覇王大系リューナイト ~退魔の花~   作:アフロダイB

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音無き洞窟

街道から外れた道を数時間ほど移動し、険しい岩山を登っていくことさらに数時間。

早朝に出発した一行だったが、目的の洞窟に着いた頃には昼を過ぎていた。

 

『なるほどー、こうやって封印していたのか。』

 

分厚い氷で覆われていた洞窟の出入り口を眺めてアデューが大きく口を開ける。

 

『コイツは雪女と呼ばれる魔女の一族でな。

氷の魔法を使わせたら右に出るヤツはそうはいない。』

 

『ふっふーん、こいけの氷には炎の熱だって無駄ですよ。』

 

パチンと指を鳴らすと洞窟を塞いでいた氷が一瞬で蒸発する。

サルトビの言う通り、氷に関しては本当にスペシャリストらしい。

 

『では私達は中に入りましょう。

こいけさんは馬車を見ててください。』

 

『気を付けろよ。

野生動物や山賊が来ないとも限らないからな。』

 

藍の突入指示に合わせてサルトビがこいけに指示を出す。

中にいるのはドゥームでこいけはリューを持っていないのだから妥当な配役だろう。

 

アデュー達はぶんぶんと手を振るこいけに見送られながら洞窟の中へ進んでいった。

 

洞窟内は天窓もなく陽の光が一切届かない空間だったが、杏樹が呪文を唱えると広範囲を見渡せるようになった。

 

『大したもんだなぁ。

強い光源があるわけじゃないのにこんなにも周囲を見渡せるなんて。』

 

『えっへん。

灯りを作るんじゃなくて、みんなの視力を強化してる。』

 

『なるほど、日の出国にはこのような魔法があるんですね。』

 

アースティアの魔法は統一されており、杏樹の魔法も系統はパッフィーの魔法と同じである。

ただし魔法とは基本魔法を組み合わせて発動させるものであり、配合率やタイミングなど様々な要素によって効果も変わるため組み合わせは無限と言える。

日の出国は大陸間での交流はあるが戒律などの違いから技術が他国に伝わる事がほとんどない。

魔法使いであるパッフィーにとって日の出国の魔法技術は非常に興味深い物のようで、杏樹の魔法に食い入るように分析を始めた。

パッフィーが分析に集中し始めたので手持無沙汰になったアデューが仲間を見渡すと、藍が何か考え込んでいる事に気付いた。

 

『罠があれば先行してるサルトビが解除してくれる。

そんなに心配する事ないよ。』

 

どこか不安げに周囲を伺ってた藍をアデューが気遣って声を掛けたが藍は静かに首を振る。

 

『いえ、そうではなくて…えっと、静かすぎます。

この洞窟には生き物の気配がほとんどしないんです。』

 

藍が違和感をそのままに口にする。

言われてみれば洞窟内が静かすぎる事に仲間達も気付く。

洞窟とは生物にとっては雨風を防ぐ格好の空間であり、通常ならば様々な生物が棲みついている。

言うなれば生物達の生活と生存競争が繰り広げられる場所だ。

それ故に物音1つしない洞窟と言うのは妙である。

何かが動く音も鳴き声も、先程から全く聞こえないのだ。

ただただ静寂だけが場を支配していた。

 

『…動物がいなくなる原因は2つ。

エサがないか、天敵がいるか。』

 

杏樹の言葉の後半部分が正しいならば、この先には動物たちが1匹残らず逃げ出すような何かがいるという事になる。

 

『それってやっぱり不死身か?

不死身ってのは動物にまで手当たり次第に攻撃するもんなのか?』

 

アデューの質問に藍は首を振って答える。

 

『いいえ、不死身はかつてのウォームが生み出した存在です。

いわば魔族の手先ですから基本的には光に属する者しか襲いません。』

 

創造者のウォームが消滅しても不死身は消滅せずに命令に従い続けているらしい。

逆に言えば何かを考えて自発的に行動する事はほとんどないという事だ。

 

『もしかすると相手は不死身じゃないんじゃないか?』

 

『ですが情報では間違いなく不死身であると…』

 

一行が分析を続けながら歩いていると、正面に見慣れた姿が手を振っているのが見えた。

 

『ここが原因らしいぜ。』

 

先行していたサルトビがリューが通れそうなほどの大穴を指差す。

 

『この穴は最近まで塞がっていたらしい。

この穴をあけた奴はそれなりに腕のあるヤツだな。

塞いでいた壁の先に空間がある事を見抜いたんだ。』

 

冒険者が手付かずの通路を発見する事は良く聞く話だ。

だが、その先には思わぬ危険が待ち構えている事もある。

 

『恐らくこの壁はこの先にいる不死身を閉じ込めるために誰かが塞いでた。

そいつを中途半端に腕の立つマヌケが爆破しちまった。

ここまでの穴を開けるには人間が持ち運べる火薬量じゃ無理だから、そいつは恐らくリューの乗り手だな。』

 

『…そんな…!

ではリューの乗り手がやられてしまったというのですか…?』

 

パッフィーは最悪の事態を想定してしまう。

リューは様々な存在からアースティアを守る力であり、古代文明の遺産である。

跡形もなく破壊されてしまったらそれだけアースティアを守る力がなくなるのだ。

新たな力を作り出せないままリューが1体また1体と減っていけば、いずれアースティアは邪悪に滅ぼされてしまうかもしれない。

 

『逃げ帰った!

…そう思いましょう、パッフィー様。』

 

杏樹が珍しく語気を強めて言う。

最悪の事態を想定して弱気になっても仕方のない事なので杏樹は気休めを言った。

 

『とにかく、この先に何かがいるのは間違いないんだ。

みんなでリューを召喚しておこう。』

 

全員がアデューの言葉に従ってリューを召喚する。

これだけのリューが揃えばまず負ける事はないはずだ。

全員が恐怖を振り払うように仲間を見渡し、大穴の奥へと進んでいった。

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