真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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焦土と晩餐

 

祈月と真人は,現状を探るべく。

 

宿儺の呪力が,最初に発生した地点——

即ち,《伏魔御廚子》が展開された地点へと移動した。

 

そこに広がるのは、ぽっかりと空いたような焦土。

まるで、

地図の一部を破り取ったような光景。

 

真人「うわ,マジで渋谷と同じじゃん……」

 

苦笑する真人。

だが、その声には、軽薄な調子とは裏腹の緊張が潜む。

 

真人「……でも、今回は、出てきただけじゃない」

 

渋谷事変でも宿儺は顕現し,

《伏魔御廚子》は展開された。

 

それは,

虎杖悠仁が11本もの宿儺の指を一気に飲まされたため。

 

虎杖の肉体の適応が追いつかず,

宿儺に短時間のみ,

肉体の主導権が移動したためだ。

 

だが,それはあくまで一時的なものだった。

今は違う。

いつまでたっても,宿儺の呪力反応が消えない。

 

それは,即ち。

 

真人「———完全復活したな,宿儺」

祈月「———っっっ!!」

 

呪いの王の,完全復活。

 

その事実に思わず、祈月の呼吸が詰まる。

 

しかも。

 

遺体すらない死者たちの呪力残滓が

空気中に,消えゆく薄い霧のように混ざる中——

《伏魔御厨子》の中心地となっていた場所。

 

そこに僅かに,だが他のものよりも色濃く残る,

呪力の残滓——

 

祈月「……ここで、死んでる」

「宿儺の器と……あの特級術師」

 

真人「は??虎杖死んだの??」

 

思わず、素っ頓狂な声を上げる真人。

 

真人「でも今、宿儺は生きてるよなぁ……?

ってことは──

あいつ、別の肉体に乗り換えたってコト?」

 

宿儺が誰の肉体に乗り移ったのか,

そもそも,どうやって虎杖から出て行ったのか—-

これに関しては,見当もつかない。

 

でも。

 

虎杖悠仁と,両面宿儺。

肉体を共有していたはずのふたり。

なのに,器が死に、王だけが生き残っている。

 

その事実は——そうとしか考えられない。

 

に,してもだ。

 

真人「……あ〜〜〜、虎杖さ〜……」

「“俺のこと殺す”って言ってたくせに、

結局、俺に負けてさぁ。

で、特級術師に助けられたと思ったらよ?」

 

「宿儺に出ていかれて、

その特級と一緒に殺されてんじゃん!!」

 

──プッ。

 

真人が噴き出す。

 

真人「……マジ、ダッッッサ!!!」

 

腹を抱え、笑いが止まらない。

 

真人「結局、誰も救えず,

“器”の役目すら終えられず、死ぬってさ……

虎杖って、ホント、何も残んないヤツだなぁ♡」

 

笑いすぎて,真人の目尻に涙が滲む。

 

一方,祈月は。

それを肯定も否定もせず。

ただ,"宿儺の復活"という事実を——噛み締めていた。

 

 

爆笑こそだんだん落ち着いてきたものの,

真人の肩はまだ小刻みに震えていた。

喉の奥に笑いの余韻が残る。

 

だが、ここで。

呪力感知を続けていた祈月が,

冷静に口を開いた。

 

祈月「…真人。器が宿儺を抑えきれなかったのは悲報だけど,

それよりも……」

「…宿儺の呪力、さっきより強くなってる……

いや、違う。これは……“誰かといる”」

 

真人「え?」

 

ようやく息を整えつつあった真人の顔に、

再び分析の色が戻る。

 

真人「つまり、宿儺……仲間と合流した?」

 

一拍の思案。

 

そして、思考の火がついた真人は、

いたずらっ子のように口角を上げた。

 

真人「じゃあさ……近づいてみる? 宿儺のいる方向。

もうちょい探れそうじゃん?」

 

祈月「近づく!?………それは……」

 

思わず声が上ずる祈月。

 

宿儺の呪力に怖気付いており,二の足を踏む。

 

だが、そんな祈月に対し,真人は一切の不安も見せない。

むしろ、まるでゲームでもするかのような調子で言い放つ。

 

真人「こっちの呪力を抑えて近づけば、気づかれにくい。

もしバレて、向こうが動いたら……

すぐ逃げればいい。だろ??」

 

真人「今のまま、何も知らない方が……逆に、危険だよ」

 

──その言葉に、祈月は口を閉じた。

 

数秒の逡巡。そして、微かに頷く。

 

祈月「……じゃあ、行けるところまで」

 

真人「YES☆」

 

互いに呪力を絞りに絞って、

存在感を極限まで落とす。

 

そして──宿儺の呪力の方向へ,

ふたりは足を進め始めた。

 

 

山深い木々に覆われた山道。

やがて視界がわずかに開け,

奥に一軒の屋敷が姿を現す。

 

屋敷自体をギリギリ目視できる距離。

中の様子は見えないが,

呪力感知はできる。十分だ。

 

真人「……あれが宿儺たちの拠点か」

 

祈月「……っ。やっぱり、宿儺以外にもいる……

合計3人……ひとりは宿儺。

あとふたりは……この呪力……」

 

祈月の顔色が変わる。

 

祈月「え,まって。これ……」

 

真人「うわ……この呪力、“夏油”じゃん。

アイツ,今度は宿儺とつるんでんの?」

 

祈月「あの,袈裟のヤツ…」

 

だが、その時──

 

ビシリと、空気が張り詰める感覚。

 

羂索の従属呪霊の一体が,接近してくる。

それを,祈月は素早く感知した。

 

祈月「……っっ!!気づかれた!!

逃げるよ、真人!!」

 

真人「まじ!?この距離で!?……OK〜!!」

 

──ズッ。

 

ふたりの足が、枯葉を一蹴して宙を蹴る。

 

その従属呪霊が,ふたりを目視する前に。

祈月と真人は、風のようにその場から走り去った。

 

 

 

羂索「おや、逃げ足が速いな」

 

羂索はそう言い,口元に笑みを浮かべ、軽く指を弾く。

呼び戻されたのは、先ほど外を巡回していた従属呪霊。

 

裏梅が眉をひそめ、気配の変化を察する。

 

裏梅「どうかしたのか?」

 

羂索は、呑気なようで、どこか楽しげに続けた。

 

羂索「いや、こちらに近づいてくる者がいたんだけどね。

私と視覚を共有していた呪霊で、

誰か確認しようとしたら……

感づかれて逃げられてしまったよ」

 

ワインを揺らしながら言うその声音は、

淡々と、だが,僅かな愉悦をはらんでいた。

 

羂索「……あの微弱な呪力にして、この反応速度。

おそらく手練れだね。呪力を極力抑えて接近していた」

 

その言葉を聞いて、裏梅の表情が変わる。

青筋がこめかみに浮かび上がった。

 

裏梅「何!? まさか侵入か、暗殺狙いの輩か!?」

 

羂索「さあ、どうなんだろうね?」

 

気だるげなようで、わざと裏梅を煽るような態度の羂索。

 

裏梅「おい羂索、追えないのか!?」

 

苛立ちを隠さず声を荒げる裏梅に対し、

羂索は肩をすくめた。

 

羂索「まあ、逃げた方向くらいならわからないこともないけど?」

 

裏梅「ならば私が──」

 

今にも飛び出さんとする裏梅。

 

宿儺「よい、裏梅」

 

重く、低く。だが絶対的な響きで、

座したままの宿儺がその場を制した。

 

宿儺「コソコソと嗅ぎ回るだけの虫ケラなど、

いつの時代もいる」

 

「俺が"相手"と見るのは,俺に挑んでくるものだけだ。

気づかれたと見るや,即座に逃げ出す小心者など。

どうでもいい。」

 

「来るなら潰す。それだけだ」

 

裏梅「……承知いたしました、宿儺様」

 

静かに跪き、一礼する裏梅。

その身は即応戦闘態勢にありながら、

主の命には絶対服従。

 

その後、静寂が戻る。

 

座卓の上の料理は、

すでに綺麗さっぱりと平らげられていた。

宿儺は席を立ち、食事の終わりを告げる。

 

裏梅は,皿を一つずつ丁寧に下げ。

厨房に戻り,洗い物や後片付けに入っていた。

 

主人,従者、その悪友の。

千年ぶりの晩餐(ディナータイム)は、

こうして,静かに幕を閉じた。

 

 

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