覇王大系リューナイト ~退魔の花~   作:アフロダイB

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精霊を名乗る男

一方アデューは暗闇の中にいた。

アマノハバキリに突撃したゼファーは時間を稼ぐため刀を振らせないようにしがみついた。

サルトビ達が逃げ切ってしまう事を恐れたのか、アマノハバキリはゼファーを確実に破壊せず投げ飛ばして崖に叩き落とした。

アデューが覚えているのはここまでだった。

 

『…ここは崖の下なのか?』

 

一片の光も差さない真っ暗闇の空間で、それでも何かを探そうとアデューが辺りを見渡すと、急に視界に明るさが戻ってきた。

 

『いいや、ここは私のプライベート空間だ。』

 

アデューが声のした方を振り向くとそこには薄緑色をした長い髪の男と、よく見知ったエルフの少女が座っていた。

 

『お前カッツェじゃないか!?

それにアンタは一体…?』

 

指を差しながらアデューが歩み寄るとカッツェは片手を挙げて答える。

 

『そやでー、久しぶりやなアデュー。

よぉ来てくれたわー。

そんでこっちのお人はやなぁ。

うーん、なんちゅーたらいいんやろか。』

 

『なんだよ、もったいぶるなよ。』

 

なかなか言葉が出てこないカッツェを手助けするかのように、長髪の男が口を開く。

 

『私は太古の昔からアースティアを見守る者。

君達の言葉を借りるならば神や精霊に近い存在だよ。』

 

アデューは神を名乗る男の全身を見渡す。

言われてみれば人の姿をしているが、どことなく映像めいた姿はこの世のものではない違和感を感じる。

 

『アンタが神様だか精霊だったとして、俺に何の用があるんだよ。

それに、そんな偉い奴がどうしてカッツェなんかと一緒にいるんだよ。』

 

『なんかとはなんや!

久しぶりやっちゅうのに失礼なやっちゃな!』

 

強気なアデューと、その言葉にツッコミを入れるカッツェを一笑して男は答える。

 

『そこのエルフが私の友人、君達が交戦したリューの封印を解いてしまってね。

責任を取らせて彼女に戦ってもらおうとしたのだが、もう少ししたら友人を倒すのに必要な戦力が現れると彼女が言い出してね。

君がそうなのだろう?私はこれ以上友人が苦しむ姿を見ていたくない、もう待てないんだ。』

 

後半はやや早口になりアデューに詰め寄る。

その勢いを受け流すかのようにアデューはカッツェに飛び掛かる。

 

『封印を解いたのはお前だったのかぁー!

何が必要な戦力だ、あんなの相手にどうしろって言うんだよ!!』

 

『ウチが待ってたのはお前やないけど、このままだとウチはアイツかこの御方に殺されるんや!!

お前でいいから何とかしてくれー、堪忍や!!』

 

カッツェは地べたに這いつくばったまま頭を下げて、アデューに頭を叩かれながら懇願する。

なんとも情けない姿だが、本当にどうしようもない事態なのだろう。

 

『彼女に言われた後、私は強い力を持つ君が近くに来ているのを見つけてここに誘導したのだ。』

 

男の言葉を聞いてアデューはサルトビの言葉を思い出す。

 

『お前は運命…というか精霊だか神だかに導かれてるんじゃないか?

アースティアのために都合よく使われてると言ってもいい。

だから今回もお前が何か大きなトラブルに向かっていて、俺達はそのための舞台装置なんじゃないかと思ったんだ。』

 

サルトビの言葉が正しいならば、自分は今回もこの男に導かれてここに来たのだろう。

 

『アンタ達みたいな奴はアースティアにたくさんいて、みんなして俺を導いて利用しているのか?』

 

サルトビの言葉に怯えるかのようにアデューは口を開いた。

男は少しだけ思案してから返答をする。

 

『私は今回が初めてだが、私と似たような存在がたまたま居合わせた君を利用している可能性はある。

私達が共謀して君を利用しているわけではないよ。

少なくともそこのエルフが友人の封印を解かなければ私は君などに関わらなかった。』

 

男の言葉を聞いてアデューはとりあえず納得はした。

少なくとも自分を遊び半分でトラブルに巻き込んでいるわけではないらしい。

仮にそういう存在が自分を導いていたとしても、それは悪意ではなくアースティアの平和を維持するためのようだ。

最初こそは得体の知れなさに恐怖したが、よく考えればそれはアデューの望むところだ。

アデューは覚悟を決めるとカッツェに向き直った。

 

『どっちみちこのままじゃパッフィー達が危ないんだ。

カッツェ、お前も手を貸せ!』

 

『恩に着るでアデュー。

ウチらみんなでアイツをなんとかしようやないか。』

 

調子いいんだよとカッツェを殴りつけるアデューを見て、男は何かに気が付いたらしい。

男の瞳が怪しく輝くと、「そうか」「なるほど」とブツブツ独り言を呟いていく

やがて男は驚いた様子でアデューに話しかける。

 

『…そうか、キミはラーサーとメルの子供か。

それにスワンの弟子でもあるとは…不思議な縁の持ち主だな。』

 

男の言葉にアデューは真剣な面持ちと眼差しで問い詰める。

 

『父さんと母さん、それに師匠の事を知ってるのか…?』

 

『私達は特殊なネットワークを形成して仲間と情報交換ができるのだよ。

私個人はラーサやスワンに会った事はないが、重要人物の情報は共有しているのさ。

君達が責任を取って無駄死にした後に自らの手で友人を救うつもりだったが、彼らの子ならば無駄死にはさせられないな。』

 

涼しい顔で恐ろしく残酷な言葉を口にする。

その振る舞いはまさしく彼が人智を越えた存在である事を証明していた。

 

男が静かに手をかざすと、いくつかの武具が宙に浮いて姿を現す。

 

『おい、この武器についてるのは精霊石じゃないか!!』

 

『なんやて!?

ホンマや…これは間違いなく精霊石やで…。』

 

カッツェが眼鏡の位置を合わせて鑑定する。

商人として目が利くカッツェも目の前の存在が精霊石の武具であると断定した。

 

『君達とお仲間のシノビと魔法使いは精霊石を使った事があるのだろう。

この中から4つ選んで持って行きたまえ。』

 

『えーっと…神様精霊様?

お気持ちはありがたいんですが…ウチらのリューは精霊石の武器なら何でもいいっちゅーわけにはいかんのでしてー…』

 

差し出された武器を前に恐る恐るカッツェが説明を始める。

リューは精霊石を使う事でクラスチェンジする事が出来るが、

それはリューのクラスや乗り手の資質に委ねられる物であり、仮に騎士であるアデューが精霊石のついた魔法の杖を手にしたところでクラスチェンジは出来ないのである。

 

『私にリューの扱いを語るとは身の程知らずだな。

そのような問題は私がなんとかしてみせよう。

たかが数人の人間の力で見事に友人を打ち倒し私を楽しませてみせよと言っているのだよ。』

 

『ひぃぃぃすんませんすんませんすんません!!』

 

カッツェが3回ほど頭を下げて土下座する。

この様子ではアデューが来るまでにかなり恐ろしい目に遭わされたようだ。

 

『じゃあ俺が大楯、サルトビには短刀、パッフィーには魔導書だ。』

 

『うちは弓にしとくか。

弓を扱うんは久しぶりやけど、なんとかなるやろ。』

 

アデュー達はそれぞれのクラスと性質の似た装備を選んでいく。

 

『ふむ、では急ぎたまえ。

このままではお仲間がやられてしまうぞ。』

 

そう言って男が手をかざすと、再びアデュー達の視界が一転する。

気が付けばそこは最初にアマノハバキリの出会った場所であった。

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