覇王大系リューナイト ~退魔の花~   作:アフロダイB

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パフリシアのお姫様

サカイの街に辿り着くと辺りが一気に賑やかになる。

様々な地域の珍しい品が流通しているサカイは海を利用した商業都市としては日の出国一と言っても過言ではない。

だが、この日の市場はまた別の話題でも盛り上がっていた。

 

『なにぃ!?

パフリシアの姫様がもう着いちまったのか!?』

 

『なんでもパフリシアの船が故障したとかで、途中の港で姫様達だけが出航直前だった商業船に乗り換えて来たらしい。

補給や船の点検が無かった分だけ早く着いたみたいだな。』

 

藍達に飲み物を買おうと売店で買い物を済ませたついでに情報を入手したサルトビは、注文した品を受け取るとぶつぶつと呟きながら戻ってくるのだった。

 

『なんだよサルトビ。

あの店で何かあったのか?』

 

『ん、いや!?な、なんでもない。』

 

アデューの問いかけにあからさまに怪しい態度で返すと、サルトビはコホンと咳をする。

 

『それよりもお二方、宿の事なのですが少し町はずれの方でもよろしいですか?』

 

『それはどうしてですか?』

 

いきなりの提案に藍が当然の疑問で返す。

わざわざ町はずれに行く理由がない。

 

『い、いや。

たまには町はずれの素朴な宿も良いかと思いまして。』

 

『私は嫌。

ちゃんとした宿の方がいい。』

 

杏樹は了承せずサルトビの案を否定した。

 

『し、しかし…。』

 

『おいサルトビ、何を隠してるんだ?』

 

アデューが追及するとサルトビは少しだけ目を瞑り思案を巡らせた。

 

(…まぁ宿と言ってもいくつもある。

同じ宿で鉢合わせとはならんだろう。)

 

『太刀花家の間者が指定された宿に来る手筈となってますから宿を変更されるのは困ります。』

 

藍を篭絡して宿を変えるつもりだったが、藍達にも事情がある以上はそれも難しい。

サルトビは覚悟を決めて3人に向き直る。

 

『わかりました。

おかしな事を言って申し訳ござらん。

さぁ、参りましょう。』

 

わずか10分後、サルトビはこの決断を後悔する事になる。

 

サルトビの願いは半分叶えられた。

太刀花一行とパフリシア一行は別々の宿を選択していた。

だが、互いの一行は宿に向かう大通りで鉢合わせする事となる。

 

『アデュー!?

アデューではありませんか!

どうしてあなたがここに!?』

 

旅立ちの日から2年。

すっかり女性らしくなったパッフィー・パフリシアがアデューに駆け寄って飛びついた。

 

『パッフィー!?

まさかこんな所でパッフィーに会えるなんて思わなかった!』

 

『私もですわ、アデュー。

まさか日の出国にあなたがいるなんて思わなかったから。』

 

将来を誓い合った2人の2年ぶりの再会。

互いの気持ちは大いに盛り上がっていたのだが、それをサルトビが強引に引き離す。

 

『姫、お久しぶりでござる。

積もる話もありましょうが、拙者ちょっと急用があるのでアデューをお借りします。』

 

『え、えぇ…どうぞ。』

 

パッフィーがアデューから離れると、サルトビはアデューの肩を組んで強引に裏通りに引きずっていく。

 

『なんだよ、せっかくパフに会えたってのに。』

 

いきなり引きずられて抗議するアデューの前でサルトビはゆっくりと口元を隠す覆面を外した。

 

『お前…素顔を…』

 

忍びであるサルトビは人前で素顔を晒す事はほとんどない。

覆面を外したという事はサルトビにとって、今から話す事はそれだけ重要だと言う事だ。

 

『いいか、よく聞いてくれアデュー。

俺は7つの時から11年間、里帰りもせずパフリシア王家に仕えていた。

パッフィー様は俺にとって主君であり幼馴染であり妹のような存在でもあり理想の女性像でもある。』

 

『あ、ああ…わかるよ。』

 

今でこそかなり落ち着いたものの出会った当初のサルトビのパッフィーへの思い入れは相当な物だった。

パッフィーの成長と一人立ちと共に過激さは薄れていったが、かつてアデューは何度もサルトビに暗殺されかけた。

 

『俺が恐れていたのはパッフィー様が俺達の不死身討伐に着いてくることだ。』

 

パッフィーが日の出国を訪れたのは、以前から親交のあった忍びの里の長に会うためだ。

サルトビは不死身討伐の支援と同時にパッフィーを忍びの里へ案内する役目も任された。

サルトビはパッフィーが到着する前に不死身討伐を終えてから忍びの里に案内するつもりだったのだ。

だが、実際には討伐前に顔を合わせてしまった。

パッフィーの性格であれば、人々の困りごとには必ず顔を突っ込むだろう。

 

『戦いは何があるかわからんからな。

俺はいざとなったら藍様達を引っ張って強引に逃げるつもりでいた。

だがパッフィー様まで着いてくると爆裂丸だけで二体のリューを抱えて逃げる事は出来ん。』

 

『ああ、そうだな。』

 

事情を知ればパッフィーは必ず着いてくるだろうとアデューも同意する。

そうなればサルトビが言うような危機に陥った時に対処できない。

その時のアデューは逃げ出さずに最後まで戦うだろうし、パッフィーは自分を援護しようとして逃げ出さないだろう。

 

『だからアデュー。

姫様には絶対に不死身の事を話さないでくれ、頼む!』

 

サルトビが両手を合わせて頭を下げている。

素顔まで晒しているサルトビの気持ちに偽りはないだろう。

 

『ああ、わかった。

騎士の名に誓って不死身の事は絶対に喋らないと誓う。』

 

『…ありがとう、アデュー。

恩に着るぜ。』

 

珍しくサルトビが礼を言う。

しおらしいサルトビを見てるとなんだか調子が狂うのでアデューはおどけてみせた。

 

『それにしてもサルトビぃ。

パッフィーが理想の女性像だなんて、言うじゃないか。』

 

アデューが肘で小突くとサルトビは遠い目をして語り始めた。

 

『…俺がいた忍びの里は、どいつもこいつも隙あらば修行を理由にして命を狙ってくるような恐ろしく気の強い女ばかりでな。

あのイオリですら忍びの里ではかなりお淑やかな方なんだよ…。』

 

『そ、そうだったのか…。』

 

一見すると健気な少女に見えたイオリだが、その性格は優しさと豪胆さと狡猾さが混ざり合っていたのを覚えている。

 

『そんな俺が初めてパッフィー様を見た時の衝撃はそれはもう凄いものでな。

この世にはこんなにも可憐な女性が存在するのかと。』

 

『そ、そうか、茶化して悪かったよ。

苦労してたんだな、お前。』

 

サルトビがあまりにも真剣に語るのでアデューも茶化す気がなくなった。

しばしの沈黙の後、男達は目で通じ合うと路地裏を抜け出すのだった。

 

その頃、アデューとサルトビを待っていた3人はと言うと…。

 

『あの、お2人はアデューとサルトビとはどのような関係なのですか?』

 

アデューもサルトビも進んで女性を旅のお供にしたがるとは思えない。

つまり2人には何か事情があるのだとパッフィーは考えた。

 

『あっ、はい。

お初にお目にかかります、パフリシアの王女様。

私は退魔師一家太刀花家の末女、太刀花藍と申します。』

 

『姉の杏樹です。

お初にお目にかかります。』

 

2人は両手を前に重ねて深々と頭を下げて挨拶をする。

 

『まぁ太刀花様と言えば不死身狩りの高名な一族と聞いております。

まだお若いようですがお2人も不死身狩りをなさっているのですか?』

 

結果的に言えばパッフィーは14歳で世界を救う戦いに身を投じたが、一般的に言えば実戦に赴く年齢ではない。

まして目の前にいる2人はあの頃の自分より少し若く見える。

 

『はい。

この先にある山奥の洞窟で不死身が発見されたと聞き、祖父に言われて私達が討伐しにやってまいりました。』

 

正確に言えば偵察をし、倒せるようならば倒せという指示だが藍に逃げ帰るつもりはないようだ。

 

『サルトビは忍びの里から派遣された私達の護衛です。

アデューとは偶然出会って旅に付いてきてもらってます。』

 

『まぁ、サルトビには休養も兼ねて里帰りをさせたというのにこちらでも仕事をしていたなんて。』

 

パッフィーの修行も終わり、邪竜族と言う脅威もなくなったので

サルトビを実に11年ぶりに里帰りをさせていたのだが忍びの里は甘くない。

サルトビは帰郷後すぐに2人の護衛任務を受ける事となったのだ。

 

『わかりました。

不死身退治の件、私もお手伝いさせていただきますわ。』

 

サルトビの願いも空しく予感は的中した。

 

『いえ、そんな!

パフリシアの王女様にそのような事をさせるわけには行きません。』

 

『いいえ、リューの乗り手たるもの世界の脅威には立ち向かわなければなりません。

これも縁ですからお手伝いさせてください。』

 

一国の王女にそう言われ2人が言葉に詰まっていたその時、ようやく男2人が戻ってきたのだった。

 

『あっ、アデュー!サルトビ!

不死身退治に私も付いていくことに決めましたわ。』

 

男2人はずっこけた。

路地裏でのやり取りは無意味と化した。

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