彼らは海戦終了後、呉基地へ帰還した。
これは、その数時間後の話である
―――広島県 呉市 日本国海上自衛隊 呉基地 司令室
(コンコンコン)
久遠「入ってくれ」
ヴィクトワール「失礼します」ガチャッ
久遠「そこに座ってくれ」
俺は椅子に腰掛けた。
久遠「...まずは、作戦お疲れ様」
久遠「君の活躍は聞いた。しっかりととどめを刺してくれたようだな」
久遠「体調に問題はないか?」
ヴィクトワール「はい...あ。そういえば手足の反応が少し鈍くなりました」
久遠「...それはマズいな。病院を...いや待てよ」
ヴィクトワール「ところで久遠さん、本題は何ですか?」
久遠「ああ、そうだったな」
久遠「防衛装備庁の主任が君を呼んでいる」
ヴィクトワール「防衛装備庁が?一体何故ですか?」
久遠「さあ...皆目見当もつかん。だがもしかしたら、君の言う反応の鈍さについて何か知っているかもしれん」
久遠「一応、艦娘の管理担当は防衛装備庁だからな」
ヴィクトワール「...分かりました。何かあったら連絡します」
久遠「分かった。...ところで、防衛装備庁の場所はわかるのか?」
ヴィクトワール「はい。一応把握はしています」
久遠「なら大丈夫そうだな。気をつけて行ってきてくれ」
ヴィクトワール「はい」
―――
那智「...防衛装備庁か」
那智「多分アイツだろうな」
―――翌日 10:34 防衛装備庁 応接室
俺は途中で買ったアイスコーヒーを飲みつつ、呼び出した張本人を待っていた
ガチャッ
???「すまない。少しばかり遅れてしまった」
ヴィクトワール「その感じからするとあなたが?」
???「ああ。君を呼んだ張本人さ」
???「っと、自己紹介を忘れていたね」
慶賀「僕は
慶賀「まぁ慶賀って呼んでくれ」
慶賀「本題に入る前に、何か相談したいことがあるんだって?」
ヴィクトワール「あ、はい。前回の作戦以降から手足の反応が少し鈍いんです」
慶賀「...少し手を見せてくれないか」
俺は言われるがまま手を差し出す。
慶賀「...」
慶賀は俺の手をじっと見つめたり強く押してみたりしている。
慶賀「どう?痛みはあるかい?」
ヴィクトワール「いや、特にありません」
慶賀「...ふむ。だとしたら...」
慶賀「原因は老化だな」
慶賀「君、全然損傷しないし損傷しても飲み薬で直してたそうじゃないか」
ヴィクトワール「ええ。まぁ」
慶賀「恐らくそのせいだと思うぞ」
慶賀「多分風呂も回復の効能が無い普通の風呂だったんじゃない?」
ヴィクトワール「そうですね...自室の普通の風呂でした」
慶賀「うん。間違いなくそれが原因」
慶賀「昔は知らないけど、今の入渠用大浴場には特殊なナノボットが入っているんだ」
慶賀「勿論体に害はない。」
慶賀「傷を直すのと同時に体の中と外両方を回復してくれるスグレモノさ。」
慶賀「それが今の子達...あ、艦娘の子ね。それの若さの秘訣ってわけ」
慶賀「だからこれに関しては大浴場に入れば解決すると思う」
ヴィクトワール「分かりました」
慶賀「で、本題なんだけどさ」
慶賀「...過去に帰りたくないかい?」
ヴィクトワール「...ッ!?」
ヴィクトワール「帰る方法があるんですか!?」
慶賀「ああ、ある。僕が開発したから、性能は折り紙付きさ」
慶賀「...タダって訳にはいかないけどね」ニコッ
ヴィクトワール「取引ってことですか...」
慶賀「御名答。」
慶賀「その取引なんだけど、現実の改変を行ってほしいんだ」
慶賀「なに、勿論タイムパラドックスは起こる。だがそれはこっちの世界の話で過去じゃない。」
慶賀「...どうだ?」
ヴィクトワール「...現実の改変と言っても、何をすれば?」
慶賀「簡単さ。君に深海棲艦の本拠地に潜入してもらって、建造所を爆破してもらう」
慶賀「まぁ深海機神姫の建造前に行かなきゃだから、君が居た年からは少し前なんだけどね」
ヴィクトワール「何故奴の建造時期を知っているんです?」
慶賀「それに関してはあんまり深く言えないな」
慶賀は少し目を逸らした。
慶賀「...深海機神姫は我々の力では抗えない神のような存在になろうとしているからね...だからその根底、つまり建造されたこと自体を無いことにするっていうのが今回の取引目的さ」
慶賀「もう一度聞くけど、どうかな?」
ヴィクトワール「...考えさせてください」
慶賀「保留か...分かった。けど回答期限は来週末までにさせてもらうよ。」
慶賀「そうじゃないと建造前に戻れなくなってしまうからね」
ヴィクトワール「...気になったんですが、タイムパラドックスが起きた場合どう対処するおつもりなのですか?」
慶賀「...気になるかい?」
ヴィクトワール「この世界の存亡に関わることですし、気になってはいます」
慶賀「じゃあ付いてきて」スッ
慶賀は素早く静かに席を立ち、歩き始めた。
ヴィクトワール「え、ちょっt...」ガタッ
俺は転びかけながらも急いで追いかけた。
―――防衛装備庁 地下施設
慶賀「...着いたよ」スッ
ピピッ...グォォォォン...
ヴィクトワール「何だここは...!?」
重厚な鉄扉が開かれた先にはまるで鎮守府とその近海を模したようなスペースが存在していた。
ヴィクトワール「ここ、本当に地下なんですか?」
慶賀「うん。勿論地下だよ」
ヴィクトワール「じゃあ何で鎮守府が...」
慶賀「...艦娘にとって一番安心感と緊張感を持つのがこの建物だからさ」
ヴィクトワール「...?どういうことです?」
慶賀「簡単に言えば、訓練に適した場所だってことだよ」
慶賀「...見に行ってみようか」
そう言うと、また慶賀は歩き始めた。
―――防衛装備庁 地下訓練所 出撃ドック
建物の内部は鎮守府そのものだった。何なら潮の匂いもする。
そんなこんなで俺は出撃ドックに来た。
警備員「...IDカードを」
慶賀「はいよ」スッ
警備員「...問題ないですね。どうぞ」
慶賀「ご苦労さん」
警備員「あなたもIDカードを」
ヴィクトワール「ああ、ええと」
慶賀「彼は俺の連れだから通して構わないよ」
警備員「...分かりました」
俺はそのままドックに通された。
―――
ガチンッ!バチッ!ギュィィィィン...
???「艤装、制御良好。機関異常なし。カタパルト通電確認」
???「今日も絶好調ね」ニコッ
慶賀「訓練は順調かい?」
???「あ、慶賀さん。順調ですよ。今にでも実戦をしたい気分です」
慶賀「うん。良い意気込みだ」
ヴィクトワール「...彼女は?」
慶賀「ん?ああ。紹介がまだだったねそういえば」
信濃「あ、私は
ヴィクトワール「戦艦ヴィクトワールです。以後お見知りおきを」
信濃「もしよかったらなのですが、私の訓練を見てみませんか?」
そう言われ、俺は慶賀の方を見る。
慶賀「まぁ良いんじゃないかな。久々に同じような人に会えて嬉しいんだと思うし」
ヴィクトワール「分かりました。見てみましょう」
信濃の顔が明るくなった気がした。
信濃「本当ですか!?じゃあ今すぐ出撃します!」タッタッタッタ...
と言い、彼女は走って行った。
慶賀「そういえば、君の艤装には遠く及ばないけど、大和の艤装のコピーを改造したやつを置いてあるから自由に使ってね」
ヴィクトワール「分かりました。ありがとうございます」
慶賀「じゃあ、楽しんで」
そう言うと慶賀はドックを出ていった。
ヴィクトワール「さて、俺も着替えるか」
ヴィクトワール「起動すると良いんだが...」
ガチンッ!プシュゥッ!ガキンッ!ガチンッ!
ヴィクトワール「接続状態良好。大丈夫っぽいな」
ヴィクトワール「じゃあ俺も出撃するか」
ヴィクトワール「フッ!」ザッ!
バッシャン!
ヴィクトワール「うぉっ...とと」
ヴィクトワール「慣れない艤装はキツイな」
ヴィクトワール「よし。行くか」バシュッ!
―――
信濃「じゃあ早速始めますが、どうします?最初から一対一の形式でもいいですが...」
ヴィクトワール「最初はウォーミングアップに武装点検なんてどうだ?」
信濃「良いですね。じゃあそれから始めましょう」
信濃「では、始めます」ギュインッ!
彼女の全身が緑色の磁場のようなもので覆われる。
信濃「全門斉射用意!目標、超大型海上標的!」
ガシンッ!ウィィィン...ガチャンッ!
信濃「撃てッ!」
(((キィィィィン...ガシュゥゥゥゥンッ!!!!)))
ヴィクトワール「うわッ!?眩しいッ!」
((((ドッガァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!)))
直撃を受けた超大型海上標的は木っ端微塵に吹き飛んだ。
信濃「...命中率98.6%。まぁまぁですね」
信濃の主砲は過熱状態なのか真っ赤に赤熱していた。
信濃「次はヴィクトワールさんの番ですよ」
ヴィクトワール「あ、ああ。」
俺は主砲を次の標的に向けた。
ヴィクトワール「主砲射撃用意!目標、敵高機動標的!」
ヴィクトワール「撃てェ!」
(((ドドドドドドドドドガァァァァン!!!)))
(ヒュルルルルル...)
(((ババババババババッシャァァァァァァンッ!!!!)))
ヴィクトワール「クッ...全弾近か...」
信濃「まぁあの標的は40ktで動く高速なものなので仕方ないとは思いますが...」
信濃「全弾至近とは驚きました」
ヴィクトワール「あはは...ありがとうございます」
信濃「ウォーミングアップも終わったことですし、そろそろ始めましょうか」
ヴィクトワール「一対一の演習ですね。臨むところです」
―――
慶賀「うーん...こっそり見てる身だしなんとも言えないけど、二人の雰囲気が変わったような?」
慶賀「一応、防弾室で見ておこうか...」
―――
数分後、お互いが少し離れた位置から演習が開始された。
信濃「...先手必勝といきましょう。艦載機、発艦用意!」ピピッ!
ガチャッガチャガチャガチャガチャ!
という音を上げ、信濃の巨大な艤装が開く。
信濃「発艦!」ピッ!
ガシュッガシュガシュガシュッ!
―――
ヴィクトワール「嘘だろ!?何だあの数!」
信濃からは、一度に四十機以上の艦載機が発艦していた。
ヴィクトワール「クソッ!対空戦闘用意!」
ヴィクトワール「主砲、三式弾に切り替え!」
ウィィィン...ガシャンッ!
ヴィクトワール「撃てェ!」
(((ドドドガァァァァン!!!)))
ヴィクトワール「これで戦闘の奴らだけでも落とせれば...」
((ボンッ!ボンッ!ボンッ!))
空中で三式弾が炸裂し、三機ほどの敵機を巻き込んだようだった。
ヴィクトワール「よし。少し陣形が乱れた!混乱の隙をついて一気に決着をつける!」バシュッ!
―――
信濃「突っ込んできますか...受けて立ちます」
信濃「艤装展開やめ。艤装格納後全隔壁閉鎖。」ピピッ!
信濃「冷却機構作動開始。陽電子砲、射撃用意」ピッ!
信濃の背中側から巨大な砲身が現れる。
ウィィィン...ガチンッ!ピピッ!
信濃「照準、自動追尾開始。偏差調整、-0.1」
信濃「防御重力シールド展開」ピッ!
信濃の周りに緑色のシールドが展開される。
ジジジジジッ!
信濃「電力100%...」
信濃「照準合致...!」
信濃「陽電子砲、撃てッ!」ガチッ!
―――
ピカッ...ガシュッ!
ヴィクトワール「何じゃそりゃッ!?」
俺は咄嗟に身を捩った。
ヴィクトワール「あっぶねぇ...間一髪...!」
ヴィクトワール「だが...クソッ」
咄嗟に回避したはいいものの、ギリギリをかすめた陽電子ビームによって艤装が融解してしまっていた。
ヴィクトワール「これで、こっちの戦闘力は半減ってところか...」
ヴィクトワール「だが、こっちも射程圏内だ...!」
ヴィクトワール「主砲、徹甲弾に切り替え!目標、敵MCCM「信濃」!」
ヴィクトワール「撃ち方用意!」
ウィィィン...ガチャッ!ガチャンッ!
ヴィクトワール「撃てェ!」
(((ドドドガァァァァン!!!)))
―――
信濃「あの砲撃を回避とは...流石と言うべきでしょうか」
信濃「...!?いつの間に射程距離に...!」
ガガガガンッ!!!
―――
((((ドッガァァァァァァァァァァァァァァン!!!)))
ヴィクトワール「よしッ!直撃!」
―――
信濃「...貴方の負けです。ヴィクトワールさん」
―――
カシュゥゥゥゥゥゥ...
ヴィクトワール「何だと!?」
硝煙と水柱が晴れた先には無傷で立っている信濃の姿があった。
キィィィィン...
ヴィクトワール「ッ!?」
(((ドガッドガガガガッドガッドガッ!!!)))
―――
ヴィクトワールに艦載機から放たれた複数の対艦ミサイルが直撃。
爆煙とともに、ヴィクトワールは膝から崩れ落ちた。
演習結果はヴィクトワールに大破判定が出たことによって、信濃の勝利に終わった。
―――数分後 出撃ドック
信濃「いやぁ、お見事でした」
信濃「まさか当てるつもりだった砲撃を回避されてしまうとは」
ヴィクトワール「そちらこそ、航空機との連携が見事でした」
ヴィクトワール「今まで演習で負けたことがなかったのでなんだか新鮮な気分です」
信濃「そうだったんですか!?すいません...こんなところで黒星をつけさせてしまって」
ヴィクトワール「いえいえ、良いんです。負けあってこその演習ですからね」
ヴィクトワール「常勝では意味がありません」
ヴィクトワール「...あなたなら、この世界を任せられますね」
信濃「...?なにか言いましたか?」
ヴィクトワール「いえ。特に何も言っていませんよ」
信濃「そうですか?なら良いのですが...」
ヴィクトワール「とりあえず、自分はそろそろ帰りますね。」
ヴィクトワール「仲間や司令に心配をかけるわけにはいけませんので」
信濃「...そうですか。演習、ありがとうございました!またやりましょうね!」
ヴィクトワール「こちらこそ、ありがとうございました。」
ヴィクトワール「...また、どこかで」
―――数十分後
俺は防衛装備庁の艦娘用大浴場に入浴させてもらい、慶賀に会うために応接室へと来ていた。
慶賀「...本当に良いのかい?」
ヴィクトワール「はい。彼女ならばこの先の未来も護っていけるでしょう」
慶賀「...そうか。演習をしたのは彼女の力を確かめるためだったんだね」
ヴィクトワール「そうです。もし自分以下の力であれば奴の相手をするのは不可能ですから」
慶賀「まぁ、だろうね」
ヴィクトワール「...奴と戦うことも視野に入れているんでしょう?」
慶賀「...バレてちゃってたか」
慶賀「僕は、タイムパラドックスが発生したときの中心人物は奴だと思っているからね」
ヴィクトワール「奴の存在を無かったことにするための作戦ですからね」
慶賀「...話は戻るけど、過去に戻ってももう心残りは無いのかい?」
ヴィクトワール「...」
慶賀「あるみたいだね」
慶賀「作戦の開始は三日後だから、それまでに心残りをなくしてくるように」
ヴィクトワール「了解...しました」
―――数時間後
俺は呉へと戻り、司令に防衛装備庁であったことを話した。
勿論、過去に戻るということも。
久遠「...そうか」
ヴィクトワール「少しお願いしたいことがあるのですが...」
久遠「何だ?何でも言ってくれ」
ヴィクトワール「写真を撮れるものを貸していただけませんか?」
久遠「写真か...私のもので良ければ、古いものだがカメラをあげよう」
ヴィクトワール「...ありがとうございます」
俺は司令からカメラを受け取り、様々な場所に歩いた。
巨大なクレーン、建造されるタンカー、呉司令庁舎。
そして...
ちょうかい「あれ?ヴィクトワールさん!今までどこに行ってたんですか?」
ひゅうが「こいつの事だ。多分国絡みのことだろうな」
あすか「だろうね~」
ヴィクトワール「...全部お見通しか」
ヴィクトワール「俺は今まで防衛装備庁に行っていたんです。少し用があって」
あすか「で~、何してきたの?」
ヴィクトワール「それは秘密で」
ちょうかい「あ、そういえば今夜集まりがあるらしいですよ!」
ヴィクトワール「集まり?」
ちょうかい「はい!何でも作戦の成功を祝う...とかなんとか!」
ひゅうが「要するに慰労会だな」
あすか「楽しみだね~」
ヴィクトワール「面白そうだな。それまでには戻ることにするよ」
―――同日 午後7:30 呉基地 食堂
尾張「...という訳で皆、作戦お疲れ様」
尾張「ここでは存分に羽を休めてくれ」
尾張「...あと、苦情が来たためカラオケは禁止だ」
尾張「それ以外で楽しむように!」
尾張「以上!あとは楽しめ!」
―――
ヴィクトワール「カレー...そういえば金曜日か」
那智「最近色々と起こってるから曜日感覚無くなりそうだ...はぁ...」
ヴィクトワール「那智さん、もう少し寝たほうが良いんじゃないですか...?」
那智「そうしたいのは山々なんだが、書類とか諸々が急を要するものばっかりでな」
那智「寝ようにも寝れん」
ヴィクトワール「寝ないと色々と支障をきたしますよ」
那智「分かってる。今やってる仕事が終わり次第寝るようにはしてるから心配すんな」
那智「俺ちょっとコーヒー貰ってくる」
ヴィクトワール「苦労してるなぁ...」
―――
那智「すまん。コーヒーを一杯もらえないか?」
食堂係「わかりました...ってええ!?」
那智「どうした?俺の顔になんかついてんのか?」
食堂係「いやいやいや今にでも死にそうな顔になってますよ!」
那智「え?ああ、大丈夫だ問題ない」
食堂係「問題大有りです!一等海佐がぶっ倒れたらマズいでしょう?」
食堂係「そこの艦娘さん、この人を仮眠室に送ってくれませんか?」
ひゅうが「え?私か?」チラッ
ひゅうが「...分かった。連れて行こう。ちょうかい、手伝ってくれ」
ちょうかい「あ、はい!分かりました!」
那智「え、ちょま」
ひゅうが「問答無用!」ガシッ!
ちょうかい「失礼します!」ガシッ!
那智「まだやらなきゃいけない仕事が!」
ひゅうが「寝ろ。死ぬ気か」
...という感じで那智さんは連行された。
―――
俺はその様子をシャッターに収めた。
ヴィクトワール「...これもここらしいといえばここらしい...のか?」
ヴィクトワール「あ、すいませんアッサムティーを一杯ください」
食堂係「分かりました、少々お待ちを」
ヴィクトワール「にしても、前回はカラオケしたりしてどんちゃん騒ぎやってたのに、今日は禁止されてるからか雑談かカードゲームばっかりやってるな」
ヴィクトワール「カードゲームだったらできるか...?」
食堂係「お待たせしました。アッサムティーです」
ヴィクトワール「あ、ありがとうございます」
ヴィクトワール(やけに丁寧だな...)
俺はそう思いつつ淹れられた紅茶を飲む。
ヴィクトワール「...」
紅茶を飲んだのはいつぶりだったか。
ヴィクトワール「...懐かしいな」
最後に飲んだのは転生前。味も忘れかけていた。
ヴィクトワール「とりあえずこの光景も撮っておくか...」パシャッ!
ヴィクトワール「...俺も混ざるとするか」
飲み終わった紅茶のカップを置き、軽くお礼をしてから俺は皆とカードゲームを楽しんだ。
―――翌日 6:26
案の定というか...夜遅くまで起きてた組は食堂で寝ていた。
俺は朝起きてから暇だったため、外に出てみることに。
ヴィクトワール「...清々しい陽気だな」
天気は快晴。運動するには丁度いい。
ヴィクトワール「久々に走ってみるか。」
俺は軽めにランニングを始めた。
始めて数分が経った頃、見慣れた三人を見つけた。
ちょうかい「ヴィクトワールさん!おはようございます!」
ヴィクトワール「おはようございます。お二人も、おはようございます」
ひゅうが「おはよう」
あすか「おはよ~」
ヴィクトワール「...ところで、三人ともこんな朝早くからここで何を?」
ひゅうが「何って...見ての通り散歩だ」
ちょうかい「よかったらヴィクトワールさんも一緒に来ますか?」
あすか「早朝呉基地観光ツアーだよ~」
ヴィクトワール「あはは...では、お言葉に甘えさせていただきます」
あすか「そうこなくっちゃ~!」
あすか「さあさ、まずは景色の良いところから呉基地を一望しようのコーナ~」
ちょうかい「ま、待ってくださいあすかさん!」
ひゅうが「はぁ...仕方ない。追いかけるか...」
ヴィクトワール(いい景色か...写真を取るのにぴったりかもしれないな)
―――数分後
あすかを追った俺達はとても景色がいい丘のような場所にたどり着いた。
あすか「着いたよ~」
ちょうかい「すごい綺麗...」
ヴィクトワール「こりゃすごい」
ひゅうが「...」
俺達は数分間静かに景色を眺めていた。
その時だった。
ヴィクトワール「ぐぅッ...!」
目に一瞬だけ激痛が走った。
ちょうかい「大丈夫ですか?ヴィクトワールさん!」
ヴィクトワール「はい。何とか...」
俺はハッとした。美しかった景色が変貌している。
火の手が上がる呉基地、着底した護衛艦や貨物船が見える。
その景色を見た瞬間、また目に激痛が走る。
ヴィクトワール「またか...」
景色が変わる。美しい、清々しい景色に。
ヴィクトワール「...」
ひゅうが「...本当に大丈夫か?救護に見てもらったほうが良い気はするが」
ヴィクトワール「いえいえ、大したことでもないですし大丈夫ですよ」
ヴィクトワール「そんなことより、景色も良いことですしここで集合写真をとってもいいですか?」
ヴィクトワール「俺は良いので、三人の集合写真を」
ちょうかい「集合写真...ですか?」
ヴィクトワール「ええ。自分はここから離れないといけなくなってしまったので、思い出として」
あすか「離れるって、海外遠征~?」
ヴィクトワール「まぁ、そんなところです」
ヴィクトワール「さぁ、三人とも寄ってください」
俺はカメラを構える。
ヴィクトワール「撮りますよ、はい、チーズ!」
パシャッ!
ヴィクトワール「撮れました」
ちょうかい「どんな感じですか?」
ヴィクトワール「ええっと...逆光になってないし目もつぶってない。」
ヴィクトワール「うん。完璧です」
ちょうかい「本当ですか!見せてください!」
あすか「私も~」
ひゅうが「...私も見せてもらっていいか?」
ヴィクトワール「わかりました。どうぞ」
俺達は写真を見ながら話した。
―――同日 20:57 基地司令室
久遠「...もう、残したことはないな?」
ヴィクトワール「はい。」
久遠「そのカメラの写真は現像できた。持っていってくれ」
久遠「あっちの世界じゃこのカメラも使い物にならなくなるだろうからな」
ヴィクトワール「...ありがとうございます。」
久遠「...こっちの世界は任せてくれ。君は、艦娘が戦わなくて良い世界を作ってきてくれ」
ヴィクトワール「はい。お任せください」
久遠「元はといえば、彼女らを戦わせる存在にした人間が解決すべき問題なのだがな...」
ヴィクトワール「...」
久遠「ただの独り言だ。あまり気にしないでくれ」
ヴィクトワール「...わかりました。」
久遠「移動手段の手配はしておいた。君の艤装は明日防衛装備庁に届くはずだ」
ヴィクトワール「ありがとうございます。」
久遠「礼を言うのはこっちの方だ。」
久遠「君の的確な指示のお陰で、前作戦では最小限の損害に留めることができた。本当に感謝している」
久遠「...長話が過ぎたな。もう迎えの車が来ている頃だろう。」
久遠「健闘を祈る」
ヴィクトワール「...ありがとうございます」
俺はそう言うと、基地司令室を後にした。
―――翌日 13:01 次元跳躍実験室
慶賀「...転送用意は完了」
慶賀「艤装の調子はどうだい?」
ヴィクトワール「良好です。体の反応速度も上々です」
慶賀「そりゃ良かった。転送する準備は大丈夫かな?」
ヴィクトワール「はい。完了しています」
慶賀「よし。テンカウントで行くよ」
慶賀「カウントダウン開始」
アナウンス「オーダーを受領。カウントダウン開始」
アナウンス「10...9...8...7...」
慶賀「これを持っていってくれ」
慶賀は小型の時計のようなものを手渡す。
慶賀「これは小型の次元跳躍機だよ。年代は設定してあるからそこのボタンを押すだけ」
慶賀「簡単でしょ?君のいた時代に戻る時に使ってね」
慶賀「...それじゃあ、健闘を祈る」
ヴィクトワール「...」
アナウンス「...3...2...1...転送開始」
ガチンッ!バチッ!キュイィィィィィィン!!!
俺は青白い光に包まれた。
前回から投稿期間が空いてしまい申し訳ありません。
ちなみに信濃の艦級の略称は「"M"aritime Mobile "C"ommand Fortress "C"lass Maritime "M"obile Fortress」の頭文字です。