真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

6 / 44
祈月、虚無の終焉〜下駄スパーン&両脚スパーン

2018年10月31日,その夜。

ありふれた曇りの夜空。

 

だけど、祈月にとっては、地獄の底だった。

 

祈月は、82年の孤独に耐えかねーー,

その心はついに虚無となり,ふらふらと渋谷を彷徨っていた。

 

これまでの祈月は,ずっとひとりだった。

 

術師は,呪霊である祈月を基本的に敵として見てくる。

 

フレンドリーに接してくる術師は,

祈月の特級呪霊としての呪力量、

彩城魔壁(さいじょうまへき)という術式の有用性を評価し,

戦闘ツールとして利用しようという魂胆にすぎない。

 

そして,対話を試みる術師がいても。

その声には常に警戒と打算が滲んでいる。

 

祈月はそれを見抜き,うんざりしていた。

だから,術師は敵,関わってくるなら殺す対象と切り捨てていた。

 

自分から歩み寄ってまで,

術師と仲良くしようなんて思わなかった。

 

他の呪霊は,みんな"ギャァァァ!!""ヌ″ァァァ!!"とかしか言えない知能ナシ個体ばかり。

 

呪霊が見える一般人も,直感的に祈月を"人ならざるもの"と悟り,さっと目を逸らす。

 

だから,祈月は,話し相手すら,誰もつくれなかった。

 

もう数日、まともに眠っていない。

髪はボサボサで、

服も洗濯を怠ったまま、着崩れてはだけかけている。

 

下駄の紐も緩く、ガタつく足元に意識が向くことすら、もうない。

 

この日,祈月は渋谷の街全体を覆う"もや"のような呪力,

つまり強者の集合を感じ取り,

サクッと殺してくれる相手を求めて渋谷に来ていた。

でも,一発で死ねなかった場合を想像したら……

 

もし,致命傷にならない攻撃で袋叩きにされたら…

もし,殺してもらえず、服従の"縛り"を結ぶように強制されたら…

 

痛い思いはしたくなくて、苦しんで死ぬのは嫌で,

自分の術式・彩城魔壁を使って

自ら命を絶とうとした。

でも,いざやろうとしたら,涙が止まらなくて,

怖くて出来なくて。

 

もう,死にたいのか,

死にたくないのかもわからない。

 

祈月(心の声)

(……誰か……お願いだから……)

(……殺して……助けて……)

(どっちでもいい……)

(……あたしを……,あたしを、見つけて……)

(……あたしを、呼んで……)

 

だが。

その時,虎杖&東堂との戦闘でブギウギ対策に撹乱戦術を取り、

東堂の隙をつくために走り回っていた真人が,

祈月の呪力探知範囲に入った。

 

祈月の思考はもはや機能していなかったが,

一その魂は真人の魂を追い,

祈月は無意識のうちに真人の呪力を追い…

 

その脚は,ふらふらと,真人のいる方へと歩き始めていた。

 

ーーそして祈月がしばらく歩いた時。

視界に飛び込む,

羂索が真人を吸収している光景。

 

その時。

一魂が、呼んだ。魂が,叫んだ。

 

祈月「……ッ…ッッ!!」

 

視線が"向いてしまう"。

吸収されかけている、ひとりの呪霊。

 

真人は,吸収されながらも、魂の奥で叫んでいた。

(誰か,誰でもいい……!)

("生きたい”ー!!)

 

その魂の“叫び”を、祈月の魂が聴いた。

 

祈月(……あれは……)

(…."あたしの")

 

理性のスイッチは、もう入っていない。

 

祈月,即座に跳躍。

 

スパアアアアン!!!!

ろくに紐が結ばれていなかった下駄、両方即・脱落。

初速の衝撃で盛大にぶっ飛び、宙を舞う。

 

だが祈月は全く気づかず,

先程までの虚無を吹き飛ばす全力ダッシュ!!!

 

そしてーー

祈月「よこせッッッ!!!」

 

祈月の術式"彩城魔壁"は,空間設置の切断バリア。

バリアというよりは薄い刃。それを空間に設置し,

相手がぶつかるとスパッと斬れる。

 

空気中は視界内ならどこでも設置でき,

物体上,肉体上は,

その呪力量が2級相当未満の場合のみ可能となる。

この"2級相当未満",

これは,肉体座標にバリアを直接重ねて

直接真っ二つにできる,祈月の彩城魔壁の"足切りライン"。

 

それ以上の呪力量の相手に当てるには,

彩城魔壁を空中設置し,そこに誘導する必要がある。

 

羂索は特級術師,万全状態。

呪力量が多すぎて,羂索の肉体上には設置できない。

 

そして,今,真人が完全吸収されたら終了,

だらだらと羂索を誘導している猶予はない。

そもそも羂索ほどの手練をバリアまで誘導できる技術は

祈月にはない。

 

だがーー今の真人は消耗により,その足切りラインを下回っている。

 

バシュッ!!!!

彩城魔壁・展開。

位置は、”“真人の両脚”。

 

ギイイイン…ズパアッ!!!

 

真人の”両脚”が斬り飛ばされ,

太腿から上の身体が,

吸収済みの部位から物理的に遮断される。

 

羂索「ッ!?」

 

呪霊操術の吸収が、中断された。

 

祈月「奪った……ッッ!!!」

 

即座に駆け寄り、両脚を失って地面に落下する寸前の真人をキャッチ!

そのまま、全力逃走開始!!

 

羂索「!?!?あれは…月の呪霊…!?なぜここに…!!」

 

その表情に、僅かに驚愕が滲む。

 

掌を開き、呪霊操術を起動。

即座に呪霊を呼び出し,猛追開始!!

 

虎杖「え…あ…俺…」

「俺が……真人を……」

 

現場に残されたのは,置いてけぼりの虎杖。

 

そして,

本体から切り離されて霧散中の真人の両脚,

道路に転がった祈月の両下駄。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。