真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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平安回帰

あたり一面、瓦礫も残らぬ焦土。

 

都市ごと吹き飛ばされ、

ぽっかりと“空白”が空いたような一帯に。

 

ただ一人,立っていた。

 

両面宿儺。

 

その姿は、伏黒恵の肉体を用いながらも、

魂は,完全に宿儺のものであった。

 

——その時。

 

ザッ……と、地面を音もなく踏みしめ、

一つの影が宿儺へと近づく。

 

白いボブカットの髪に、後頭部の鮮やかな赤。

中性的な輪郭と、冷たい光を宿すその瞳。

 

その人物は、迷いなく膝をつき、頭を垂れる。

 

裏梅「お迎えにあがりました。

——お帰りなさいませ、宿儺様」

 

言葉は静か。だが、確かに滲んでいるのは——

千年越しの忠誠と、主の“完全復活”への喜び。

 

宿儺はわずかに目を細め、口の端を持ち上げた。

 

宿儺「…裏梅。待たせたな」

 

長き刻を超え、ついに再び“主従”が揃う。

 

そして——

 

宿儺「飢(かつ)えていた。

千年ぶりの食事といきたい。……裏梅よ」

 

「料理の腕は、落ちていないだろうな?」

 

その問いに、裏梅の表情が緩む。

 

裏梅「お任せください、宿儺様」

 

「この裏梅、宿儺様お好みの逸品をご用意いたします」

 

返答は即答。寸分の迷いもない。

 

主の飢えを満たすということこそ、

裏梅の存在理由なのだから。

 

地獄の斬撃の後、王が次に欲したのは、

——晩餐(ディナータイム)。

 

それは暴虐でも残虐でもなく、

ただ純粋な“望み”。

裏梅は一礼し、宿儺の歩みに先んじて進み出す。

 

場所は変わって、某所。

 

深い森に囲まれた山奥の古びた屋敷。

 

だが、内部は整然と整っていた。

まるで主を迎える準備のように。

 

宿儺と裏梅が玄関をくぐったその時。

既に一人の男が、

ちゃぶ台のような円卓の前に座っていた。

 

袈裟に身を包んだ,長い黒髪。

隙のない所作。

そして、その顔には、どこか人を喰らうような笑み。

 

──羂索。

 

羂索「やあ。

千年ぶりだね、宿儺」

 

「……復活、おめでとう」

 

宿儺の瞳が細まる。

 

宿儺「羂索。……あの小僧の肉体は、貴様の仕込みだろう」

 

「相変わらず……気色の悪いことばかりしているな」

 

口調は軽く、嘲るようでありながらも、

そこにあったのは,妙な“親しみ”。

 

羂索「フフ……言われ慣れてるよ、君にね」

 

「けどまぁ、結果的に、君の復活に繋がったんだ。

祝杯ぐらいは挙げても罰は当たらないだろう?」

 

裏梅は無言のまま、粛々と厨房へ向かう。

王の晩餐の準備に余念はない。

 

宿儺。

裏梅。

羂索。

 

平安の世の,主人,従者,その悪友が。

 

再び、この世に集った瞬間だった。

————

 

静かな山荘の一室。

 

調理を終えた裏梅が,次々に料理を運ぶ。

 

座卓の上に並ぶのは,

裏梅が手ずから調理した、絶品の肉料理。

血の旨味を引き出し、柔らかく煮込まれた逸品たち。

 

宿儺はそれを,愉悦を滲ませながら口に運び。

素直な感想を口にした。

「やはり美味いな。裏梅」

 

「光栄でございます。宿儺様。」

裏梅が微かに頬を紅潮させる。

主に褒められる。それだけで、彼女の全てが報われる。

 

裏梅もまた,宿儺の隣で箸を進める。

 

そして、

対面では、やたらと饒舌な男が声を弾ませていた。

 

羂索「いやー!ほんっと今回ばっかりは驚いたよ!!」

 

ワイングラスを片手に、

裏梅の料理を頬張りながら。

テンションを抑えきれない様子で。

 

羂索「まさかさ、あの真人を、いきなり月の呪霊に

奪い去られるとは思わなかったんだよね〜!」

 

「いや、それ自体はめちゃくちゃ面白かったんだけど、

死滅回游が開かなくなっちゃってさ?

ほら,無為転変がないと,器の強度が足りなくて,

受肉体たちが覚醒できないじゃん?」

 

宿儺は黙って耳を傾けている。箸が止まらない。

 

羂索「だからさー、

とりあえず一般人に取り込ませた呪物の回収してたわけ!

そしたら、その真人と月の呪霊が、なんと渋谷に戻って来てさ?」

 

「そこで、まさかの——脹相を殺す!!」

「で、虎杖悠仁と伏黒恵が、兄と姉を同時に失ってさ……

魂の折れた状態で、互いに寄り添って——」

 

ここで羂索、身を乗り出す!

 

羂索「——宿儺、君の復活チャンス、大・到・来っ⭐︎って、

もう、どういう因果!?」

 

「しかもさぁ!

真人が君ごと虎杖悠仁を殺そうとしたところを、

乙骨憂太が止めたんだろう??

もうさぁ...なるべくしてなった、復活劇だよね!!」

 

裏梅のこめかみに青筋が浮かぶ。

 

裏梅「……貴様、宿儺様に対してその軽口……。

少しは口を慎め!!」

 

ビシリと鋭い声音。

怒気を孕んだ視線が、ギラリと羂索を射抜いた。

 

だが。

 

宿儺はと言えば、ゆるやかに口元を綻ばせていた。

 

宿儺「……まあ、いい。羂索」

 

「オマエの変な計画も、今回は珍しく役に立ったな」

 

片手で盃を取り、口に含む。

喉元を過ぎた酒が、心地よく焼ける。

 

宿儺「そして、あのツギハギ呪霊と、女呪霊——

それに、憑霊の餓鬼」

 

「……確かに、良い働きをしてくれた」

 

宿儺の瞳が細められた。

その目には、喜びと嗤いが混ざり合っている。

 

宿儺「まるで、互いに首を差し出すように連鎖していく。

……あのドミノ倒しのような喜劇、

見ていて実に快感だったぞ」

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