『リューセージは博識のようです。
敵の弱点を見抜きました。』
パッフィーの言葉を聞いて3人が顔を見合わせる。
ようやく勝ち筋が見えてきた。
『あの胸元にある飾りがリューを動かしています。
あそこを攻撃すれば一時的ではありますが機能不全に陥り停止するはずです。』
パッフィーの言葉を聞いて、不死身退治の専門家である藍が即座に方針を決める。
『その隙に私達が不死身を一撃で仕留めます。
みなさまにはお手数をおかけいたしますが、なんとか首飾りを破壊してください。』
作戦の方針が決まると、それぞれが己の役割を見出していく。
『よし、サルトビはアイツを俺の方に連れて来てくれ。
コイツのとっておきでアイツの足を止めてやるぜ。』
『わかった。
爆裂丸の身軽さでアイツを上手くゼファーに誘導してやる。』
『トドメはウチやな。
足を止めた瞬間を狙い撃ちしたる。』
『では私は魔法でサルトビのスピードを向上させます。』
それぞれの意見に異議を挟む者はなく、わずかな無言の後は示し合わせたように4人とも同時に散った。
『オラオラ、コイツの切れ味ははんぱねーぞ!』
爆裂丸がアマノハバキリに攻撃を仕掛ける。
アマノハバキリの攻撃は凄まじく、通常ならばクラスチェンジした爆裂丸と言えど長くはもたないが
リュー・セージの援護もあってどうにか戦えている。
やがて爆裂丸が後退を始めるとアマノハバキリは逃がすまいと追いかけてくる。
『後は任せたぜ、アデュー!』
爆裂丸がバク転でアデューの後ろに飛ぶと、それを追うアマノハバキリは邪魔だと言わんばかりにゼファーに切りかかる。
アデューは大楯を高く持ち上げると、そのまま思いっきり地面に突き立てた。
『くらえっ!グランドクロス!!』
地面に突き刺さった大楯からひび割れが発生し、アマノハバキリの足元が割れる。
その隙間から光が差し込みアマノハバキリの身体を包み込む。
アンデッドであるアマノハバキリの特効のある聖属性による攻撃だ。
動きが鈍くなったアマノハバキリに向けてカッツェのリュー・スターアーチャーが狙いを定める。
『今や!
必殺、ステラーアロー!!』
リュー・スターアーチャーから必殺の矢が放たれる。
それはスターの名にふさわしく星々さえも粉々に砕きそうな一撃だったが、アマノハバキリは鈍いながらも最小限の動きで矢を回避する。
『やるやないか!
ならこれはどうや!!』
カッツェは再び弓を構え、間髪入れずの二連射を放つ。
一射目をかわした先に二射目が刺さるはずだったが、アマノハバキリは二射目さえも最低限の動きでかわしてしまう。
やがてリュー・クルセイダーのグランドクロスの光は消え、アマノハバキリがゼファーに襲い掛かる。
『何やってんだカッツェ!ちゃんと狙えよ!!』
アマノハバキリに敢えて大楯を構えて突撃し、威力を抑えながらアデューが叫ぶ。
その言葉には必死さが伺える。
『アカン!
今のは並の使い手なら絶対に当たるフェイントなんや!
コイツは達人、それも歴史に名を残すようなレジェンド級の使い手や!!』
『んなこたぁどうだっていい!
もう一度チャンスを作ってやるから今度は絶対に命中させろ!!』
サルトビが怒声を浴びせると、爆裂丸が物騒な刃物を抜いて突撃する。
『そんな事を言われたって…ウチにはどうにもならん…』
責任の重さに潰れリュー・スターアーチャーが弓を降ろしたその時、洞窟の入り口側から一人の男が姿を現した。
『カッツェ、そのリューに俺を乗せろ!!』
その声はカッツェがずっと待ち続けていた希望の声だった。
『兄ちゃん!やっと来てくれたんか!!
安モンの伝書鳩がちゃんと仕事したんやな!』
カッツェのイェーガーが年頃の少女らしい声を挙げて男に駆け寄る。
男の名はヒッテル。
カッツェの実の兄でありイェーガーの本来の乗り手である。
『ヒッテルなの!?』
渡りに船とはこのこと。
パッフィーが呼びかけるとヒッテルは軽く手をあげて返事をし、状況を分析する。
アデューが敵を抑えてサルトビが攻撃をしようとしているが、それだけで倒せる敵ではなさそうだ。
『ヒッテル!
そいつは弓だけど大丈夫か!?』
『ああ、エルフは弓の使い手の一族だ。
任せてくれ。』
アデューの問いにヒッテルは力強く答える。
『ヒッテル、狙いは胸の飾りだ!!』
ヒッテルに意図を伝えるとサルトビが突撃していく。
勝負に出るようだ。
『兄ちゃん、アイツは相当な使い手やで!』
『ああ、動きを見ればわかる。』
身のこなし、太刀筋から冷静に分析する。
アデューはよく抑えている方だが、それでもそろそろ限界だ。
イェーガーは指の隙間に矢を4本も番えて狙いを定める。
『行くぜ爆裂丸!!
ジェイ・リッパァー!!』
マジドーラの援護を受けて爆裂丸の機体が光り輝く。
爆裂丸のスピードが急速に増し、目にも留まらぬ速さでアマノハバキリを切り刻んでいくが
アマノハバキリは飾りだけは傷付けぬようにとかろうじて回避していく。
『勝負だ!!』
その隙をついてヒッテルが狙いを定める。
『逸材が50年は修練を積んだ達人の動きだ。
だが、俺は凡夫だが100年の修練を積んでいる!』
ヒッテルが4本の矢を放つ。
アマノハバキリは4本の矢にも対応し身構えるが、イェーガーがさらに4本の矢を番えて放つ。
矢はそれぞれ速度が異なり、言うなれば8射の矢がそれぞれに首飾りが避けた先を狙って襲い掛かる。
一瞬の間にアマノハバキリは矢の軌道を冷静に分析し、回避を試みるがヒッテルの狙いはその先にある。
『こいつが本命だ!!』
矢を番えている時間はないと、ヒッテルは両手に矢を掴んでアマノハバキリに投げつける。
8本の矢をかわしたその先を1投目の矢が狙う。
しかし投げた矢は弓を使った攻撃より遅い。
アマノハバキリは8射の矢をギリギリ回避した上で、1投目と2投目の矢の軌道を見切り回避行動に移る。
だが、ヒッテルの投げた2投目は1投目の矢に追いつき、衝突して軌道を変化させる。
変化した2投目の矢の軌道の先には、アマノハバキリの首飾りがあった。
2投目の矢はアマノハバキリの首飾りを掠め、首飾りを繋ぎとめていた鎖が破壊されて首飾りは宙に舞う。
『今だ、アデュー!!』
『ああ!!』
アデューはクラッシュドーンで首飾りを破壊しようと身構える。
アマノハバキリは飛び立とうとするが、いつの間にか足元が凍り付いており飛び立つ事が出来なかった。
『アデューの邪魔はさせません!』
マジドーラのフリーズバインドがアマノハバキリの足を凍り付かせたのだ。
平時ならば避けていたのだろうが、アマノハバキリは首飾り以外の何かに意識を向ける余裕がなくなっていた。
飛べぬならばとアマノハバキリが斬撃でアデューを阻止せんと刀を抜こうとするが、何かに阻まれていつものように刀が抜けない。
アマノハバキリが刀を確認すると、鞘に刃物が刺さり楔のように刀を抑えていた。
『へっ、ざまあみやがれ!』
それは爆裂丸の投げた武器であった。
アマノハバキリは急いで刃物を取り除こうとしたが、その手に別の刃物が刺さる。
刃物の飛んで来た方向ではカッツェのイェーガーが足をあげている。
『イェーガーの複座型を舐めんなぁ!!』
スターアーチャーに装備されていた恐らくは近接用ナイフの固定具を外し、それを蹴飛ばしてアマノハバキリに命中させたのだ。
その隙にアデューのクラッシュドーンが首飾りに向かっていく。
アマノハバキリは脇差しを抜いて放り投げたが、クラッシュドーンは脇差しをかき消して首飾りへと飛んでいく。
アデューの剣は首飾りの芯を完全に捕らえ、粉々に砕けた首飾りは光に飲まれて消滅した。
『今だよ藍!』
『はいっ!!』
首飾りが破壊されて動きを止めたアマノハバキリにセイメイが全力で斬りかかる。
セイメイが刀を大きく振り降ろした瞬間、藍と杏樹の脳裏に映像が流れ込む。
脳裏に映る映像は、自分達が今いる洞窟の広間。
その場には一人の老人と、どことなく藍に似た少女の姿があった。
『数多くの勇者の犠牲と共にウォーム・ヤマタノオロチは倒れた。
だが、ヤツは8本の首を持っておりそれらには別々の命が宿っている。』
老人が重々しく口を開くと少女はわずかな恐怖心と共に小さく頷く。
『今のヤマタノオロチは一切の攻撃を受け付けぬ。
代わりに身動き一つ取れぬが、1年後には2つ目の命が目を覚まし動き出すだろう。
その頃にはワシの病も進行し、再び戦場に立つ事は出来ぬ。』
老人の言葉に少女が覚悟を秘めた熱い瞳で答える。
『その時は私が命を賭けてでも打ち倒してみせます。
それまでどうか私にご指南をお願い致します。』
少女の覚悟に喜びを感じつつ、老人は静かに目を閉じる。
『どれだけの勇者達が犠牲になったと思っておる。
彼らはみな人生を武に捧げた達人であった。
1年では次なる勇者達が育つ時間はなく、お前一人ではどうにかなるものではない。』
老人の現実的な言葉に藍は目を伏せる。
どうやら少女は、老人が次に言う言葉がわかっているようだった。
『ワシが不死身となってアーククラスにクラスチェンジしよう。
この場にとどまり、目覚めたばかりで満足に動けぬヤマタノオロチを斬る。
それを7回繰り返せばウォーム・ヤマタノオロチは倒れ、この場には見る者を全てを斬り裂くワシが残るのみじゃ。』
少女は瞳に大粒の涙を溜める。
その涙は老人の覚悟を慰めていくようだった。
険しい表情をしていた老人は優しい笑顔に戻っていく。
『この場を壁で塞ぎ、永遠に封印せよ。
お爺ちゃんとはここでお別れじゃ。』
少女は涙を流し、顔をくしゃくしゃにしながらも力強く答える。
『…私の代ではお爺様を救うのは難しいかもしれません。
ですが、いつか…いつか私の血を引く者が必ずお爺様の魂を解放いたします!
不死身のままになんて、絶対にさせません…!』
少女の声が響き渡る。
やがて映像が白みを帯びて視界を塞ぎ、それが晴れた時には藍の目の前に大きく斬り裂かれたアマノハバキリの姿があった。