とある二人の風都探偵   作:りんご麒麟

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Wの融合2/再開のダブル

佐天涙子を後ろに乗せて、左翔太郎は学園都市を愛車ハードボイルダーで駆け抜けていた。

目指すは警備員の詰め所。

理由は二つあり、片方は先程倒したメモリ所有者を逮捕、保護してもらうためだ。

そこに着くまでに、翔太郎と佐天は情報共有をしていた。

佐天はまず、翔太郎が学園都市と組み合わさっている街『風都』の住人であること、彼は相棒や助手、仲間たちと風都で探偵をしていること、そして仮面ライダーWやドーパント、すなわちメモリに関することの話を聞いていた。

そのどれもが信じられないことばかりで、驚愕する。

佐天は風都という街を聞いたことがない。

それに対して翔太郎は驚いて後ろを見たがが、直ぐに納得をしたように前を向いた。

「俺も学園都市なんて聞いたことないからな」

逆に翔太郎は、この『学園都市』の話、すなわち超能力者や科学技術についての話を聞いた。

それは驚くべきことだ。

二百三十万人の住人の大半が学生であり、そして異能を振るう能力者なのだから。

翔太郎はかつて超能力者に出会ったことがある。

しかし、それ莫大な資産を持つ闇の商人『財団X』の力があってこそなのだ。

つまりこの街はそのレベルということ。

しかも、独自の兵器開発なども行われており外との科学技術の差は三十年の開きがあるらしい。

驚くべきことばかりだ。

そして、彼女の話の中で気になることがいくつかあった。

彼女はガイアメモリについて知っていたのだ。

「最近噂になってたんですよ。あたし、そういうのにちょっとくわしくて。なんでも、使えば超人になれる小箱があるとか、超能力者(レベル5)を超える力が手に入るとか。まあ初めて見たのはついさっきなんですけどね」

翔太郎の推測だと、今巻き起こっている事態は二つの世界の融合だと考えていた。

まず世界が複数あるという時点で荒唐無稽な戯言だと思われかねないが、それに関しては証明されていた。

『世界の破壊者』ディケイド。

複数の世界を渡り歩く旅人であり、通りすがりの仮面ライダー。

翔太郎は彼との共闘により、別世界の存在を認知していた。

別世界のおやっさんとも会ったことがある。

だから、そんな推測をすることができた。

それで何が言いたいのかと言うと、つまり彼は、メモリは今日の朝、人知れず世界が融合した影響で学園都市中にばら撒かれたと考えていたのだ。

だが、それにしてはメモリに対して理解度が高いと先程のコックローチ戦で思ったのだ。

実際、融合する前から学園都市にはガイアメモリが存在していた。

それはつまり、今日の朝より前からこの二つの世界間でなんらかの干渉があったということだ。

そこに事件解決のヒントがあるかもしれない。

気になったのはそれだけじゃなかった。

()()()超能力者(レベル5)ですか?これも噂なんですけど、最新にして最強の超能力者が生まれたとかなんとか。情報もかなり怪しいものばかりで、曰く電撃使い(エレクトロマスター)だったり、念動能力(サイコキネシス)だったり、もしくは身体強化系だったり能力すらも色んな話が飛び交ってます。今朝に聞いた話だと今回の件もその八人目の仕業だとか」

なるほど、それは有り得る話かもしれない。

どんな能力で、何故こんなことをしたのか。

その辺には皆目見当もつかないが、とりあえず頭に入れて置いて損は無いだろう。

何よりも怪しいのは、佐天曰く、両方とも同じ時期から現れ始めた噂なのだとか。

正確にはガイアメモリが先で、八人目に関してはその数日後ぐらいから。

何がどうであれ、関連性がある可能性は高い。

事態の解決に急ぎたいが、まずは()()を迎えに行かなくては。

二色のバイクが学園都市の風を切り裂いて行った

 

「ここか…」

警備員(アンチスキル)の詰め所に着いた翔太郎だが、その顔には困惑の色が見えていた。

「どうしました?」

「いや、なんでもない。ただまあそりゃ来てたのは分かってるけどここにあるのかよ」

翔太郎の視線は、詰め所ではなくその隣に向いていた。

つまりは風都警察署である。

二つの世界が融合したのだから当たり前なのだが、まさかこんな感じだとは。

警備員(アンチスキル)とは学園都市における警察の役割を担っている。そう佐天が言っていたが、警察組織が二つもあると動きに支障をきたすのではないだろうか?

やはりというか、外の事態にてんやわんやしているので誰も翔太郎達を気に止めるものはいなかった。

その辺で走り回っているうちの一人を捕まえて要件を伝える。

同時にあのメモリ所持者とその集団の事もだ。

直ぐに人員を派遣して捕まえるとの事。

メモリ犯罪に対する対処がこなれているな。

これも、二つの世界間で関わりがあったことの証明になるだろう。

「そもそもなんでここに来たんですか」

佐天は疑問をぶつける。

通報する目的もあっただろうが、それはあくまでもついでであってまた別の目的があるはずだ。

それについて、翔太郎は大変苦々しい顔をした。

「あ〜うん。なんというか、お迎え?というか」

アンチスキルの一人が翔太郎達を案内するために向かってきた。

その人に案内されるまま向かうと、そこは取調室だ。

「えっ?なんでこんな所に?」

「いや、それはな」

扉を開いたその先に。

「翔太郎、随分と遅かったじゃないか」

髪に付けた大きなクリップと抱えている白紙の本が特徴の青年、フィリップが、取調室の冷たいパイプ椅子に座っていた。

その光景を見て、翔太郎はため息と共に頭を抱えた。

「お前なんで捕まってるんだよ」

よく見るとフィリップの服には少し焦げ目が着いているように見えた。

一体何があったんだ?

「不同意わいせつ罪。びっくりしたわ、あの馬鹿以外にこんなことするやつがいるなんて」

突然声がしたので、翔太郎はそっちの方に視線を向けた。

「御坂さん!」

「あら佐天さん一体なんでいるの?」

「御坂?」

どうやら、佐天と御坂は知り合いのようだ。

それにしても相棒が不同意わいせつ罪とはどういうことだ?

「これに関しては僕が説明しよう」

フィリップは語りかけるような手振りをして話を始めた。

「今、この街は風都と融合しているのは分かってるかい?」

「ああ」

そこで、御坂が割り込んでくる。

「ちょっと待ちなさい。街が融合?何それ。関係あるの?」

「勿論だ。もう少し待ってくれ」

その言葉に御坂は大人しく黙った。

「恐らく融合したのは今朝。そして、その融合に巻き込まれた者はランダムな場所に移動させられるんだ」

なるほど、だから俺は目が覚めたら知らない瓦礫の上で寝転がっていたのか。

そう翔太郎は納得した。

そして本題はここからだ。

「そして僕は、男子禁制の学び舎の園へと飛ばされたんだ」

「そこで私と会ったの」

少し怒気を孕んだ表情をして腕を組んでいた。

「目覚めた僕は彼女に見つかった。当然学び舎の園に男は入れないから警戒されたよ。それで彼女は自身の能力である電撃を体に纏わせて臨戦態勢を取ったわけさ」

「まさか…」

何となく翔太郎には話の道筋が見えてきた。

「ああ、僕は彼女の電撃をハイドープ能力と勘違いしたのさ。だからメモリを探そうとした」

「で、私の身体中を探ってきたから痺れさせてアンチスキルに突き出したの」

明らかに怒っている様子だった。

それも無理はない、というか当然だった。

見知らぬ男に突然体を触られるなど嫌に決まっているだろう。

世間知らずなフィリップだからこその話なのだった。

ため息一つして頭を抱える。

全てを知れるのに、身近なことを全然知らないアンバランスな青年が相棒だとかなり疲れるな。

「ところで、これからフィリップは一体どうなるんだ?」

正直、これは実刑判決もやむを得ない。

当然、相棒としてはそういうのは望んでないのだが、話を聞く限りはそれも無理な話だろう。

だが、意外なことがあった。

「別に、悪気がないならいいわ。何となく連れてきちゃったけど、今は外があんな感じだし。私から話を通しておくから」

はぁ、と呆れたようにため息をついて言う。

「すまない。恩に着る」

「じゃあ俺たちはもう行っていいのか?」

「待つじゃん」

入口から声が出振り返るとそこには一人の女性がいた。

「黄泉川愛穂。警備員だ。話がある」

そう名乗った女性は、フィリップの前まで来る。

フィリップがチラリと翔太郎の方を見ると、明らかに目の色が変わったのがわかる。

「どうも、ミス黄泉川。うちの相棒に用があるのなら是非とも俺を交ぜていただきたい」

キザったらしい振る舞いと言動。

相棒が美人に目がないのを理解していたフィリップだが、流石に呆れる。

少し困惑しつつ了承する黄泉川。

「さて、メモリ所持者ってのはお前じゃんか?」

「如何にも」

「!フィリップお前」

翔太郎は驚きを顕にした。

仮面ライダーのことは基本的に秘匿しているからこそ、あっさりと認めたことが驚きだった。

「すまない。流石にボディーチェックされたら隠し通すことが出来なかった」

「いやいい。それよりも話とは?」

「メモリについて話せることを話してもらおうじゃんか」

なるほど、そういう事か。

確かに、この二人は風都の中でも指折りでメモリについて詳しい。

なんと言ってもこれまで数多くのメモリ事件を解決してきたのだから。

「一体どこから話せばいいかな?」

「全部。あのメモリや怪人、そもそもの出処まで。とにかく知ってることは全て話すじゃん」

「了解した」

フィリップは語り出す。メモリの全てを。

 

「なるほど、大体はわかったじゃん」

黄泉川は頷く。

「ああ、今のはできる限り内緒にしといてくれ。一応隠してやってるんでね」

「協力感謝するじゃん。もう帰っていいじゃんよ」

そういうと黄泉川はどこかへ去っていった。

話が終わったらさっさと去る、それほど人手が足らないのだろう。

突如街を襲った災害への対応が追いついていないのが現状だ。

翔太郎達は取調室出ていく。

そこで、佐天が何かに気づいた。

いたずらっぽい笑みを浮かべて、指を口に当て静かにするようジェスチャーする。

泥棒のような忍び足で歩き始めた。

その先には、花飾りが特徴的な女子中学生が。

「う〜い〜は〜る〜!」

バッサリひらめいた。スカートが。

「!?ちょっ!」

初春飾利(ういはるかざり)、佐天涙子が探していた親友である。

初春が抗議しようとする素振りをみせたが、それよりも先に佐天が動いた。

ギュッと抱きつく。

「初春、心配したよ」

「ありがとうございます、佐天さん」

その二人を眺めて、翔太郎は微笑んだ。

「それにしてもなんで風紀委員(ジャッジメント)が、警備員(アンチスキル)の場所に?」

「人手が足りないので人員がとにかくかき集められてるんですよ」

基本的に危険度の高いものは警備員が担当する。

風紀委員は所詮子供の集まり。

どれだけ強力な能力を持っていようと、危ない場所に立たせることは出来ないのだ。

だが、今はそんな事言ってる場合じゃない。

猫の手も借りたいとはこの事だ。

「じゃあ、私はここで初春の手伝いするので。お元気で!」

「ああ、ここまでありがとうな」

別れと感謝を込めた言葉。

再会を喜ぶ二人を横目に、翔太郎達は警備員の詰め所を出た。

「ところで、君はいいのか?」

「何が?」

御坂美琴、彼女もあの子たちの友達だ。

この非常時、一緒にいた方が安心できるだろ。

「別に私がいてもやれることなんてないし」

一旦言葉を区切って

「それに、この事態を何とかしないと」

「別に君が危険な真似をすることは無い。能力者と言えど子供だろう」

「ああ、こういうのは大人に任せた方がいいんじゃないか?」

それに対して美琴は

「私は学園都市の超能力者第五位、超電磁砲(レールガン)よ。心配には及ばないわ」

そして、小さな声で「どうせあの馬鹿だって動いてるだろうし」

と付け足した。

いやでも、そんな意見を述べようとした時。

目の前に見知った人影があるのを見つけた。

「ジンさん!マッキー!」

「おー、翔太郎お前ここにいたのか」

そこにはツボ押し機を常に携帯していることが特徴の刃野幹夫(じんのみきお)、その部下真倉俊(まくらしゅん)がいた。

「えっと、どなた?」

御坂が言う。

事態把握のために、詳しそうなこの二人にについて来たのだが、こうも知り合いが居ないと不安になってくる。

「ああ、風都警察署の刑事だ。ツボ押し機持ってるのがジンさん、下っ端そうなのがマッキー」

「誰が下っ端だ!」

ふむ、と美琴は頷く。

どうやら、この二人は翔太郎やフィリップと親しい仲のようだ。

「二人とも『超常犯罪捜査課』でメモリ犯罪のエキスパートだ」

「いやいや、そう言われると照れるな」

ははは、と笑いながら頭を搔く刃野。

フィリップが美琴に耳打ちする。

「ちなみに二人とも仮面ライダーのことは知らないから極秘に頼む」

美琴は小さく頷いた。

「ああそうだ。警備員(アンチスキル)と風都警察署の間で協力関係を結ぶことになったんだ。お前にもいつも通り手伝ってもらうからな。知らせといた方がいいだろ」

その時、翔太郎はどうしようかと思った。

協力関係が結ばれるなら、二つの組織の間で情報共有もされるだろう。

仮面ライダーのことがバレてしまうのではないかと。

だが、一応秘密にしておくように頼んだのだから、あとは黄泉川を信じるしかない。

「いや、なんだ。お前の顔を見ると安心感があるな」

「まあそうっすね。街がこんな有様だとやっぱ知り合いの顔は安心できますよ」

そう言って翔太郎は、混ざりあった二つの街を眺めた。

瓦礫の溢れた街はあまりに痛々しく、見慣れた風都の景観は完全に損なわれていた。

「そうだ探偵、 照井警視は知らないか?」

「照井?いや知らないけど」

照井竜。

同じく超常犯罪捜査課に身を置く刑事で、若い身で二人の上司でもある。

そして、翔太郎達の重要な仲間でもあるのだ。

何処で、何をしているのか、皆目見当もつかないが、きっと彼もこの事件の解決に尽力しているのだろう。

ならば翔太郎達も動き出さねばならない。

気になることは佐天から聞いた。

まずは突如現れた存在、『八人目の超能力者』について調べるとしよう。

翔太郎とフィリップはバイクに跨り、街に駆り出そうとした。

「待った翔太郎。美琴ちゃんはどうするんだい?」

そういえばそうだった。

流石にバイクは二人乗りが限度。

「いや、私の能力でビルに張り付いて移動できるわ」

紫電を迸らせながら語る美琴。

「それ本当に大丈夫なのか?」

不安が有りつつも、瓦礫だらけの道路を二色のバイクが疾走する。

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