ、始めよっか♪」
その掌から、改造人間がぞろぞろと溢れ出す。
形も数も様々な異形たちが、うめき声を上げながら、
乙骨へと一直線に殺到!
これは,あくまで囮。
真人(こいつらで動きを誘導して……)
(祈月の切断バリアに当てさせる──)
だが。
乙骨「……死ね」
ボソリと呟いたその瞬間──
ドサッ……ドサドサドサッ!!!
無数の改造人間たちが、まるで糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
地響きのような“静寂”が、戦場に一瞬だけ満ちる。
呪言。
それは対象が“強大”であればあるほど、
強力な命令であればあるほど,通りにくくなる。
反動も重い。
だが、対象が有象無象の改造人間なら、
たった一言で事足りる。
真人「……くそ、白兵戦は通じないか」
舌打ちする真人。
──ズッ!!
突如、地を蹴った“リカ”が、
猛スピードで祈月と真人に向けて突撃!!
質量を伴う巨体が、破壊的な圧をもって迫る──が。
ズバアアァァァッッ!!!
“リカ”の腹部が、まっすぐ深く、断裂した。
祈月が先に読み、設置していた“切断バリア”に、
リカが真正面から突っ込んだのだ。
ドバッ──!!!
腹から血が噴き出す。
それでもなお、リカは無言で構えを崩さないが、
その動きは一瞬鈍る。
祈月「的がデカいとさ……動き、読みやすいんだよね」
無機質な笑みを浮かべ、祈月は呟く。
乙骨「っ……“リカ”!!」
拳を握り締める乙骨。
祈月のバリアの殺傷力は、今や完全に“認識”された。
乙骨(下手に突っ込めば、真っ二つだ……なら──)
下手な接近は悪手。
すぐに判断を切り替える。
掌に、巨大な呪力がチャージされ始める。
乙骨「──撃ち抜く!!」
狙うは、二人ごと焼き尽くす、呪力砲。
しかし。
真人「改造人間──噴霧爆裂ッ!!」
真人が指を弾く。
改造人間の魂を瞬間的に細かく砕き,
その肉体を霧状に変換し,ぶち撒ける!
次の瞬間、
シュウウウウウウウウッ……!!!
呪力と肉塊が混ざり合った、
白濁した煙幕が領域全体に拡がる。
乙骨「……!? 視界が……!」
その一瞬の隙をつき──
祈月と真人の姿が、煙の中からスッと消える。
乙骨「くっ……!!」
乙骨は呪力感知が得意ではない。
必死に目を凝らし、気配を探る。
──そのとき、斜め後方に“ぬるり”と浮かぶ,真人の影。
乙骨「そこかッ!!」
無音の接近。
構えた刀を一気に振り抜く!
──ズバァァッ!!!
視界に捉えた真人へと、乙骨の一閃が斬り込む。
刃は肩口から袈裟に通り──
真人の肉体はあっけなく、崩れ落ちた。
乙骨「……ッ!?(軽い……?)」
妙だ。
“真人”をこれほど容易く屠れるはずがない。
いくら何でも…"弱すぎる"
そして──背後から。
真人「……《無為転変》」
ゾワリ、と肌を撫でるような音。
そう,乙骨が斬ったのは"分身"。
乙骨の背に、いつの間にか回り込んでいた“本体”の真人が、
そっと掌を当てていた。
ビキビキビキィィィィ……ッ!!!
乙骨の魂が、引っ掻かれるように軋む。
まるでヤスリで削られるような、
不快な鈍痛が身体の芯から広がる。
乙骨「ッ──ぐっ……!!」
激痛に歯を食いしばりながら、乙骨は剣を逆手に振り抜く!
ヒュッ──
しかし、真人はその斬撃が届く寸前に
──バッと飛び退いて距離を取る。
真人「はぁ……オマエさ、呪力量お化けなんだよ」
飄々としながらも、瞳には確かな分析の光。
真人「魂、見えてないはずなのに,
——"無意識”でガッチリ防御してる。
ま、特級術師だし当然か?」
乙骨の腹部には、赤黒い“亀裂”が走っていた。
そこからじくじくと流れ出る血。
反転術式を流しても、せいぜい止血のみ。
完全な治癒には至らない。
真人「まぁ…でもね、あと2〜3回も触れれば、
──君、死ぬよ」
そう言って、
にたりと笑みを浮かべながら手を前に突き出す。
乙骨「……“動くな”!」
呪言──!
ズンッ!!!
真人の肉体が一瞬ピクリと震え、動きが止まる。
その瞬間。
乙骨の背後に控えていた“リカ”が、
すでにチャージを完了させていた呪力砲を
真人めがけて解き放つ!!
ズドォォォォォォン!!!!!!
砲撃が炸裂!
だが──
真人「同じ手をさっ……くらうわけないだろっ!?」
呪言による硬直は,ほんの一瞬。
真人の身体が砲撃の直前に飛び退き、
顔の一部が焦げるだけにとどまる。
真人「魂の形を変えて、
耳の構造も脳の回路も再設計済み。
そのうえで呪力を集中──」
ぬるぅ、と笑う。
真人「呪言なんか、もう効かないよ♪」
それはすでに、“呪言対策”を完全に済ませた者の余裕。
そして──
改造人間の霧が晴れ、領域内の視界が一気に開ける。
その瞬間、姿を現した祈月の目が鋭く細まる。
乙骨とリカの動き──
視線、足の角度。
祈月(次。動いたら…合わせる。斬る)
祈月はそれらを慎重に読み取り,
次の動きを予測し始める。
“切断バリア”で,決めるために。