真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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地獄の収束

六月の少年院での邂逅から。

両面宿儺は,確信していた。

 

伏黒恵の、宿儺の“猛毒"への耐性。

並の人間なら、受肉の瞬間に即死する。

だが伏黒は違った。

“器”としての資質を宿儺に見せていた。

 

だが——

安易に伏黒へと移動すれば、

“器”ではなく、

虎杖のように"檻”になる可能性がある。

肉体の主導権を得られなければ意味がない。

 

ならば待つ。

──伏黒の魂が折れる瞬間を。

 

そのときなら、

主導権を奪い、肉体を乗っ取れる。

 

そして今——

 

その瞬間が、

完璧な形で整っていた。

 

偶然。

 

だが、それはまるで——精密に仕組まれた地獄の連携。

 

祈月が、真人吸収を阻止して羂索の計画を狂わせ。

 

真人が,祈月に命じて脹相を殺させ。

 

乙骨が,真人から虎杖を守りきり。

 

羂索が、計画変更のために津美紀を殺し。

 

──虎杖は、“兄”を喪い。

──伏黒は、“姉”を喪った。

 

そして今。

ふたりは,同じ空間にいた。

 

すべての地獄が,因果が。

完璧な軌道を描いて、宿儺のもとへと収束する。

 

禍々しい呪印が奔り,

魂が入れ替わった虎杖の肉体。

その口元が、ニヤリと笑った。

 

——-「契闊」

それは、その間誰も傷つけず殺さない"縛り"が

課された、宿儺に与えられた1分間の自由。

 

宿儺「ケヒッ……さて、ここからだな」

 

宿儺は,

左手の小指に呪力と魂を集中させ——

 

ブチィッ!!

 

己の小指を、引きちぎった。

 

血が迸る。

だが、宿儺はそれすらも嘲笑うように、

高らかに笑い声を上げた。

 

宿儺「つくづく!!愚かな小僧だ……!!」

「“誰も傷つけない”という縛りに……

自分自身を入れていない!!」

 

伏黒「……っ!!」

 

伏黒は,なぜ宿儺が出てこられたのか分からない。

 

"契闊"の縛りは,

宿儺以外,誰も把握していない。

 

状況に混乱する。

それでも,震える手で構えを取る。

 

伏黒「布瑠部由良由良……!」

 

魔虚羅。

 

自らの犠牲を前提に,

宿儺ごと調伏の儀に巻き込み、

最悪の事態を止める——

 

そのつもりだった。

 

ぐんっ!!

 

伏黒の右手が、力強く引かれる。

 

宿儺がその手を掴み、“掌印”を崩した。

 

伏黒が抵抗する間もなく、

宿儺は、がしっと伏黒の顔を掴み、

引きちぎった小指を、そのまま——

 

「ゴクン」

 

——飲ませた。

 

ド ク ン ……

 

魂が、落ちる音。

 

宿儺は、虎杖の身体から出ていく。

そして、次の瞬間——

 

伏黒の身体が、ピクリと動く。

口元が、歪んだ笑みを形作る。

 

宿儺「……言ったろう?」

「面白いものが、見れると……——小僧」

 

その目に浮かぶのは、

血のように濁った、嗤いの色。

 

その宿儺の言葉に、虎杖は、絶句した。

 

虎杖「……伏黒……??」

 

目の前にいるのは、確かに伏黒の姿。

だが、その顔には,禍々しい呪印が浮かび。

表情は,伏黒のそれではない。

そして、何よりその声が——宿儺だった。

 

虎杖(……なんで、今、宿儺に主導権を奪われた……?

いや、それより、なんで宿儺が,伏黒に——-)

 

理由が分からない。

「契闊」の縛り——

それ自体の記憶が、

虎杖の中から抜け落ちているからだ。

 

脳が追いつかない。

体が動かない。

虎杖の中で、理解と混乱がせめぎ合う。

 

その隙を見逃す宿儺ではなかった。

 

宿儺「——解」

 

刹那、宿儺が虎杖に向けて斬撃を解き放つ。

 

それは、憂さ晴らし。

 

宿儺の指を勝手に取り込んでおいて,

全く肉体の主導権を渡さずにいた、

忌々しい"檻"——虎杖への。

 

つまらない"器"の分際で、

不届にも"王"たる自分を抑え込み続けた思い上がり。

それを、命を持って償わせるつもりだった。

 

ズバァアッ!!!

 

赤い閃光が閃き、虎杖の胴を斜めに裂く。

しかし——致命傷ではなかった。

 

血を吐き、後退しながらも、虎杖は踏みとどまった。

 

宿儺「……なぜだ? 硬い……?」

 

──宿儺の目が細められる。

斬撃の手応えが、明らかに鈍い。

 

力を抜いたつもりはない。呪力も通している。

にも関わらず——虎杖を,両断できない。

 

虎杖「宿儺ァァァァ!!」

 

雄叫びと共に、虎杖が殴りかかる。

 

——渋谷での大量虐殺への怒り。

──伏黒を奪われた怒り。

拳に込められた呪力が、宿儺へと迫る。

 

バヅン!! バヅンッ!!!

 

宿儺は、躱しつつ斬撃を重ねる。

しかし、どれも浅い。

手応えが足りない。

 

虎杖の肉体が強靭になったわけではない。

宿儺自身の呪力が、確実に鈍っている。

 

──否。

「誰か」が、抑え込んでいる。

 

宿儺「……伏黒恵め」

 

呟く宿儺の声には、嘲笑と微かな賞賛が混じっていた。

 

そして,

眼前で血を流し、なおも立ち上がる虎杖に、

宿儺はゆっくりと向き直る。

 

虎杖は理解していなかったが、

宿儺ははっきりと感じていた。

 

まだ伏黒恵の“意志”が残っている。

完全に支配したつもりだった。

魂が折れたと思っていた。

 

だが、それでも。

この男の魂は、簡単には諦めない。

 

伏黒の魂は,肉体の主導権を奪われながらも,

なお,宿儺に抗い続けていた。

 

 

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