覇王大系リューナイト ~退魔の花~   作:アフロダイB

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待つ者と共に歩む者

翌朝、一晩を過ごすうちにすっかり打ち解け合った女性陣とは対照的にアデューとサルトビには妙な壁が出来ていた。

もっとも表面的には2人とも平然としていたため女性陣がそれに気付く事はなかった。

お互いに争っているわけではないのだから当然だろう。

 

『おい、こゆ…こいけ!

いい加減に交代しろ!』

 

アデューを除くメンバーを乗せた馬車を引きながらサルトビが振り返る。

 

『いーやーでーすぅー!

こいけは人生初のお友達と一秒でも長く一緒にいるんですぅー!』

 

何があったかは知らないが、こいけは昨夜の間にパッフィー達に懐いたらしく片時も傍を離れようとしない。

心を開くと過剰なまでに距離を詰める辺り、小雪は陰キャの典型と言える。

それでも名前の訂正は出来ていないのが小雪の情けない所だ。

ともかく小雪にとっては初めての友達であり、今から事件を解決して別れるまでが人生で唯一の友達といられる時間だ。

そう考えると無理に引き離すのも可哀想な気はする。

 

『ごめんなさい、サルトビ。

私からもお願いしますわ。』

 

さらにパッフィーにそう言われてはサルトビも強く言えない。

 

『まぁいい。

お前には俺達が洞窟に潜ってる間に馬車を守ってもらうわけだしな。』

 

『うんうん。

そこに関してはこいけさんにお任せあれー!』

 

誤りから始まったあだ名がすっかり気に入ったらしく自ら積極的に使っている。

アデューも気を使って馬車の真横に着いて視界に入らないようにしているため、こいけは完全に舞い上がっている。

 

『ったく、いい気なもんだぜ。』

 

自分でも考え過ぎだとは思っているが、それでもサルトビはアデューと合流した意味について考えてしまう。

もしも予感が的中するならば、この2年でアデューが成長した分だけ立ち塞がる障害も大きい可能性が高い。

サルトビが溜め息を付くと、小さな手がサルトビの頭を優しく撫でた。

 

『サルトビは働き者で偉いね。』

 

小さな手の主は杏樹だった。

 

『こりゃどうも。

ま、仕事なんでやる事はやりますよ。』

 

撫でられた頭に触れ、サルトビが前に向き直ると杏樹も姿勢を戻して座り込んだ。

 

『結婚するならサルトビみたいな人がいいな。』

 

杏樹の突飛な発言にサルトビは噴き出した。

 

『い、いきなり何を言うでござるか!?』

 

『働き者に何もかもやって欲しい。

私は朝から晩まで何もせず生きていたい。』

 

サルトビは杏樹のふざけた願望に呆れながら答える。

 

『そこまではやりません。

俺がやるのは受け取った金の分までですよ。』

 

かろうじて冷静さを取り戻してサルトビが杏樹を軽くあしらう。

 

『振られちゃった。』

 

悲壮感を全く感じさせず杏樹が失恋宣言する。

 

『杏樹ちゃんダメダメ。

サルトビ君にはイオリちゃんって言う許嫁がいるんですから!』

 

『おい!

あんまり余計な事を言うと、その口を縫い付けてやるからな!』

 

サルトビの忠告も空しく興味津々の藍がイオリの詳細について尋ね、そこから女同士の恋バナが始まる。

 

『…女ってのは何で浮ついた話が好きなんだろうな。』

 

サルトビが助けを求めるようにアデューに問いかけるが、アデューにわかるはずもなく両手を挙げるのみだった。

 

『杏樹の好みはわかりましたが、藍はどのような方と結ばれたいのですか?』

 

『えっ、そ、そうですね…。』

 

パッフィーの問いかけに藍は少しだけ思考停止してしまう。

いずれは家同士が決めた高名な殿方と結ばれるだろうと思っていたが…。

 

『風のような殿方がいいです。』

 

藍は思い付いたままに口にする。

 

『風ですか?』

 

『はい、風です。

風のように自由で、私をどこまでも広がる大空へと連れ出してくれる。

そんな方と一緒にいたいです。』

 

パッフィーの問いに藍が答える。

その場の思い付きでの回答だったが、自分の中で何かがピタリとハマる感覚があった。

 

『なるほど、風ですか。』

 

そんな男に心当たりがあると、パッフィーはアデューを見つめる。

恐らく藍はアデューの生き方に憧れているのだろう。

彼女はきっとアデューのように広い世界へ飛び出してみたいのだ。

 

(もしも彼女がアデューへの動向を求めて、アデューが承諾したら…?)

 

かつてはアデューと共に旅をした自分も、今となっては王族としての責任がある不自由な身である。

もちろん藍にも相応の立場があるのだが、それでも自分よりは可能性があるのだろう。

 

(もう一度あの頃のように長旅が出来たらどんなにいいか…。)

 

2人が共に冒険をする光景が浮かぶ。

そこに自分がいない事がなんだか悲しい。

心は誰よりも近いはずなのに立場と身体が遠く離れたままな事に少しだけ不安を感じるのだった。

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