金剛のバスケ+10cm   作:藤原わさび

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11.帝光中学決勝ーー先輩の意地

 タイムアウトが明けて両チームによる、ボールの奪い合いが発生する。

 

「くそっ!あのスピードの金剛のディフェンスやっといてまだ元気なのかよ!」

 

「それはお互い様だろう。疲労知らずの金剛阿含は凄まじいがオレ達も『キセキの世代』と呼ばれる選手だ。無様な姿など見せられはしないさ」

 

 ボールを持った荻原に赤司がディフェンスをする。明洸中はベンチに居る全メンバーを全員交代して、ようやく金剛阿含と『キセキの世代』に着いていったが、帝光中は全員の交代はしていない。

 

「(層の厚さってよりかは、金剛に対応できる面子が少ないからってのが主な理由っぽいけど、普通はガス欠でパフォーマンスなんてガタ落ちになるもんだろ!

 舐めた態度ではあるけど、流石は10年に1人の天才ってところか!)」

 

「(不味いな……青峰が第3Qまで持ちこたえてくれたからこそなんとか持っているが、金剛の『ゾーン』によって予定よりも大幅に体力が削られた。

 黄瀬を警戒して攻撃のテンポが遅くなったことにより、体力の消費が抑えられ、タイムアウトの1分間の休息で疲労をできる限り減らしているが所詮は気休めだ。

 4割もない体力で、常に10割のパフォーマンスをする金剛阿含に食らい付くことは難しいが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まだ望みは断たれてはいない)」

 

 汗を滝のように流し息が上がっている選手が多い中で、金剛は汗を流しながらも吐く息の量は一定だった。

 全くふざけた話ではあるが全力の『キセキの世代』を相手に、まだ余力を残しているようだと赤司は分析するしかない。

 

『わざと相手選手にボールを取られて、即座にテツヤとボクでスティールすることで24秒ルールを防ぎ、明洸の攻撃する時間を削らなければならないとはな』

 

「(分かっているだろう。金剛阿含の無尽蔵のスタミナに付き合えば待っているのは一方的な蹂躙だ。

 オレのコートビジョンで奴の動きを完璧に把握してスティール不可能なパス回しと、お前の『天帝の眼(エンペラーアイ)』による動きの先読みによる、100%のパスカットなら金剛阿含にボールが回ることはなく、ゲームの流れも支配できる)」

 

『それも涼太が動ける間という制約あってのものだ。残りの2分30秒を涼太の体力が持つと本気で思っているわけではないだろう?そして、何よりテツヤはもう限界間近だ』

 

「(……分かっている)」

 

 元より少ない体力の黒子は体力がもう尽き掛けていた。今の状況は黒子の尽力が大きくもし黒子がいなければ、金剛の猛威に陰りなど生まれなかったことだろう。

 しかし、攻撃でも守備でも出ずっぱりの黒子はコートを往復するシャトルランで、もうヘトヘトだ。いつ倒れてもおかしくはない。

 

「ならば、ここは攻めて点を取り少しでもプレッシャーを掛けるぞ!」

 

 そう言うと、赤司はコート中央に居る黄瀬にボールを渡す。荒くキツそうな息を吐く黄瀬だが、その闘志はまだメラメラと燃えていた。

 

「荻原君さあ……悪いっスけど君じゃあ俺には勝てないよ!」

 

「くそっ!」

 

 素早いロールターンで荻原を抜かして、3Pラインからはまだ遠いにも拘わらずシュートモーションに移る。

 

「お、おい、これってまさか!?」

 

 観客席から次に起こるシュートを想像して、驚愕の声が飛ぶ。

 

 

 

「これで、終わりっスよッ!」

 

完全無欠な模倣(パーフェクトコピー)』ーー『超高弾道3Pシュート』

 

 

 

 黄瀬が3Pラインより遠くからシュートモーションを取る。このままシュートが成功すれば11点差。明洸が巻き返せなくなるだろう。

 

 黄瀬の止めを差すためのシュートだが、荻原を躱すためにハーフコートよりも近付いた。

 ───そして緑間よりも溜めの長い0.7秒の遅れは阿含相手には致命的だ。

 

 

 

「遅せえよ。鈍間ッ!」

 

 

 

 金剛阿含が黄瀬の前に現れた。

 

「は、速ぇえ……!ゴール前に居たのにもうブロックに跳んでるッ!?」

 

「何度も見てもマジでヤバすぎだろ……!?」

 

 (まさ)しく、超人としか言えない動きに愕然とし、観客が騒然とする。またしても黄瀬の高弾道3Pシュートを阿含が防ぐ光景を予測した観客だが……。

 

 

「───黒子っち!」

 

 

 黄瀬がしたのはシュートではなく黒子へのパスだった。

 

「……って、はあああ!?フェイクッ!?」

 

 観客がざわつく中で桃井が人知れず笑みを浮かべる。

 

「(上手い!この局面での失点は幾ら金剛君でも無視できない。だから、きーくんの3Pシュートを何がなんでも止めに来た。

 でも、その判断が反って金剛君の広範囲ディフェンスエリアである3Pラインから、大きく外に引っ張り出すことになる。

 そして、極め付けはテツ君の『加速する(イグナイト)パス』でゴール前に居る赤司君にパスをすれば、例え『ゾーン』状態でも100%ブロックに追い付けない……!)」

 

 左に居る黒子に出されたパス。ゴール前に居る赤司に向かって『加速する(イグナイト)パス』の掌底をボールにぶつけるその寸前────黒子とボールの間に手が差し込まれた。

 

 

「──らあッ!!」

 

『なっ……』

 

 

 コートに居る帝光メンバーと、ベンチに居るメンバーが声を揃えて驚愕する。黒子へのパスをスティールするなど今大会が始まって初のことだった。

 ───しかも、それが金剛はもちろん荻原でもない、帝光が一切注目していなかった明洸選手によるものだったからこそ、驚きも一際大きかった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「おい、あのカスモデルからのパスを山根、テメーがスティールしろ」

 

 阿含が目を向ける相手は明洸で唯一フリーで動いている選手、3年の山根ダイスケだった。

 先輩にタメ口どころか「テメー」呼ばわりは今さらだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 荻原をぶち抜いてイカレ眼鏡のシュートモーションで俺を3Pラインから外に釣り出し、ペイントエリアから決めるつもりなんだろう」

 

 この終盤で決めるための布石。点差が開けられている中で3Pを決められると思えば誰でも必ず止めに行く。だからこそ、そのフェイクをしないわけがない。

 その作戦を聞いた山根だが、思い詰めた顔をするだけだった。

 

「……金剛。頼ってくれるのは嬉しいんだけど、あの15番(黒子)の動きは俺には捉えられない。スティールするのは……多分、俺には無理だと思う。

 それに4番(赤司)へのパスも考えると、俺だけじゃ勘の要素がデカすぎる」

 

 いつの間にか視界から消える。そんな相手にマークすることはもちろん、そのパスルートに入ることなど不可能としか思えない。

 さらに、阿含の言うことが正しいのなら緑間のダブルチームに2人、荻原は黄瀬に抜かれることを承知でマンツーマンディフェンス。

 阿含はもちろんブロックに飛ぶためディフェンスはできない。

 

 つまり、見えない黒子とゴール前でフリーの赤司という、2つのパスルートのどちらを黄瀬が使うのかを、彼がその場の判断で見抜かなくてはならないということ。

 

 その仕事量の多さと難易度を考えれば、安易に自分に任せろなんて言えるわけがない。

 そんな弱気な発言とも言える彼の言葉を、阿含は鼻で笑う。

 

「ハッ、そんなもん誰がテメーに期待すると思ってんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。テメーはそこに突っ込め」

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「嘘っ!?あのテツ君の場所がバレただなんて……!?」

 

 パスカットされたボールに驚愕する帝光チームと同じくらいに驚いているのが、スティールを行った張本人でもある山根だった。

 

「(マジで予測通りじゃん……あいつマジでヤバいわ)」

 

 山根は阿含の話を思い出す。

 

 

 

 

『俺の「神速のインパルス」はどんな動きにも反応ができる。つまり、フェイクだのなんだのは俺には通じねえ。

 そして、手足の長さによるリーチの長さはあのカスノッポに届かねえが、空中で手を動かしてカットすることは余裕でできるのが俺だ。

 シュートモーションから切り替えてゴール前のパスなんざ、俺にはどうぞスティールしてくださいってのと同じだ。そんなことはあいつらも既に分かりきっている。

 だから、散々あのカスザコをパスの中継として使ってきたんだからな』

 

 だからこそ、赤司へパスをすることはありえない。正確にはできないというのが金剛の見解だった。

 

『あの15番(黒子)が左側って言うのは?』

 

『この10点差を付けたい場面かつ、絶対に俺からブロックされないためには、あのカスザコの掌底から打ち出すパスが最善手だ。

 あいつは右利きだからな。当然、右からパスを受け取る方が打ち出し易いことを考えれば、あのカスモデルの左側に陣取るに決まってる。

 クククッ、ここまで絞り込めれば見えなかろうが場所は特定可能だ』

 

 金剛は悪人顔で嗤う。彼には揺るぎ無い確信が既にあった。

 

 

『俺の手が届く160度前方と横1mにパスはねえ。

 あのカスザコのパスを考えれば左側一択。

 あのカスザコは動体視力もカスだ。大方、2m程度はボールを見る余裕は必要だろう。

 

 ───つまり、あのカスモデルの真左2m以内。ここが唯一テメーがスティール可能なキルゾーンだ。

 

 ……ここまで分かっておきながら僕にはできません、なんざ言わせねえぞ?』

 

 

 ジロリと睨み付けられて「ヒィッ」とか細い声が出そうになったが、先輩の意地でどうにか堪えた。

 ……どうしてヤンキーとかにならずに超絶ストイックなスポーツマンしてるんだろう、こいつ……。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 金剛の影に隠れながら2m以内のスティールという、シビアな条件をクリアするため死に物狂いで手を伸ばしたものの、ほとんど触れただけだったからかそのまま流れてコートのラインを出そうになっている。

 

「(ああ……、くそっ!どれだけ才能が無いんだよ俺は!)」

 

 山根は強豪の明洸バスケ部に所属できる才能と実力はあった。

 しかし、同年代には現在『無冠の五将』と呼ばれる天才が現れ、1つ下の学年に『キセキの世代』という、その天才達すら敵わない怪物が現れた。

 圧倒的な才能の格差というものを知ったあとで、さらにそいつらを全て薙ぎ倒せる化け物が今年の春に入ってくる始末。

 

 何度、辞めようかと思ったか分からない。だが、それでも辞めなかったのは自分以上に才能の違いを直視することになった男が居たからだろう。

 

 

 明洸中2年、荻原シゲヒロ。次期、エースにしてキャプテン候補筆頭だった男。

 

 

 だが、金剛阿含の存在によって積み上げてきた信頼も何もかもが、途中で入ってきた男に奪い取られるだろう荻原は、誰よりも率先して金剛阿含と共に練習をしていた。

 いつか言ったことがある。

 

『荻原、お前さ。そんなに頑張ってあいつと張り合ってもあの化け物には届かないと思うぜ。お前が才能無いとも実力が無いとも言わないけどさ、あいつは別格だよ。

 生まれ持った才能が……性能が俺達とはまるで違うんだ。ケートラでスーパーカーと競ったってどうしようもないだろ?……これ以上、傷付く前に離れた方が良いと思うぜ』

 

 別に嫌がらせとかじゃなく、それは先輩としての助言のつもりだった。努力すればするほど差が縮まるどころか、金剛との自分との間にある隔絶した差を、まざまざと理解することになるだけでしかない、と。

 お節介でも誰かが言って止めてやらないと、この真面目な男は潰れると思ったんだ。良い奴だったからそのまま見過ごすことができなかった。

 

『えーと……俺も金剛には届かないってのは分かってるんですよ。

 それこそ、俺じゃあできないことをさらっとするし、才能の差ってのもまざまざと感じるんですけど……それ以上に、あんなにバスケに打ち込める奴なんか金剛以外にはいないと思うんです』

 

 だけど、荻原の目には絶望などなく尊敬の念を金剛に向けていた。どうしてそんな風に思えるのかと聞けば、荻原はしみじみと思い出すように話し出す。

 

『3Pシュートを連続50本成功するまでは、自前でライトを用意して日を跨いでも絶対に辞めないだとか、スポーツ医学を独学で勉強してトレーニングに活用するだとかを、中学で実践し始める奴なんていないですよ。

 食べるものからトレーニングの内容まで、金剛はその全てをバスケに注ぎ込んでる。

 あいつの才能は凄くて理不尽だと思うこともなくはないですけど、もし自分に金剛の才能があったらそこそこの努力で満足すると思います。少なくとも、金剛ほどにストイックにはなれません』

 

 金剛はバスケだけではなく、サッカー、野球、水泳、テニス、柔道、あらゆる競技で才能があると言われているらしい。

 何でも体育の授業での成績を知った教師の中には、その競技でオリンピックを目指せるぞ、と言っていた教師も居るらしいって話しだ。

 そして、さらには『神速のインパルス』という、超反応のリアルチートまであるのなら、努力することなど確かに馬鹿馬鹿しいだろう。

 それこそ、一目見たものは大概その場で実演できるというのならなおさらだ。

 

『あいつ、あんなに凄いのに全然満足してないんですよ。傲慢な言動に不良としか思えない見た目してるのに、バスケに対してはどこまでも真摯で真面目なんです。

 そんな姿を見てたら、俺も限界までバスケをやってから金剛に嫉妬をしたいなって思ったんです。

 手を抜いてるつもりはなかったですけど、あんなに死ぬ気でバスケをしてなかった。だから、あいつを羨むのは自分の可能性を全部引き出してからでも遅くはないと思ったんです』

 

 それが荻原が諦めること無く、やる気を出し続ける理由。ハッキリ言って馬鹿馬鹿しいと思った。ただの天才なら可能性はあるかもしれない。努力が実を結び天才に届く可能性も無くはないだろう。

 

 

 だが、勤勉な天才にどうやったら凡人が敵うっていうんだ?

 

 

 荻原は夢を見がちだ。全ての可能性を引き出した先には、凡人は天才には敵わないという事実だけ。

 だから、すぐに金剛の練習から離れると思った。だが、3ヶ月を過ぎ。半年を過ぎた頃には俺も流石に分かった。

 

「(ああ、こいつってただのバスケ馬鹿じゃん)」

 

 そもそも、荻原には金剛に勝つということすらどうでもよかったのかもしれない。自分が凡人でしかないという事実すらも。

 

「(敵わなくても、一番になれなくても、もっと上手くなりたいから練習する。こいつはそういう奴なのか)」

 

 それが分かると自分が凡人であることを受け入れられた。それどころか、世界にその名前を轟かすだろう金剛阿含という天才と、現在プレーできていることにちょっとした特別感を抱いた。

 

「将来金剛が昔を思い出して、頼りない雑魚の先輩から少しはやる先輩くらいに思われておきたいな」

 

 一番にはなれないことを知った。格下の凡人であることを知った。

 ───でも、先輩としての小さな意地まで捨てるのは抵抗があった。ただ、それだけの話だ。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 だが、現実は無情でボールを大きく弾けはしたが、ギリギリでのスティールのため体勢は崩れてしまっている。

 このまま体勢を元に戻すために時間を掛ければ、あの『キセキの世代』のことだ。すぐにディフェンスに戻ることだろう。

 

 だから、彼にできることは1つだけ。

 

 

「うおおおおッ!!」

 

 

 ヘッドスライディングのように前に飛び込み、ボールへ手を伸ばしてコートの中央の前方へさらに弾く。

 だが、彼は目の前のボールしか見ていないため、金剛がどこに居るのかは分からない。

 それこそ、パスミスの可能性が極めて高く、外から見ていれば適当としか言えない杜撰なパスだ。

 それこそ、コートから出てしまいアウト・オブ・バウンズになる可能性が高く、相手選手にボールが渡ってしまえばカウンターとなる可能性も高い。

 

 だが、彼は信じた。それは阿含がチームメイトだからではない。天才だからでもない。

 

 ───才能があるにも拘わらず、あの馬鹿げた練習量をする男が、この大一番で最善を尽くさない訳がないという信用からだ。

 

 

「ハッ!カスの分際で良いパスじゃねえか」

 

 

 バシッ!と小気味良い音が鳴り、阿含の手の中に収まった。阿含は一切の速度を落とさずそのまま走り抜ける。

 ゴール前でパスを貰うつもりで居た赤司はもちろん、すぐ近くに居た黄瀬すら影も踏めないスピードで、阿含は帝光のゴール前まで駆け抜けた。

 

「止める……ッ!」

 

 最後の砦である紫原が立ち塞がる。『ゾーン』に入りかねない集中力の紫原には生半可な攻撃は通用することはない。

 

 

「(正攻法じゃあ止められる可能性が高いか……なら、こいつはどうだ?)」

 

 

 巧みなドリブルで揺さぶりを掛けながらゴール裏側に腕を伸ばす。

 

「『型のない(フォームレス)シュート』ッ!?」

 

「不味いッ!紫原はまだゴール裏からのシュートは止められていないぞ!?」

 

 この局面で点数を入れられれば、勝敗を左右してしまう。監督も含め帝光ベンチの背筋が凍る中で、紫原はその動きに対応してみせた。

 

 

「させるかよ!!」

 

 

 下からゴールを狙う金剛へ飛び掛かるように紫原は飛ぶ。

 

「上じゃない……あれは横へのジャンプ!?高さは出ないけどあれなら追い付ける!」

 

 バスケでは余り見ることがない幅跳びのようなジャンプ。それで成立するのは腕だけでボールを阿含が投げようとしていることと、紫原の高身長と長い腕によるもの。

 シュートコースを紫原に完璧に防がれた阿含は、超反応で───体幹でほとんど横倒しの状態から起き上がり、ボードの裏からではなく表からシュートを決めようとする。

 

「な、何だと!?ありえないッ!!足腰が強いなんてもんじゃないぞ!?」

 

 まるで上から糸で引っ張り上げられているかのような、異常な動きに帝光の真田コーチから驚愕の声が上がる。しかもこれが30分近くプレーをし続けた選手の動きだと誰が思うだろうか。

 

「まだ……───ぐがッ!?」

 

 反射で阿含を止めに行った紫原だが、バックボードの裏側に腕が接触して弾かれる。阿含はそれを見ながら悠々とレイアップを決めて笑みを浮かべた。

 

 

 103対111→105対111

 

 

「クククッ、反射と反応速度じゃあ次元が違えんだよカスノッポ」

 

「くそ……っ!」

 

 勝ち誇る阿含に紫原は歯を食い縛った。

 

「いや、待て。問題はそこではない。今の動きはあらかじめ黄瀬の動きが分かってなければ防ぎようがなかったはずだ……」

 

 それにも拘わらず、スティールされたということは考えられる可能性は1つしかない。

 

 

「……まさか、『完全無欠の模倣(パーフェクトコピー)』の真実を見破られたというのか!?」

 

 

 残り2分12秒。帝光の難局がやってきた。




公園やストリートバスケをする場所に置かれているバスケットゴールで、一人黙々と深夜に3Pシュートの練習をしている、ヤンキーの噂がチラホラ流れているとか
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