真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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特級達の転機

 

乙骨は考えを巡らせていた。

(やはり、真人に致命傷を与えるには──“反転アウトプット”しかない)

 

しかし、安易な接近は命取りだ。

切断バリアを操る祈月がいる限り、その一手は“読まれる”。

 

ならば。

 

乙骨「……爆ぜろ」

 

呪言。標的は祈月。

 

祈月は既に対策として、

耳から脳にかけて呪力で防御を施していた。

 

だが──祈月の肉体は元来、打たれ弱い。

自分でもそれを自覚していたからこそ、

これまで回避を重視した戦法を貫いてきた。

 

結果、呪力による“ダメージ耐性”の経験値は、

——-圧倒的に乏しい。

 

次の瞬間──

 

ブシャアァッ!!!

 

祈月の全身から、鮮やかな血が吹き出す。

爆発はしなかった。

だが、皮膚が裂け、血管が弾け、全身が鮮血に染まる。

 

祈月「あっ……」

 

刹那、意識が遠のきかける。

ふらり、と膝をつく。

 

真人「っっ!!」

 

その様子を見た瞬間、真人の中に“確信”が走る。

 

(……ダメだ。呪言対策、本人の防御だけじゃ足りない)

(無為転変で、耳と脳そのものの構造を弄らなきゃ──)

 

真人は即座に判断し、

乙骨から視線を逸らし祈月の元へと走り出す──

 

だが、その動きは、乙骨の狙い通り。

 

乙骨「──そこだ!!」

 

次の瞬間、乙骨はすでに真人の至近に迫っていた。

 

真人「っ!!」

 

反射的に構える。

互いの掌が、同時に相手の肉体に触れた──

 

乙骨「反転術式!!」

真人「無為転変!!」

 

ビキビキビキッッッ!!

正のエネルギー注入。魂破壊。

 

呪力の正反が、魂の芯から互いを焼き裂いた。

 

音もなく、互いの肉体が,魂が,軋む。

 

ドシュッ……!!

 

乙骨の腹部から血が吹き出す。

真人の胸も、内側から裂けたように血が滲み、膝をついた。

 

二人の体勢が、同時に大きく崩れる。

 

その衝撃が、領域全体に波及した。

 

──ギギギギギィィ……!!

 

拮抗していた二つの領域、《真雁相愛》と《自閉円頓裹》が、

互いに軋みを上げて揺らぎ始める。

 

そして。

巨影が迫る。

 

リカ。

 

祈月に向かって、牙を剥き出しにして突進。

 

祈月「く……ッ!!」

 

視界が揺れる中、それでも即座に切断バリアを張る。

 

“予測”は間に合わなかった。

だが、“牽制”だけは──間に合った。

 

ビィィィン——!!

 

リカ「……ッ」

 

眼前に切断バリアが出現し,リカは寸前で静止。

 

リカの切断には至らなかったが,

祈月への接近を阻むことには成功。

 

一方——乙骨と真人。

両者大ダメージでふらつきながら,

先に踏み込んだのは——乙骨だった。

 

乙骨「ハァ……ハァ……」

 

血を滴らせながら、乙骨はふらつく足で立ち直る。

そのまま、なおも真人めがけて刀を振り上げ──

 

ズバァアァッ!!!

 

渾身の一撃。刀身が呪力で唸り、

衝撃波を纏って空間ごと斬り裂く。

 

真人「……っ!」

 

同じく血を流しながら,

真人は回避行動をとるが——僅かに反応が遅れる。

身体が浅く切り裂かれ,巻き起こる衝撃波を浴び、

体勢を崩す——

しかし,ギリギリで後方へ飛ぶ。

 

向かう先は──祈月。

 

全身を血に濡らした祈月が力なく首を傾けると同時に,

真人の掌が触れる。

 

真人「──無為転変!!」

 

不快な音とともに、祈月の耳と脳の構造が変質する。

呪言対策に最適な形へと。

 

同時に、乙骨の呪言によって裂かれた皮膚と筋肉も、

鮮やかに治癒。

 

祈月の意識が,急速にクリアに戻る。

 

真人自身,反転アウトプットを喰らって満身創痍なのに,

祈月の治癒を優先した理由。

 

——それは,"情"ではない。

——この状況における,"切り札"を切るため——

 

真人「ハァッ……領域,交代ね」

祈月「了解。回復に専念して」

 

即答。

互いに迷いはない。

 

祈月「領域展開──《夢幻桃源郷》」

 

キィイイイイイィン……ッ!!!

 

空間の大半が,急速に塗り変わる。

静かで、冷たい呪力が空間に満ちる。

 

祈月の領域が展開されたのと、ほぼ同時。

真人の《自閉円頓裹》──解除。

 

乙骨(っ……!? 領域が──!)

 

刹那、視界が大きく色を変える。

祈月の領域と乙骨の領域、

《夢幻桃源郷》と《真雁相愛》が、

空間の覇権を巡って激突する。

 

──ギギギギギギィィィィィン!!!

 

二つの領域が、互いの外郭を侵食し合う。

再び押し合いが発生し,

互いの必中命令が打ち消し合う。

 

しかし。

 

劣勢は、明らか。

夢幻桃源郷が,真雁相愛を飲み込み始める。

 

乙骨(……っっ!! あいつも、領域使えたのか…!)

 

衝撃が、脳髄を揺らす。

 

──祈月は、《無為転変》で全身を修復され、

呪言への対策も完成されている。

 

──乙骨は、《無為転変》を二度喰らい、

身体の奥から魂が削れている。

 

真人の手によって,癒された魂と,削られた魂。

その差が,互いの操る領域にも如実に現れていた。

いま、乙骨は不利だった。

 

そして何より。

 

《リカ》との接続時間。

──残り、2分を切っている。

これがタイムリミットになれば,術式は使えなくなる。

そうすれば——領域展開,《真雁相愛》も強制解除となる。

 

乙骨(あと2分弱……この状況で、新たな領域相手に……)

 

 

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