数日後、それぞれの次なる旅路の準備を終えた一行は街の出入り口で別れの言葉をかけあう。
『じゃあサルトビとこいけが藍と杏樹を家まで送り届けるんだな?
別に俺が2人を送り届けてもいいんだぜ?』
『本当は姫と共にシノビの里に戻るつもりだったが、お前と言う都合のいい護衛が現れたんでな。
受けた依頼は最後までって事で俺はお2人を屋敷まで送り届けるとするさ。』
何かを誤魔化すかのようにサルトビが背を向けると、アデューが背後から近づいて耳打ちする。
『俺達にそんな気を使わなくていいんだぞ?』
アデューの言葉をさらに誤魔化すようにサルトビはそっぽを向く。
『受けた依頼をきっちり果たすだけだ。
シノビの里まで姫様を頼んだぜ。』
男達が友情をかわす一方で、女達も別れを惜しんでいた。
『うわぁぁーん、せっかく友達になれたのにぃぃー』
こいけがパッフィーに抱き着いて大泣きしている。
その姿はとてもくのいちには見えず、サルトビも頭を抱えてしまう。
『シノビの里とは親交がありますから、また来る事もあります。
その時にお会いできるのを楽しみにしてますわ。』
『うん、その時は里帰りするから絶対に来てねぇぇぇー。』
こいけはサルトビに引きはがされていく。
『この度はパッフィー様から多くの事を学ばせていただきました。
日の出国に来られた時はぜひ太刀花家へもお越しください。』
藍が両手を添えてゆっくりと頭を下げると、パッフィーは拗ねたように頬を膨らませて抗議する。
『もうっ、私達は友達ではありませんか。
そのような他人行儀な事はやめてください。』
『そうだよ藍。
パッフィー様、また会おうね。待ってる。』
杏樹が遠慮のない態度で接するとパッフィーは杏樹を優しく抱きしめる。
『ええ、また会いましょう。
その時の杏樹はさぞかし美しいレディになってるでしょうから楽しみですわ。』
杏樹とパッフィーの姿を見て、藍も仲間になりたいと感じたのか姿勢を改めてパッフィーに話しかける。
『私もお姉様に負けないくらいステキなレディになってみせます。
次に会う時を楽しみにしていてくださいな。』
『ええ、もっともっと素敵になってくださいな。
旅路の間、本当の妹が出来たみたいで嬉しかったですわ。
また会いましょう。』
2人はしばし抱きしめ合うと、互いの顔を見て笑う。
その笑顔はわずかな寂しさと希望に溢れていた。
『俺とカッツェはしばらくはここに残って罪滅ぼしをするつもりだ。
この街の人達にはカッツェのせいで安心して眠れない日々を送らせてしまったからな。』
『ただ働きやなんて冗談じゃないでぇ…トホホ…。』
ヒッテルはカッツェが逃げださないようにしっかりと首根っこを掴まえている。
『よーし、じゃあ行くか!
みんな、またな!!』
アデューの掛け声でそれぞれが進むべき道を歩んでいく。
お互いの背中が見えなくなるとサルトビが藍に話しかける。
『良かったのですか?
藍様はアデューの旅に着いていきたかったのでは?』
サルトビも鈍感ではないので、藍の気持ちに気付いていた。
最もそれが憧れなのか恋心なのかはサルトビにも藍にもわからないのだが。
『はい、アデュー様の旅に私はお邪魔でしょうから。
それにパッフィー様に余計な気を使わせてしまいます。』
『それは…そうですが…』
サルトビ自身も同じような理由でパッフィーから離れているので何も言えない。
『それに私、気付いたんです。
スサノオノミコトは自分を犠牲にしてでも大切な場所を守りたかった。
私も日の出国が大好きですから、スサノオノミコトの気持ちがわかるんです。
私が本当にやりたい事は、この地を守りこの地で生きていく事だって。』
『…そうですか。
じゃあ仕方ありませんな。』
『アデューは世界を飛び回り、私達はこの地を守り続ける。
残念、噛み合わないね。』
真っ直ぐな藍の瞳を見て、サルトビは納得し杏樹は笑う。
アデューは風の翼で空を飛び、少女達は風が訪れるのを待つ。
彼が光速の騎士と呼ばれるその日までアデューは飛び続けるのだろう。
最後に羽根をたたむのはパッフィーの元だろうが、その前に少しだけでも自分達の元へ立ち寄って欲しいと願う。
翼を持たぬ少女でも、風が吹くだけでどこまでも自由になれる気がするから。
少女は気付いた。
私はきっと自由に憧れただけなのだ。