真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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呪いの王

虎杖と宿儺の戦いが続く,遺体安置所。

そこに——駆けつける一人の影。

 

乙骨「虎杖君、伏黒君!!」

——乙骨憂太。

 

禍々しい,異質な呪力を感知した彼は——

全身に纏う呪力を放出しながら、飛び込んでくる。

 

彼の目に飛び込んだのは、

血を流しながらなおも立ち上がる虎杖と、

禍々しい呪印を浮かべた伏黒の姿。

 

乙骨「え……宿儺??」

 

「伏黒君……なんで……!?」

 

声が震える。状況が理解できない。

 

だが、時間は待ってくれなかった。

 

虎杖「乙骨先輩!! 頼む、今は一緒に、コイツを!!」

 

──その言葉が、すべてを物語っていた。

 

乙骨の瞳が、すっと戦闘の色に変わる。

 

一方,宿儺は。一瞬、思考をめぐらせた。

 

(伏黒恵の魂が俺に抗っているこの状況,

この小僧どもを殺しきるのは難しい——否。

 

ならば——

"殺せる空間"に塗り替えるまでだ)

 

即決。

 

宿儺は、ぴたりと手を合わせ——

 

宿儺「領域展開———《伏魔御厨子》」

 

──ガアアァァァァァァァッ!!!

 

呪力の奔流が渦を巻き、

空間に,牛骨に囲まれた寺の堂が出現。

 

乙骨「っっ……!!領域展開———《真雁相愛》!!」

 

乙骨も即座に掌印を組み,応戦する。

 

だが——

状況は最悪だった。

 

宿儺は、伏黒の魂の抵抗により出力が落ちてはいる。

 

だが,それでもなお呪力の総量は乙骨の倍以上。

 

しかも——-

乙骨は本日,すでに,

祈月&真人との戦闘で領域を一度展開済み。

 

そして,真人の“無為転変”を二度受けたダメージが

尾を引いており,回復しきっていない。

 

更に———

 

宿儺の領域、《伏魔御厨子》は、外郭を持たない。

 

つまり、乙骨の《真雁相愛》の外からでも

必中効果が届いてくる。

 

領域の外郭に降り注ぐ“無数の斬撃”。

 

──ガギギギギギィィィィィ……!!!

 

《真雁相愛》の結界壁が削られていく。

 

耐えきれない。

支えきれない。

 

乙骨「……くっ……!!」

 

乙骨が苦悶の声を漏らす。

 

そして——

 

ガシャァァァァァン!!!!

 

《真雁相愛》、崩壊——!!!

 

空間が完全に、《伏魔御厨子》に塗り潰される。

 

そこにいるのは、王。

 

全てを斬り伏せる、“呪いの王"。

 

──そして、斬撃の雨が降り注ぐ。

 

 

《伏魔御厨子》の領域内——

虎杖と乙骨は、

絶え間なく降り注ぐ斬撃の雨に晒された。

 

──それはもう、どうにもならなかった。

 

《伏魔御厨子》の必中範囲は、半径およそ二百メートル。

その中に存在する、

呪力を持つモノ,持たぬモノ。

生物、無生物、その全てに。

 

“王”の裁断は、等しく下される。

 

乙骨の呪力での防御は、

とうに限界を迎えていた。

反転術式も、もう練れない。

 

虎杖は、渾身の根性だけで立っていたが、

その両腕は裂かれ、

腹には深々と鋭い断裂が走っていた。

 

──斬り刻まれる。

 

もう、感覚は機能していない。

全身が裂け、血が霧散し、

骨すらも細切れにされ,灰燼と化してゆく。

 

病院の壁が、一瞬で消し飛ぶ。

 

病院内の人々は,風と消える。

 

伊地知は,手元の資料ごと砂塵と化す。

 

道路のアスファルトが裂ける。

 

信号機が粉砕される。

 

車ごと通行人が、粒子になって空に消える。

 

街が。

世界が。

呪いの王に斬り伏せられていく。

 

──そして。

 

ギィ……ン……と、鈍い音を残して、

《伏魔御厨子》が、解除された。

 

静寂。

 

そこに、“建物”もなかった。

そこに、“人”など、もういなかった。

"死体"すら,存在しない。

あるのは,ただ,"地面"のみ。

 

更地と呼ぶことすら生ぬるい,

ただ一面の、焦土。

 

その中心に——

 

宿儺が立っていた。

 

伏黒恵の身体。

だが、もはやそこに伏黒の意思はない。

 

虎杖と乙骨の死。

津美紀の,遺体すら残らぬ,完全な消滅。

無数の無関係な人々の殺戮。

 

全てが重なり——

 

伏黒の魂は、沈んだ。

 

沈んで、沈んで、沈んでいった。

宿儺の意識の底、どこにも浮かび上がってこないほど深く。

もう——二度と、抵抗などできないほどに。

 

宿儺は、その沈黙を確認すると、

ゆっくりと手を下ろした。

 

宿儺「……ようやく、静かになったな」

 

その声は、誰に向けたものでもなかった。

ただ、勝者のものだった。

ただ、王のものであった。

 

今、ここに——

“呪いの王”は、完全なる復活を果たした。

 

 

 

 

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