Re:Dragonborn   作:伝説の肥大したデブりし者★

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暗色の光明

ミラークについて明確に判明している事はさほど多くない。

 

記録として残すにあたり、筆者はシロディール学術会の後援も受けて様々な人物や書物に触れられる機会を得た。

 

数少ない記述によれば、ミラークは凡そ四五〇〇年を遡る神話紀に存在が確認出来る。

 

歴史を学ぶ上でよく挙げられる古代ノルドの遺構が多く現存するスカイリム領では、人間種族の勃興とも言える神話時代の出来事は信憑性に欠ける部分も見受けられる上、近年同地を取り巻く帝国との政治的、民族的対立の激化に因る混乱で満足な実地調査が困難となっている。

辛うじて得た情報としては、嘗て伝説の類いと信じられていたドラゴンの復活の話題も帝国臣民の耳には新しいだろうが、まさに彼は古代人とドラゴンが身近に接していた時代の人物であり、竜教団と呼ばれる現八大神信仰に類似した宗教組織に属する司祭......即ちドラゴンプリーストであった。

現モロウウィンド、ソルスセイム島北部に棲む村民の証言によれば、ソルスセイム一帯の統治を任ぜられたミラークは竜戦争の半ば頃に女神カイネ(ノルド神話系に於けるキナレスの別名)の説得に心打たれた僅かなドラゴンの寝返りと共に造反。

ソルスセイムに立て籠り、押し寄せるドラゴンを虐殺したと言われている。

 

繰り返しになるが、白金の塔に納められた膨大な史書の精査にも関わらず得られた手がかりは少ない。

 

殆ど伝説や御伽噺の類いとされている大昔の出来事は真偽の判断すら不可能に近く、有史以前の歴史的探求は未だ未開拓だからだ。

 

最新の研究では、ミラークはドラゴンボーンとして知られる偉大な勇者、聖アレッシアや歴代セプティム王朝に代表される存在であり、しかも確認出来る中でも最古のドラゴンボーンと判明し、学会を騒がせた。

ソルスセイムは当時半島であったが、ミラークと争ったドラゴン達の激しい戦闘によって本土から切り離され現在の姿になったと島民は語った。

 

 

(中略)

 

 

第四紀二〇三年現在、ミラークは死亡したようである。

その事実をもたらしてくれたのは他ならぬドラゴンスレイヤー、今代のドラゴンボーンその人であり混乱冷めやらぬソリチュードの大使館で話を聞く事が出来た。

曰く、悪しきミラークは何千年もの間オブリビオンの領域にて生き永らえていて、力を蓄えつつ現世に復活しようとしていたらしい。力あるデイドラと契約した彼の者は野心と征服欲に満ち、今やタムリエルに名を轟かす英雄たる彼女でさえ苦戦を強いられる程の猛者であった。

 

ドラゴンボーンとの対話を終えた筆者の内心には、形容し難い不安のようなものが渦巻いている。

もしもミラークが敵を打ち倒し、邪悪な野望が実現していればスカイリム、いや大陸全土にとっての脅威となっていたかもしれない。

 

不安を煽る訳ではないが、滅ぼしたと思っていた筈の奴がまだ生きていて、虎視眈々と復讐と復活の機会を伺っているのでは?と考えてしまう。

力に溺れるあまり、際限を見失った者の末路は斯くも哀れなものであるが筆者は考えずにいられない。

 

願わくは彼の者が邪なる願望に囚われる事無く、二度と表舞台に現れん事を。

 

 

                                       

   ────著者不明  後年の歴史書より抜粋

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

静寂と停滞が支配する無窮の虚無。虚ろな意識は曖昧で不確かだ。

無為な試みに過ぎないとしても、覚醒を促す感覚のうねりに身を委ねていると、無限に拡がりを見せていた暗黒の中に微かな光が差し込み始めた。

 

掴み損ねてはならぬと、動いているのか定かで無い四肢に力を込めて身動ぎに神経を集中させた......近付くにつれてその光は次第に強くなっていく。

 

「......」

 

それはまるで払暁の空のようだった。地平線から昇り始めたアズラの威光が眩い輝きを発し、夜明けが辺りを染め上げていく。

 

もう二度と見ることの叶わないと思っていた美しい光景だったが、永遠に続く事はない。秩序(アヌ)混沌(パドメイ)の対流がそうであるように、物事は常に移り行くものなのだ。

 

......何時の間にか目蓋が重くなっていた。今度こそ本当に終わりかと脳裏に過った時、不意に声が聞こえてきた気がした。

 

 

 

 

 

     miraak

 

 

 

 

「......!」

 

何処か遠くで息を吐く音が聞こえる。ごうごうと唸るような低いものが耳の奥で流動していたが、自分の拍動だと気付くのに時間を要した。

呼吸の度に喉がひりつき、咳き込む度にある事実を認めざるを得なくなる。これは現実なのだと。

どうやら己は生きているようだ。恐らく一時的な失神状態から回復する最中だったのだろう。

一体どんな奇跡が起きたというのか。あれほどの死線を乗り越えながらも命を拾う事が出来るなんて。

俄かには信じ難くはあったが、同時に幸運に感謝すべきだろうと納得も出来た。

 

五感が少しずつ取り戻されていくにつれ、周囲の情報が把握できるようになっていったからだ。

 

背に感じる硬質の感触は岩盤のようだが、どうにも乱雑に投げ出されたような格好になっている身体は至る処から痛みを訴えかけている。

 

「......ぁあっ、あ!」

 

じくじくと思考を苛む雑音を振り払うように、奮起の一声が精神を鼓舞するように喉を震わせると、少しではあるが活力が戻ってくるような気がした。

ゆっくりと、放られた四肢を折り曲げるように力を込めれば関節が軋む音を伴いつつも、徐々に筋肉が躍動を始める。

先端から中心へと......牛の歩みにも似た速度で這い寄る変化は緩徐であれど着実に進行しており、次第に胴体を覆う温もりが強くなっているように思えた。

熱源が近い証拠であろう。背に広がる確かな感触もまた心地よく、やがて体温と同化した床材からはじんわりと暖かみを感じるようになった。

身体の奥底で渦巻く血潮の鼓動、指先に至るまで隅々まで行き渡る血脈が循環している様が実感できてしまう。

久しく忘れていた生の証左は酷く懐かしいもので、つい先程まで生死の境を彷徨っていた身としては望外の喜びでもあった。

 

「嗚呼......我は生きている......」

 

呟きに応える者はいない。ただ虚しく反響するのみの言葉であったが、不思議と心が落ち着いた。

 

深呼吸をすれば鼻腔を満たす空気が肺を満たし、芳醇な香りすら感じる酸素を取り入れることで脳細胞の働きが高まり始める。

 




───星霜の書は予言した。因果の中の砕かれた霊魂の事を。
       英雄が凱旋をもたらす時、産声をあげるその血脈!
         運命の女王、竜殺し、いにしえの悪魔が解き放たれる。
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