Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~   作:拓田しろう

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14話 本当に私でいいの?

 

 こみっくパーティーの終わりを告げる放送が流れ、辺りは片づけをして解散する雰囲気が広まっていた。

 いち早く片付けが終わった私は、和樹さんのブースに赴いて声をかけた。

 

「……お疲れ様です」

「あ、彩ちゃん。今日はお疲れ様」

 

 誘われた後の興奮は、あの後どうにか収まってくれた。

 いつも通り、和樹さんに声をかける。

 

「あの……一緒に同人活動する件なんですけど、どこで一緒に作業しますか?」

「あ、そういえばそうだね。……どうしようか?」

「……時間帯ですが、平日だったら夕方頃ですよね?」

「そうだね。時間は日にまちまちだけど、講義が終わった後になるかな。ちなみに土日はできる?」

「私……土日はバイトあるからやるなら平日だけですね」

「となると、平日でどこか遅くまで作業できる場所か……」

 

 誘った後のことについては、あまり考えていなかったのだろう。

 まあ、当然といえば当然と言える。現に私は一度断っているわけだし。

 しかし、ユニットを組んだとしても、場所をどうするかは結構難題だった。

 

「あの……私のうちはいかがでしょう? 親の帰りも遅いし……遅くまで作業できます」

「う~ん、気持ちはありがたいけど、親御さんが帰ってきたとき気まずいな……。しょうがない、うちで作業するのはどう?」

「はい……、わかりました」

「そか、えっと家なんだけど……」

「あ、だいたい場所はわかると思います。前に駅の近くだって言ってましたよね? 住所さえ教えていただければ行けると思います」

「お、マジか! すごいな彩ちゃん。了解、じゃあ明日からでいいか?」

「はい……よろしくお願いします」

 

 訪問する時間の認識を合わせ、ペコッと頭を下げて、その場を後にする。

 他の参加者と一緒に会場を出て、電車に乗る。

 窓から東京ビッグサイトを眺めながら、今日のことを思い出した。

 

 ――いろいろあった日だったな。

 

 ユニットの誘いを受けて、うなずいた後は気持ちが高揚して落ち着かなかった。

 しかし冷静になって考えたところ、なぜ和樹さんは私とユニットを組みたがったのか、という疑問が頭をよぎり、急に冷静になった。

 考えてみればみるほど、私と組んだところでメリットがない。

 

 ――なんで私なんかと――。

 

 どう考えてみても、由宇さんや詠美さんとユニットを組んだ方がメリットのように感じた。

 ましてや詠美さんと組んだら、今後の売り上げがどれだけ伸びるか想像できない。

 技術的にも金銭的な意味でも、非常に大きなメリットがある。

 

 ただ、私はどうだろうか。なにもない。

 和樹さんより優れている点といえば、同人歴が長いことくらいだ。

 既に売り上げも人気でも敵わないだろう。

 

 誘ってくれた時は嬉しくってしょうがなかった。

 和樹さんと同人誌の話をするのは楽しかった。あの人と普段から一緒に作業できるなんて夢みたいだ。

 でもやはり同時に、迷惑をかけてしまう、という気持ちもある。

 

 いろいろ理由を考え続けてみたが、やはり答えは出なかった。

 

 ここ数ヶ月のことを振り返る。

 和樹さんと出会ってから、私もこみパ関係の知り合いが増えた。

 

 そしてみんなが、和樹さんの元に集まっていくように思えた――。

 

 ――みんな和樹さんに惹かれているんだ。

 

 近くでサークル活動をしているとすぐにわかった。和樹さんの周りにはいつも人が集まってくる。

 瑞希さん、南さん、由宇さん、詠美さん、そして私も――。みんな、和樹さんの非凡な才能に刺激を受けて惹かれているんだ。

 

 こみパという場こそあれ、私達同人作家の世間の風当たりはあまり良いとは言えない。

 瑞希さんの話ではないが、世間一般からみれば、私達の趣味は奇異に見られることがしばしばある。

 

 もちろん参加者の熱意は本物だ。

 同人誌即売会で技術を磨いて有名になって、プロの作家になる方だっている。ただみんながみんなそうではない。

 

 週刊誌や月刊誌に掲載されるほどのマンガや、映画になるようなアニメであれば世間からも評価される。

 ただ即売会で出品している作品は、出回っているマンガやアニメの二次創作になりがちで、自分が好きなキャラクターの美点を誇張したデザインや、粉飾(ふんしょく)したストーリーが多かったりと、ただひたすらに趣味的なものが多かったりする。

 

 そんな私達の活動に対して世間は冷たい。

 自分達に都合の良いものを、浅はかな妄想で塗り固めて『作品』と称して慰め合っているだけだ、と揶揄された上『オタク』という差別的な呼び方までされる。

 

 例え、作品に注ぐ熱意が本物で真剣であろうと、一度差別対象と認識された人の対応は残酷だ。

 学校では、いじめ被害による社会復帰が難しくなるケースも少なくない。

 昨今ではアニメやゲームが好きな子への嫌がらせで、自宅に引き籠る生徒が続出する、というニュースが放送されて社会問題にまで発展している。

 

 こういったニュースは決して他人事ではなく、私も高校では同人活動をしていることは一切他言していない。

 みんなも普段はどこかで差別や批判の対象にならないように恐れているのだと思う。

 だからこそ、こみパでは普段抑圧されていた感情を全面に出して楽しむのだろう。

 

 それでも、ふと不安になる時がある。

 何かのきっかけで自分の活動が世間一般に知られ、批判の対象として見られるのではないかと。

 自分達は世間で認めてもらえない寂しさを、ここでみじめに慰め合っているだけではないのかと。

 

 ただ和樹さんといると安心する。

 あの人の同人に対する熱意と姿勢は純粋で、どんな差別も批判にも動じない。

 例え認められずとも、世間一般に『面白い!』と感じさせる()()()がある。

 

 そんな和樹さんと一緒にいると、自分達は同人活動をしていていいのだ、となんだかそう思えるような安心感がある。

 みんな知らず知らずのうちに、あの人の周りに集まってしまうのだ。

 

 だからこそ思ってしまうのだ――。

 

 ――私はあの人の隣にいていいのだろうか、と。

 




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