とある魔術の禁書目録は創約12巻(執筆時最新刊)まで読了済み。
しかし外伝など細かいところまでは手が届いていないことをご了承ください。
仮面ライダーWは全話視聴済、風都探偵は18巻(執筆時最新刊)まで読了済。
夏、冬映画とVシネ二作品は視聴済みと言った感じです。
まだ連載終了していない二作品なので今後の展開との矛盾が生じても笑って流してください。
既出の情報と矛盾が生じていた場合はダブルエクストリームとドラゴン上条のそげぶを同時にぶち込んでぶっ殺してください。
さて、上条当麻はもう何十何百度目かの大ピンチに陥っていた。
いつも通りバスルームで目覚めた彼は、何気なしに周囲を見回してみたのだ。
いつも通りのバスルーム。そのはずだった。
ツンツン頭の少年の身体に覆いかぶさっている部分のタオルケットは当然盛り上がっているのである。
何故かもうひとつの盛り上がりがあったのだ。
(うっわ〜。ベタすぎるよ!いくらなんでもベタすぎるって!)
ああ、昔もこんなことがあったな、と懐かしむ少年(半分走馬灯)。
もう展開が読めすぎている。上条当麻はとうとう未来予知を手に入れたのだ。
恐る恐る盛り上がりに手をやり、チラリと上の部分を外してみた。
全裸の少女が眠っていた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ〜?!〇△□×!??!!)
秘技、猫モード。
狭いバスルームの隅でガクブル震えながら丸くなる少年上条当麻。
今までもグッドモーニングからの上条当麻〜美少女を添えて〜状態は何度かあった。
だがこれはまずい。とてもまずい。
なぜなら今までは羨まけしからんというよりも猛獣と添い寝しているような状態だったのだから。
考えてみてほしい。目が覚めれば、すぐ側にきゃーえっちーのノリで人間一人を消し炭にできる人間兵器じみた存在がいる状況を。
まかり間違っていればモーニングコールでそのまま永眠する可能性すらあったのだ。
犯罪的な絵面だが、それは性犯罪ではなく殺人未遂の現場なのだ。
しかし、今回はどうだろう。
全裸の少女、狭い密室、そばに居る男。言い訳が聞かなすぎる。
このままでは明日の朝刊に載ってしまう。
テレビのインタビューにどこぞの青い髪でピアスを付けた変態が
「いつかかみやんはやると思っていました。驚きはないですね」とか編集された激低音ボイスで言ってやがって、それが全国に放送されてしまうだろう。
このままでは世間様の目は、ジャパニーズHE☆N☆TA☆I代表上条当麻になってしまう。
無い頭を必死に捻ってみる。
この状態から、名誉を汚さずに脱する方法を。
晩御飯に少女をイタダキマスしちゃった変態ウニ野郎上条当麻ルートだけは断固回避しなければ!。
そう考えていた時だった。
「とうまー、起きてるのならブレイクファーストの時間なんだよ。目玉焼きとトーストとシャキシャキサラダをプリーズなんだよ」
しまった。同居人の猛獣インデックスは、深き眠りから覚め、満たされることの無い空腹を満たすために贄(なんちゃって英国風ブレイクファースト)を求めてきたのだ。
恐らく先程の叫びとも言えない叫びを聞いて来たのだろう。
つい出てしまった声を一瞬で飲み込んで残りは心の中で叫んだというのに、その一瞬を聞き取って馳せ参じたのだ。
飛んだ地獄耳。
このシスターからすれば、飯のために知られざる新能力を発現させることなど造作もないことだ。
もしこれがピンチのお姫様とちょーかっこいい騎士様ならロマンチックな名シーンなのだが、現実は腹ぺこシスターと変態ウニ猫新種少年が織り成す迷シーンだった。
このままでは上条が本日の品一皿目になってしまう。
なんとかしなくては。
「んん…」
その時、少女は小さい呻きと共に寝返りを打った。
せっかく直したタオルケットが少しはだけてかなりアブナイ光景になってしまっている。
「誰かいるの?なんか呻き声みたいなのがしたんだよ」
「いっいるわけないだろ!きっとスフィンクスの声だ!お腹空かせてるんだよ!早くご飯を上げに行ってやりなさい!」
見える。ドア越しなのに明らかに訝しんだ瞳をするインデックスが見える。
未来予知に透視。
まさかの
(まずいまずいまずい!このままだと本格的に人生がヤバい!主にむしゃむしゃされて物理的に潰える方面で)
様々な修羅場をくぐってきた男上条当麻。まさか灯台もと暗し的な感じで命の危機に瀕するとは。
しかし忘れてはならない。彼が不幸な人間であることを。
「?」
ガラガラ、と音がした。
わあすごい。いつの間にか匠の技術により殺風景だったバスルームが風通しの良く、眺めのいい露天風呂に早変わりしてしまいました。
まさかの壁倒壊である。
本当に何故か壊れてしまった壁の亀裂はそのままドアの方へ走っていき、ドアも壊れてバッタリ倒れてしまった。
死んでいる。インデックスの目が死んでいる。
まるで人の風上にも置けないクソ野郎を眺めるかのような冷ややかな目である。
だがまだだ。まだ逆転の目処はある。
この少女は何処から来たのだろうか的なシリアスな流れにするのだ。そうすればこの性犯罪者上条当麻ルートを脱却できる。
「んん…ん?」
まあ不幸な少年がそんな上手くことを運べるはずがないのだが。
まだ寝ぼけ眼だが、少女が目覚める。
状況を呑み込めていないのか、目を擦りながら上半身を起こす。
ちなみに特に手でタオルケットをホールドしたりとかはしてないのでタイヘン犯罪的な絵面だった。
というか犯罪だった。
途端に顔を赤くする少女。
「キャァァァァ!」
甲高い叫びが広がる。
詰みである。ここまで鮮やかな詰みはそうそうないだろう。
純白シスターは神に代わって天罰をくだそうとしていた。
トラバサミじみた歯をガチリガチリ鳴らしている。
さあ皆さんお待ちかね、ご唱和いただこう。
「不幸だー!」
少年の断末魔は学園都市の空を覆ったとか覆ってないとか。
「ありがとうございます」
少女は暗い感じでお礼を言い、上条からトーストを受け取った。
ちなみに我らがインデックスは常にトップスピード。既に四枚目に突入していた。
少女はサクリと一口かじると、程よい焼き加減と溶けたマーガリンの味わいで少しだけ明るくなった。
トラブルがあってパニック状態だった彼女もひとまず落ち着いたので、少女と上条とインデックスは食卓を囲んでいる。
「ところでどうだ?思い出せたか?」
「え〜と…私の名前は、
少し明るさを見せた彼女だったが、しかしまたその表情は影に沈んでしまった。
何も分からない彼女だが、ひとつ分かることがある。
それは記憶喪失だということだ。
大変珍しいことに、一つの部屋に記憶喪失経験者が三人も収まっている。などと茶化すのはさすがに無理だった。
記憶喪失の苦労や不安は知っている上条だからこそ、彼女に無理はして欲しくない。
「悪かった。無理はしなくていい」
「はい」
そう言ってもう一口トーストを齧った。
てんやわんやで彼女をまじまじと見る機会がなかったが、こうして見ると彼女は随分と綺麗だ。表情さえ明るければ文句のない顔立ちだ。
大体十三か十四歳と言ったところ。
とりあえず服装に関しては上条の服を着せているのだが如何せん不恰好な感じになってしまっている。
背丈が上条よりも低いのでかなりぶかくなってしまっているから、後で九十九の服を買いに行かなければならない。
空気感はかなり重い。
呑気にしているのは人様の事情など何処吹く風なリアル猫スフィンクスと、八枚目突入したインデックスだった。
「ってちょっと待てインデックス!流石に食いすぎだ!俺の分が無くなる!」
「何言ってるんだよ!卑劣な男から幼気な少女を守った正当な報酬なんだよ!黙らせたいのなら目玉焼きとシャキシャキサラダを付け足してなんちゃって英国風ブレイクファーストにしないとダメなんだよ!」
「そんな豪勢なものはこの家にありません!上条家の緊迫した財政事情も考慮してくれ。あっバカ!手まで噛むな!」
とても混沌とした食卓があった。
バカ騒ぎにも程がある。どこかから祭囃子でも聞こえてきそうだ。
インデックスと命をかけた死闘を繰り広げる横でスフィンクスは、腹いっぱいまでキャットフードをカッ食らったからか寝転がって気持ちいいまで熟睡していた。
「ふふっ」
そんな笑い声が聞こえた。
組み合っていた上条とインデックスが横に視線をやると、口元を手で隠しながら笑っている九十九がいた。
「ははははは!」
とても愉快そうな笑い声。
それは暗い表情で固定されているかのような先程までの九十九と比べ物にならないほどだ。
それを見ていた上条は座り直して九十九を見る。
満面の笑みが彼女の可愛らしさを引き立てていた。
「なんだよそんな笑うことはないだろ」
そう、冗談ぽく言ってみる。
「いえ、こんなに楽しかったことは久しぶりで」
しかし、予想だにしないことが起きる。
「あえ…?ひさ…しぶり?なん…」
九十九が倒れた。
「あああああああああァァァァぁぁぁぁぁ!!」
両手で頭を抱えて、必死に頭痛を抑えるかのようなポージングで転がる。
「どうした!九十九っ!おい!」
「どうしたんだよ!」
なおも続く悲痛な叫び。
声を枯らすまで叫び続けるような勢いが止まらない。
このままでは喉が裂けてしまうのではないかという危機感すらあった。
上条が九十九の肩を持って揺さぶる。
絶えず掛け声も続いていた。
一向に良くならない状況だが、それは突然として止んだ。
ぐったりと顔をもたげて、そのまま眠るように気絶する九十九。
「なん…だったんだ?」
「おい人間」
呆然とする上条の耳を、突然の声が貫いた。
それは九十九でもインデックスでも当然上条でも無い声だった。
ひょっこりと九十九が食べかけたトーストの影から金髪眼帯の美少女フィギィアぐらいの姿を現す。
魔神オティヌス。
元魔術と詐術と戦争の神にして北欧神話のアースガルドに君臨する王、そして現在かくかくしかじかあって小さな妖精さんになっている上条家の居候その三。
「なんだか大変そうだがさっさとテレビを付けろ」
「いや、今はそんな状況じゃない。とりあえず救急車を…」
そう言って取り出したスマホに119を打ち込む。
上条は医師でもなければ医学生ですらない。
何故九十九が突如叫び始めて倒れてしまったのか皆目見当もつかなかったのだから、取り敢えず救急車を呼ぼうとしたのだ。
だが繋がらない。
「なんで繋がらない?」
「だからテレビをつけろと言ったろう人間」
オティヌスは気づけば所定の位置(上条の右肩の上)に陣取っていた。
戸惑いながらもリモコンに手を伸ばす上条。
一体何なのか分からないが大人しくオティヌスに従う。
四角い液晶画面に光が灯ると、それはニュース番組を映し出した。
緊急速報である。
上条はその報道内容に耳を疑った。
いくつかの局を確かめても全てが同じ内容を報道していて、差異を感じられないほど整えられたニュースキャスターの声が戦慄している部屋に響いた。
「だから言ったろう」
足を組みながらそう言うオティヌス。
上条は気づけば駆け出していた。
何処へかと言うと、それはバスルーム。
大穴の空いた部屋とも呼べぬ場所。
その大穴はまだギリギリ冬と呼べる二月の学園都市をさらけ出していた。
目眩がする。
なんだこれは?
見知っているはずの街が変貌したような。否、本当に変貌していたのだ。
至る所に知らないように建物が建っていた。
まるで別の街と融合してしまったかのような風貌。
そして、一際目立つものがあった。
風車を模した巨大なタワーは、悠然と佇んでいる。