瓦礫の上に、半ば崩れるように倒れた釘崎の身体。
その顔の右半分は、ぐしゃりと崩れ、血と肉片が岩の上に飛び散っていた。
虎杖「く、釘崎……?」
声は震え、呼吸が浅くなる。
応答はない。虚ろな目が、天井のない空間をただ見上げていた。
真人「魂が見えなくてもさ、わかるだろ? “もう終わり”って」
──その一言が、音となって虎杖の胸を突き刺す。
次の瞬間、虎杖の両膝が砕けるように崩れ、瓦礫に崩れ落ちた。
拳に力は入らない。
頭が真っ白になってゆく。
真人「なあ、虎杖? オマエ、俺が人間を殺したって言うけどさ──」
真人が歩み寄る。
片手で虎杖の襟首をつかみ,
そのままぶん回すようにして地面に叩きつけた!
ズガァッ!!
虎杖「ッッ……!!」
真人「……オマエが殺した呪霊を、数えたことはあるかい?」
拳が、顔面に。
膝が、腹に。
虎杖の皮膚が裂け、骨が軋み、口から血が垂れる。
だがもう,立ち上がる気力すらない。
無抵抗のまま、虎杖は嬲られていく。
真人「無いよなー、俺も☆俺も⭐︎ 殺した人間の数なんて、マジでどうでもいいもん♪」
そして、真人の右腕が変形する。
刃と化した右腕が、大きく振りかぶられーー
真人「オマエのことも、そのうち忘れるさ」
虎杖の首めがけて振り下ろされる、その寸前!
パンッ!!
甲高い音とともに、真人の姿が──消えた。
虎杖の眼前に現れたのは,
首にロケットペンダントを下げた,
筋骨隆々なチョンマゲヘアの、一人の男。
??「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす……」
「ただし!!俺たちを除いてな!!」
虎杖「……えっ……東、堂……!?」
真人の攻撃は空を切った。
東堂と真人の位置が──ブギウギで入れ替わっていた。
東堂「起きろ虎杖(ブラザー)!!俺たちの戦いはこれからだ!」
虎杖の目に、僅かに光が戻る。
真人「……チッ、いま終わらせるところだったのに」
その声と表情は,
玩具を途中で取り上げられた子供のように不満げ。
気を取り直してトドメを刺すべく、
虎杖へと再接近する真人。
しかし──
東堂が素早く呪力を込めて石を投げ,
パンッ!!
乾いた音が、戦場に響く。
投げた石と真人との位置替え。
真人の視界が“横滑り”した。
視線の先にあった虎杖の姿が、一瞬で消え――
真人「ッッ!? ……こいつ……!」
虎杖達は視界の遠方へ。
真人の位置は、完全に切り替えられていた。
その直後、石の連続投擲,そして再びの拍手。
位置が次々に切り替えられる。今度は真横、その次は後方。
真人「んぅぅ……!」
間合いを詰めようとしても、
一歩先を越され,石と位置替えされる。
東堂のブギウギが、戦場そのものを独壇場に変えていく。
真人(鬱陶しい,攻撃が届かない……!)
思考の一拍遅れを突くように――
??「虎杖君っ!!」
不意に、戦場の瓦礫の隙間から駆け出してきた影。
新田が跳ねるように虎杖に駆け寄る。
新田「俺の術式を施します、虎杖君!!」
瞬時に片手を虎杖の背中に当て、
もう片手で五芒星の印をきり、術式を展開。
流れ込む呪力が虎杖の体内をめぐり、
破損しかけた器官をぎりぎりで保護する。
新田「君の今ある傷はこれ以上は悪化しません!治りはしませんが,出血が止まり,痛みが和らぎます!」
虎杖の身体が、ピクリと動く。
拳に力が戻り、地を踏む足に再び“重さ”が戻る。
そして──
新田「……あっちの子にも同じ処置をしました!」
新田の視線は、まだ血塗れで崩れ落ちたままの釘崎へ。
「呼吸も脈も止まってましたが……時間が経ってないんで……助かる可能性は……ゼロじゃない!!」
虎杖「っ……!!」
こみ上げるものを、声にできないまま飲み込む。
歯を食いしばり、震える拳をぐっと握る。
目の奥の“光”が、一度は沈んだその光が――再び、燃え上がる。
新田「俺は彼女連れて離脱します!ゼロじゃないだけですからね!期待せんといてくださいよ!」
言い切った新田は、そのまま釘崎の元へと走り去っていく。
そして、その肩越しに――
東堂「……よう、虎杖(ブラザー)──おかえり」
振り返れば、そこに東堂が立っていた。
戦場の緊張は、何一つ変わらぬまま。
けれどその瞳だけは、信じて疑わぬ光で虎杖を見据えていた。
虎杖は、小さく──けれど確かに、力強く応じた。
虎杖「……応ッ!!」