真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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わちゃわちゃ

エンジン音が微かに唸る、

成田発・ローマ行きのフライト。

 

その機内。

一般人の目には何も見えない。

 

けれど、実際にはそこに,ふたりの呪いが存在していた。

 

座席を2つぶん贅沢に占領して、

ぐで〜っと横たわる真人。

 

膝を立て、片腕は枕代わりに頭の下。

もう片方の手では、

改造人間のストックをぐにゃぐにゃに変形させて遊んでいた。

 

その表情は、まるで退屈しのぎの子供。

 

一方、祈月はというと。

 

反対側の窓側席のビジネスマンの膝の上に、

当たり前のように座っていた。

 

無論、気づかれることはない。

 

窓に頬をぴとっと当て、

空に浮かぶ雲をぼんやりと見つめる。

 

そして、ふと口を開いたのは祈月の方だった。

 

祈月「ねー真人〜。機内の人間、弄らないでよ〜?

騒ぎ起こして緊急着陸とか面倒だからさ〜」

 

その声に、

真人は改造人間をバチィッと輪ゴムみたいに引っ張ったあと、

片手をひらひらさせて応える。

 

真人「わかってるわかってる。

ローマ着いてからにするから、大丈夫だって〜」

 

祈月「ほんとにぃ?」

 

疑いのまなざしを送りつつも、すぐにくすりと笑い。

 

祈月は、真人の方へと歩み寄る。

 

祈月「……って、ちょっと!

そこ、あたしの席なんだけど!!」

 

真人「え〜? 君、さっきからそっち行ってたし,

別にいーじゃん?」

 

祈月「もー!」

 

その声とともに、祈月は真人の腹に遠慮なく座り。

 

そのまま,真人の胸元まで流れる灰青色のおさげに

すっと指を通し。

 

祈月「ふわぁぁ...やっぱもふもふ..........♡」

 

とろける声で真人の髪を持ち上げ、

自分の口元に押し当てる祈月。

 

真人「ええ!?ちょっとぉーー??」

 

戸惑いの声をあげる真人。

 

が——

 

真人「……逃げよっ⭐︎」

 

唐突にふふっと笑った次の瞬間。

 

真人の体が、ぽんっと小さく縮み,

祈月の下からするっと抜け出し。

 

ぴゅーーーんっ!!

 

座席の下をダッシュで駆け出す。

 

祈月「ちょ、待て真人~~~!!!」

 

声を上げて飛び出す祈月。

 

一方、子供サイズの真人は、

前列と後列の隙間をぴょこぴょこと器用に抜けていく。

 

CA(客室乗務員)の足元をすり抜け、

赤ちゃんを抱いた母親の膝の下をくぐり抜け、

座席をぴょんぴょん飛び越え,

エコノミーの狭い通路を駆け抜けて。

 

——誰にも気づかれず,

——誰にも止められず。

 

祈月「絶っっ対に捕まえるからね~~!!」

真人「できるもんならどーぞ〜〜♪」

 

呪いふたりの、

上空一万メートルの鬼ごっこが開催されていた。

 

小型化した真人は、その小さな体を活かし。

座席の下、手荷物の隙間と,次々に滑り込み。

祈月の追跡を翻弄する。

 

真人「ほらほら〜!全然捕まらないよ〜?」

祈月「うぅ……っ!」

 

悔しげな声。

しかし、祈月の目がきゅっと細まる。

 

作戦変更!

 

真人が通路へと飛び出した瞬間に,

羽織をばさっと空中に投げる!

 

真人「っ!?」

 

突如,視界を覆う羽織。

真人の動きが、ふっと止まる。

 

その隙を逃さず——

 

祈月「捕まえたっ!!」

 

背後から、祈月が小さな真人の体をがしっと掴む!

そのまま、両手で抱き上げ捕獲成功!

 

真人「うわっ…君、羽織使うとかガチじゃん…」

 

苦笑しつつも、少しだけ息を切らす真人。

だが祈月,それどころではない様子で──

 

祈月「あはっ……このサイズ感、新鮮…♡」

 

衝動のままに。

真人のポンチョの下へ、そっと手を差し入れ,

 

祈月の指が、直接その腹に触れる。

 

こちょ。

 

真人「!?!?!?」

 

くすぐったさに反応して、

真人の小さな身体がビクリと跳ねる。

祈月はその柔らかさに、目を見開く。

 

祈月「え??いつもは腹筋バキバキなのに……

今はむにむにしてる…どうなってるの…??」

 

困惑と興味がないまぜになった声。

 

指は止まらない。

真人を抱えたまま,

その腹を,くすぐるように這い回る。

 

真人「あっははっ!?…ちょ,待っ…!?無理無理ぃっ!!」

 

声が上ずり,思わず身体が反る。

 

だが——

真人「っっ!」

 

ぼふんっ!

元の大人サイズに。

 

祈月「あ」

 

次の瞬間。

真人が身をひるがえし——

 

ぎゅっ。

 

祈月を、正面から抱きしめる形で押さえ込む。

 

真人「はい,確保♡」

 

真人185cm。

祈月154cm。

 

圧倒的な体格差。

こうなれば,祈月は何もできない。

 

祈月「え,ちょ,真人──」

 

返事はない。

代わりに、真人の指が,祈月のうなじに伸び——

 

こちょ。

 

祈月「……っっ?!!」

 

体がびくんと反応し、肩が跳ねる。

真人の口元に、いたずらな笑みが浮かぶ。

 

真人「ははっ…可愛いな,君」

 

そのまま耳元に口を寄せ、言い放つ。

 

真人「君,放しとくと,すぐちょろちょろ動くからさぁ…

このまま,抱き枕にしよっか♡」

 

祈月「!?!?!?」

 

完全に理性が吹き飛ぶ一歩手前。

だがその瞬間。

 

祈月「あ……もふ♡……幸せ……」

 

抱きしめられている位置。

そこにある、灰青色のおさげに、顔をうずめる。

 

もふ。

 

真人「……いや,ブレないな君!?」

 

祈月以外,誰にも聞こえないツッコミが。

機内に虚しく木霊していた。

 

 

 

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