真人救済ルートin渋谷事変   作:祈月4777

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再生格差

血と瓦礫のにおいが満ちる夜の街。

 

その片隅、朽ちかけた倉庫の裏手。

ようやく祈月は足を止め,座り込んだ。

 

祈月「……ッツ、っ……ここ、なら……」

 

心臓が爆音。

呪力は尽きかけ、全身は傷だらけで汗と血が混ざり、

息は荒く,視界は揺れている。

 

でも、いま一番やばいのは、自分じゃない――

 

――抱えているこの子、真人だ。

 

両脚消失。魂、ヒビだらけ。意識朦朧。限りなく死に近い。

 

祈月(……ボロボロすぎ。これ、無理だよ……)

(治す手段なんて、何も……)

(でも、今のあたしにできるのは――これしか……)

 

 

震える手で、祈月は真人の胸元にそっと触れる。

そのまま,自身に残った全呪力を、流し込む。

 

 

祈月「……全部持ってって。……全部あげるから……」

「お願い……生きてて……」

 

その瞬間――

 

真人の身体が、脈動し始めた。ゆっくりと目を開く。

 

真人(うっすら笑って)

「……受け取ったよ。」

 

――両脚、3秒で再生完了ッ!!

――魂も自己整合。戦闘可能な程度には回復ッ!

 

祈月「………………え?」

 

「………え、ちょっと待って??」

 

 

祈月、真人の脚を見る。

――本当に、綺麗に、元通り。

 

祈月「いま、両脚……秒で再生したよね……???」

 

(……今の再生速度、何?)

 

 

真人「うん、まぁ普通だよ?」

 

 

祈月(心の声)

(……え、あたし、呪力枯れるまで焦りまくって命懸けで流し込んだのに……)

(この呪霊……"真人"??秒で脚生えたんだけど……)

(あたしなんて,肩の傷の止血すら絶賛手こずり中なのに…)

(……え、もしかしてこれが、特級呪霊のデフォ??)

 

 

祈月「……あたし……再生……雑魚だったの……??」

 

 

真人は,上半身を起こしながら,

ちょんと祈月の頬を突き,悪戯っぽく笑った。

「でもさ、助かったよ。マジで」

「呪力の流し方,すげー雑だったけど,魂が,"俺を生かそう"って叫んでた」

 

その言葉に、祈月の表情が、ふっと緩む。

そして、思わず――

 

祈月「……っ、よかった……っ……!!」

 

そのまま、真人にぎゅうっと抱きつく。

息が詰まりそうなほどの、安堵の抱擁。

 

真人「うお、っと……びっくりした。……でも、いいね」

「魂だけじゃなく、こういうのも伝わるなぁ」

 

真人は、祈月の背にそっと手を添えると、

目を細めて、静かに笑った。

 

この時、時刻は既に12時を回っていた。

──2018年11月1日。

 

本来なら、“両者の命日”となるはずだったハロウィンを。

祈月と真人は、確かに、生き延びた。

 

生存の喜びを,抱擁で分かち合った。

――その、ほんの数秒後。

 

きた。

超遅れてやってきたやつ。

アドレナリン切れ。

からの――裸足で逃げ回ったツケ。

 

足裏の、激痛。

 

祈月「いっっっったあああああああああ!!!??」

 

足を凝視し、抱えてジタバタする祈月。

 

真人「うわっ,びっくりした!え,今度は何!?」

 

祈月「えっ、え!?なにこれ!?どうして!?なんでこうなった!?」

 

祈月「てか……下駄!!?下駄どこ!?!?!」

 

両足の下駄は――すでに、どこかに吹き飛んでいた。

 

真人「下駄……?……あ〜……スパーン!ってね~。魂が俺に引かれた瞬間に、飛んでったよ」

 

(苦笑いしながら、祈月の足裏をそっと持ち上げて確認)

 

真人「……いや、やばいなコレ!……ガッツリ骨出てんじゃん!?」

「何でこんなになるまで気づかなかった?!?」

 

祈月「わかんないっ!……痛っ…痛……めっちゃ痛い……(涙)」

 

真人「……だろうね!?……もう寝てて。俺がやる。

さっきもらった呪力、まだ残ってるから」

 

祈月「え、でも君も今……さっき再生したばっかで……えっ、ちょ、」

 

真人「はいはい、魂いじるだけ~♪」

 

――無為転変・再生モード発動。

 

祈月の足裏のズタズタが一瞬で修復。

神経も整えられ、痛みもゼロに。

 

祈月(……あ、痛くない……)

「でも、呪力……」

 

 真人(ニッと笑って)

「へーき。どうせ君から回ってきたやつだし、返しただけ」

「ま、トータルで見たら、俺の方が得してるし♡」

 

祈月「それなら……よか……」

 

――そのまま、祈月は真人の胸にもたれかかり、ぐったりと倒れ込む。

 

呪力切れ、全身疲労、そして、心からの安堵。

すぅ、と静かな寝息が漏れる。

 

真人(小声)

「……寝たか」

「ったく、どんだけ全力で来てんのさ……」

 

真人は祈月の右肩に触れ、レーザーで焼けた傷跡を,

爬虫呪霊に噛み付かれた左脚を,静かに癒していく。

肌は白く、元通りに。

 

すべてのかすり傷、擦り傷、切り傷も,

無為転変の力で、完璧に。

 

真人「名前も知らないのに……魂は、もう知ってるってことか……」

「……あーあ、完全にハマったな、これ」

「俺の"魂の片割れ",やべーやつだった♡」

 

ーーその夜、朽ちかけた倉庫の裏手。

 

呪霊ふたりは、初めて“救い合い”、共に眠る。

 

世界から取り残された魂同士が、初めて繋がった

――そんな夜だった。

 

 

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