何故か探偵じゃなくて占い師をやってるクズお姉さん   作:まさみゃ〜(柾雅)

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初めて書くジャンルです。
息抜きで書いているので不定期更新になります。
一応完結させるつもりなので気長に生暖かい目で応援していただけると幸いです。


聖母磔刑01

 夏場の夕時。学校からの帰り道で、僕はいつも通り商店街を歩いて帰宅していたら見慣れない人物を見かけた。

 その人は見たところ20代後半の女性。

 黒い髪をベースに紫のメッシュと、内側には緑のインナーカラーを入れている。

 そして出店なのか、彼女の前のテーブルの上には水晶玉が置かれている。

 

「占い……?」

 

 買い物帰りの主婦の手相を見ては何かやりとりをしている。

 占われている主婦の驚いている反応からして彼女は何か言い当てたのかもしれない。

 そして占いが終わったのか主婦は満足げにお金を彼女に渡すと、笑顔で行ってしまった。

 

 その様子を遠目に眺めていたら占い師の女性と目が合う。

 僕と目が合った女性はニヤリと笑みを浮かべるとこちらに来いと手招きをする。

 多分ここが退屈に殺されそうになっている僕の分岐点だったのだろう。

 そして僕は、関わるという選択をとったことをこれから後悔することになる。

 

「やあやあ、初めましてだ少年」

 

 近くに寄ればわかるタバコの匂い。

 どうやらこの人は喫煙者だったらしい。

 

「……どうも。えっと、僕に何か?」

「君は実に幸運だ。私の記念すべき5人目のお客さんだからね」

 

 笑顔でそう言いつつも、笑っている雰囲気では無い。

 それに、何処か観察をされている様な気がする。

 よくよく彼女を見れば、笑顔で細められている目がこちらを覗いていた。

 

「……言っておきますけどお金ないんで」

「大丈夫大丈夫! 5番目の君は特別に無料でおねーさんが占ってあげよう!」

「無料でって言われるほど怪しさが凄いんですが……」

 

 更に視線が鋭く感じる。

 蛇に睨まれたような、と言うのはこういった感覚なのだろうか。

 

「おっと、占う前にまずはお互い自己紹介をしようか。こう言うのは信頼関係の有無で結果に差異が出るからね。

 私は上葉実零華(ウワバミ レイカ)見ての通り美人占い師さ!!」

 

 自分で自分の事を美人って言ったよこの人。

 と言うか占いって信頼関係が重要なんだ。これは初耳だ。

 

「……僕は勝油一(カツユ ハジメ)です。こ「高校2年生」っ!?」

 

 自己紹介に被せて占い師は僕の学年を言い当てる。

 確かに現在僕は制服を着ているが、それでも夏服で学年を判断するための要素は少ないはず。

 それにこの時期にブレザーなんて着用しないのだから、高校生だと言い当てるのは……いや、そこは僕の顔立ちや背丈から判断すればいいのか。

 けれど、高校の2年生という学年を言い当てたのはどういった原理なのかは分からない。

 

「なんで分かったのかって顔だね。でもこれは企業秘密っ♡」

 

 占い師は笑顔でウィンクしながら答える。

 俗に言う可愛い子ぶると言うやつなのだろうか。目の前でされるとちょっとムカつく。

 しかもさっき、自分で美人と自身を形容しているだけあって、実際に整った顔立ちから発せられたその言葉は余計にウザさを引き立たせる。

 

「……そうですか。でもここまで来て何なんですが今のところ悩みとか無いんですけど」

「本当にそうかな? 例えば学校や仕事、例えば私生活。生きていて悩みを持たない人間なんて赤子ぐらいしかいないと思うんだよね、私は」

 

 僕の反応を伺う様にジッと占い師は見つめてくる。

 それは僕の全身を見ている様で、けれど視線は僕と向かい合っている。

 

「もっと具体的に言えば、高校生なら勉強や部活、人間関係、それと趣味やバイトをしているならバイト先の仕事についてとか。

 ああ、それと思春期も考えると学校以外に家でも悩みはあるはずさ」

 

 確かに悩みが無いわけではない。

 けれどこれは些細な事で、誰かに相談する様な程度では無い。

 

「……なるほど」

 

 占い師はチラリと水晶玉に視線を向ける。

 そう言えば占い師と言えば水晶玉やタロットカード、手相など人によっていろんな手法で占っているイメージがある。

 それでも水晶玉は正直インチキ感が凄いけど。

 

「思春期って変に刺激を求めたくなるよね」

「っ!?」

 

 その発言に僕の心臓が跳ねる。

 占い師は水晶玉から視線を離さずにそう言った。

 きっと、これは偶然だ。

 それっぽい事を言っているだけにすぎない。

 

「喫煙、飲酒はリスクがあるから手は出せないもんねぇ?

 かと言って所謂学校一の美少女とかとお付き合いも現実的じゃ無い。と言うか一方的にしか知らない相手からの告白なんて基本女の子は受けないもん」

「……そうですね」

 

 まるで腹の中探られている様で気持ちが悪い。

 ふと、水晶玉を見つめていた占い師の黒い瞳が僕を見る。

 そして彼女は優しい笑みを向けてきた。

 

「おめでとう勝油少年。君の抱える『退屈』はこの後すぐに解決する」

 

 そう言って占い師は水晶玉を片手に持ち立ち上がった。

 途端、僕の背後から誰かの叫び声が聞こえてくる。

 

「ひったくりよーーっ!!!!」

 

 商店街に響く声と共にバイクの排気音がこちらに近づいてきている。

 そして占い師は水晶玉を大きく振りかぶると……。

 

「ドゥラッシャイッ!!」

 

 投げた。

 僕が彼女の野太い声と行動に呆気に取られていると、水晶玉が何かに命中したのか、背後から大きな衝突音と何かが割れた様な音が響く。

 恐る恐る後ろの光景を見ようと振り向くと、ヘルメットを被った男性が倒れ、バイクが電柱に激突してひしゃげていた。

 また、よくよく見ると水晶玉の破片が男の周囲に散乱している。

 もう滅茶苦茶だ。

 

「あ、あの、水晶玉」

「嗚呼アレ? アレはただのガラス玉さ。だって本物の水晶玉は高いし? それに結局構成材料は石英なんだし同じでしょ同じ」

 

 さらっととんでもない事をこの人は言った気がする。

 そして彼女はニヤニヤと笑みを浮かべながら倒れている男に歩み寄る。

 男の近くにはひったくったであろう肩下げ鞄が落ちており、彼女はそれを拾った。

 

「お兄さんも運が悪いねぇ。でも打ちどころが良かったみたいだし運が良いのか。これなら後遺症は心配なさそうだしね」

 

 そう言って彼女は鞄の持ち主に鞄を渡すと逃げる様にその場を離れる。

 そして数分後、誰かが通報したであろう救急車とパトカーが到着した。

 

「とんでもない人だったな……」

 

 

 

 軽い事情聴取で帰宅が遅れた。

 今夜もどうせ両親は遅いだろうから、寄り道して夕食の入ったビニール袋を片手に住んでいるアパートに着く。

 家に帰るとアパートの隣室に誰かが引っ越してきた様で、玄関にはダンボールが並べられていた。

 それを避けて玄関の扉を開けようとすると、ちょうど引っ越してきたであろう隣人が隣の扉から出てくる。

 

「あ、すみません! 邪魔でしたよね。すぐに片付けますから!」

「いえ、大丈夫です。その……嫌でなければ手伝いましょうか?」

 

 腰まで伸びた茶髪の女性。

 荷物を部屋に運び込むのは引越し業者の業務内容だと思うのだが、なぜか彼女一人でそれを行なっている。

 

「いえ、お気持ちだけで大丈夫ですよ! ちょっと整理する為に一度運び出しただけですので!

 あ、私は今日隣に引っ越してきた亜黽十歌(アボウ トオカ)です。どうぞ今後ともよろしくお願いします」

「勝油一です。こちらこそ宜しくお願いします、亜黽さん」

 

 これが大人の女性と言うやつなのだろうか。

 彼女から感じる余裕に少し圧倒される。

 そう言えばこう考えるとあの占い師の占い結果は外れてはいない気がする。

 まぁ、具体的に言っていなかったから僕が勝手にそう解釈しているだけなんだけど。

 それでも、この出会いは僕の心を踊らすには十分だった。

 

 

 ……あ、納豆のタレ開けるの失敗した。

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