黒閃。
それは呪力の核心に触れた一撃。
それを、魂ごと直撃で喰らった真人の身体は、
地面を這うように転がっていた。
真人(っ……黒閃…っ、魂に……っ)
全身が軋む。
術式は回復した。
肉体の損傷は、特級呪霊である真人ならばすぐに戻せる。
だが、今の真人には――形が整わない。
魂の輪郭が揺れていた。
真人「……ちっ……クソが……」
それでも、真人は立ち上がった。
グラリ、と体が傾く。
足元がふらつき、膝が震える。
前を見た。
そこに、ボロボロの虎杖が、拳を握りしめて立っていた。
虎杖(……立った……!?)
血まみれの顔、肩で息をし、両腕は傷だらけ。
だが、虎杖の瞳には、まだ闘志が燃えていた。
虎杖(……でも、こっちも……もう限界だ……!!)
吐息のたびに肺が焼けるように痛む。
呪力も尽きかけていた。
それでも。
虎杖「真人……ここで殺す……!!」
自分に言い聞かせるように踏み込み,真人へとダッシュ。
そのとき――
真人は、フッと笑った。
「……悪いけど、ここまで。」
──ボフンッ!!
真人の腹が膨張し、内部から“破裂”するように爆風が発生。
爆煙が広がる。
一瞬で、虎杖の視界が白く塗りつぶされた。
虎杖「ッッ!?!?」
視界が遮られたその隙に――
真人は肉体を変形。
下半身を滑走特化の形状に変え、地面を滑るように後退。
すぐさまビルの裏手へと消え,路地裏を這うように逃げる。
瓦礫の音も、虎杖の叫びも、遠ざかっていく。
真人(……限界ギリギリ,魂が…整わない……)
再生はできる。
だが、“整形”できない。
魂の輪郭が、ブレている。
だが,逃げきれた。
虎杖の拳は、もう届かない。
視界からも、気配からも、完全に離脱。
真人「……あー……マジで、死ぬかと思った……」
ふらりと、ビルの影に身を預けるように倒れ込む。
三束に整えられていた髪は,既にボサボサ。
着ていたポンチョも,靴も,
変形の連発で既にどこかへ行っていた。
視線を上げた空は、曇り空。
血の味が口内に広がる。
“俺はまだ……生きてる”
そう確認するように、右手の指を一本一本、ゆっくりと動かす。
真人「……ふっ、ふふ……」
喉の奥から漏れるように、かすかに笑った。
真人「これで終わり,な,わけない。だろ?」
死ねない。
まだ“完成”していない。
生き残れば,次がある。先がある。俺はまだまだやれる。
そう思い,
配管に入り込んで完全に行方をくらまそうとした。
その瞬間。
真人の背後に、異様な呪力の渦が現れる。
「……見つけた。」
静かに、そして冷酷に響く声。
振り向く。
そこにいたのは、羂索。
真人「……ッ!!…"夏油"…ッ」
気づいた時には、もう遅かった。
今の真人の呪力残量は階級換算で羂索より2階級下,
つまり,呪霊操術の"強制無条件降伏"
——取り込みラインだ。
ズウウウウン……!!!
背後から“吸い込まれるような圧”が迫る。
呪霊操術、吸収—-発動。
真人の肉体が――脚部から“呑み込まれて”いく。
真人「ッ、あ……ぐ、あああッッ!!!」
必死に抵抗する。
術式を回し、どうにか身体を伸ばし、引き抜こうとする。
だが、吸収の引力が強すぎる。
自切しようにも,ただでさえ満身創痍の身体で
更に魂を切り落としたところで,
その後逃げ切れるプランがない。
再吸収されて終わりだ。
吸収は止まらない。
真人(このままじゃ……!!)
魂ごと吸い込まれる。
呪力が剥がされる。
膝から下が、もう“自分ではない”。
そこへ――
ザッ……!!
階段を駆け上がってきた虎杖の姿が現れる。
虎杖「……っ!! 真人が……吸収されてる!?」
一瞬、思考が止まった。
だが次の瞬間、拳を握りしめて猛ダッシュ。
虎杖(いい、チャンスだ!! あいつが吸収される前に……
今度こそ殺す!!)
本来なら、追いつける距離ではなかった。
だが、“羂索による足止め”が奇跡的に噛み合い、
虎杖の殺意が真人を狙って迫る。
……だが。
羂索は虎杖の接近を、一切の驚きもなく見下ろしていた。
羂索「……まあ、そう来るよね」
まるで“全てを見透かしている”かのような態度。
羂索は、真人吸収と並行して,
走ってくる虎杖に向かって掌をかざし,
呪霊召喚の構えをとった。