真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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拠点回帰

そして、渋谷での激闘を終え、

祈月と真人は静かに拠点へと帰還した。

 

現在、時刻は──

2018年11月8日、17時過ぎ。

 

拠点を出たのはまだ朝のうちだったが、

帰ってきた頃には、

すっかり夕方の気配が山の斜面に漂っていた。

 

二人が住み着いていたのは、

山奥の天然温泉近くにぽつんと建つ、

小さな木造の小屋だった。

 

もともとは管理人がいたようだが、

祈月と真人が来てからその姿を見る者はいない。

 

真人「あははっ! ただいま〜!」

 

テンションの抜けない声とともに、

真人は服を乱雑に脱ぎ捨てると、

湯けむり漂う温泉へと飛び込む。

 

バシャァン──!!

 

濡れた髪が宙を舞い、湯が派手に飛び散る。

 

真人「いやー、まさか特級術師飛んでくるとは思わなかったよねー!」

 

湯船の中でのびのびと両腕を広げながら、

真人は飄々とした声で続ける。

 

真人「てかアイツ、"本来なら虎杖君の処刑人として来た”って言ってたけどさ。

五条悟封印されたせいで、

ガチ死刑になってんじゃん、虎杖。

“人を助ける”とか言っときながら、

その“人”に死ねって言われてんの、マジウケるんだけど?」

 

祈月も続いて服を脱ぎ、湯へと身を沈める。

呪霊恒例,羞恥ゼロの全裸混浴,再び。

 

湯気の奥、彼女は静かに息をつきながら答える。

 

祈月「……まあだってさ。宿儺の器が生かされてたのって、

五条悟の我儘だったんでしょ?

その五条悟がいなくなったら、そりゃそうなるよね〜」

 

祈月「てか…あの特級術師が来たとき、

本気でヤバいと思ったんだけど?

あたしの呪力感知、

マジで“ビーッ、ビーッ”って警報鳴ってたもん」

 

真人「だよねー。俺と君とで、

リレー形式で領域展開しても仕留め切れないとか、

バケモノじゃん?」

 

祈月「それ。夢幻桃源郷で勝ちだと思ったのに、

まさか自分の領域ごと巻き込んで

崩してくるとか思わなかった」

 

真人「しかも虎杖も仕留め損なったし……。

……まぁでも、いいや!」

 

そう言って真人はふと、ニヤッと唇の端を吊り上げる。

 

真人「祈月さ、脹相仕留めてくれたんでしょ?」

 

祈月は、肩まで湯に浸かりながら、目を細めて小さく頷く。

 

祈月「もちろん。ちゃんと真っ二つにしたよ」

 

真人はそれを聞くと、にいっと嗜虐的に笑った。

 

真人「ふふっ、楽しみだなぁ……。

俺に負けて、味方してた脹相も死んで──

次会った時、どんな顔してるんだろ…♪」

 

真人「ま、それより前に、死刑になってるかも……だけどさ☆」

 

そうして,ふたりは。

一時間ほど温泉に浸かり,身体を癒した後。

新しい服に着替え、湯上がりの余韻をまとったまま、

小屋へと戻っていた。

 

真人は、見慣れたハンモックに向かうと、

無防備に、全身の力を抜いてドサリと横になる。

 

真人「ふぁ……疲れたし、ねむ……」

 

そのまま、くしゃくしゃの髪を枕に押し潰しながら、

まるで安心しきった子どものように身体を沈める。

 

その横には、キャスター付きのふかふかの椅子。

祈月は、そこにちょこんと腰掛けた。

膝を揃え、真人の様子を静かに見つめる。

 

祈月「てか真人、反転アウトプット喰らってたよね?

アレ、大丈夫なの?

あたしだったら、まず即死なんだけど……」

 

温泉で見た時、真人の胸には──

まるで陶器に走るような、赤黒い亀裂が残っていた。

それは“魂”まで届いた、

正のエネルギーの一撃の爪痕。

 

真人「ん〜?

あぁ、まあ他の呪霊なら耐えられないだろうけどさ。

でも、俺は術式で魂を守ってるから。

1発くらい、へーきへーき」

 

涼しげな顔で,手をひらひらさせながら言う真人。

 

祈月「……それならいいけど」

 

そう呟いて、祈月はそっと手を伸ばす。

指先が真人の胸元に触れ、ひび割れの跡をなぞるように、

静かに撫でる。

 

真人「……ん〜〜」

 

真人はそれに気を良くしたのか、

嬉しそうに目を細めて──

祈月に、悪戯っぽく,ふっと笑いかけた。

 

真人「あ〜、じゃあさ、撫でてて。

その方が、早く治る気がする〜」

 

祈月「えぇ!? ……もう……」

 

口では抗議するような言葉を漏らすが、

祈月の手は一切止まらない。

むしろ、その動きはますます優しく、穏やかに。

一番愛しいものに,触れ続けるように。

 

真人「……ん…」

 

安心しきった表情で、真人の瞼が静かに閉じられる。

呼吸が整い、やがて小さな寝息が聞こえてきた。

 

すぅ……すぅ……

 

祈月「……うわっ、かわいい……♡」

 

その一言は、理性を通ることもなく、

祈月の口からぽろりと零れた。

表情が緩み,とろけ,思わず口に手を当てる。

 

祈月はそっと立ち上がり、近くの毛布を取り上げると、

真人の肩口にふわりと掛けた。

 

布の重みが、真人の寝息に合わせてゆっくりと上下する。

 

祈月「……おやすみ、真人」

 

小さく囁くように言って、

祈月は,真人の頭を,ポン,と撫でた。

 

特級呪霊ふたり。

月の呪いと人の呪いが,共に座す山小屋。

その中には、温もりだけが静かに灯っていた。

 

 

 

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