真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

39 / 44
ラストアンサー

映画館を出ると、

あたりはすっかり暗くなっていた。

 

昼間の賑わいはどこへやら。

街灯はぽつぽつと灯り、

道路に長い影を落とす。

 

祈月「……夜になってたんだ」

真人「映画、長かったしね〜」

 

ふたりはそのまま、街を離れた。

 

目指すは——

“今日の寝床”、つまり拠点。

 

ホテルや宿ではない。

進んだのは、山奥。

 

途中、雑木林を抜け、

舗装されていない道を踏みしめ、

野犬のように迷い込んだ山小道の先。

 

見つけたのは、ログハウス。

 

住民をサクッと処理し,

ふたりは中へと入り込む。

 

祈月と真人。

呪霊ふたりにとって,街中は娯楽の場所。

 

しかし,落ち着いて眠れる、

最も心地の良い場所は、

人の気配のない山奥。

そう——ちょうどこういったログハウスだ。

 

祈月「やっぱこういう所が落ち着く〜〜」

 

ベッドにばふっと倒れ込む祈月。

枕を抱きしめたまま、うとうとと目を閉じかける。

 

真人はというと、

改造人間を「杭」として使い、

シーツを壁に打ちつけて,

即席のハンモックを設置した。

 

真人「は〜〜、イタリアの山って広いね。

歩くの疲れた〜」

 

身体を預け、空中に揺られながら、

真人は本を開く。

 

本屋から調達した,

日本語に訳されたシェイクスピアの『リア王』。

 

劇的な悲劇。救いのない結末。

そこに丁寧に描かれた人間の心の機微。

真人好みの作品だった。

 

魂に触れるように、

ページをめくる指先は、どこか楽しげに。

 

ベッドに寝転がる祈月が、

ふと、ぼそりと呟く。

 

祈月「……でもさ。イタリア来て、本当、正解だったよね〜」

 

真人は目を上げ、そっと笑う。

 

真人「それ。宿儺の支配下とか、絶対嫌だし。

日本なんて、邪魔なヤツしかいないしさ」

 

ひと呼吸置いて、窓の外を見ながら。

 

真人「……ま、あとは、

このログハウスに天然温泉ついてれば完璧だったんだけどね〜」

 

祈月「そればっかりはね〜。

日本での、あの小屋みたいなのは、そうそうね」

 

窓の外では、夜空に月が浮かんでいた。

 

祈月「……明日また、探しに行こ」

 

真人「そーだね。

明日もまた、したいことすればいいんだし」

 

──日本の呪術界は、壊滅した。

 

宿儺は完全復活し、

羂索の“天元と日本人の超重複同化計画”も進行中。

 

この先、世界がどうなるか。

どこまでが壊れ、どう変わっていくのか。

誰にも分からない。

 

でも。それでよかった。

 

祈月と真人には、それでよかった。

 

過去を悔やむ必要も,

未来を憂う必要もない。

 

何にも縛られず、

何にも従わず。

 

ただ,“今”を楽しむ。

 

それが——

ふたりがこの世界に叩きつけた,答えだから。

 

END

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。