Color!! ~ゲーム『こみっくパーティー二次創作』 : いろどり溢れる長谷部彩の物語~   作:拓田しろう

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15話 初めての共同作業

 

 翌日、高校が終わって真っ直ぐ帰宅して、私服に着替える。

 もうすぐ夏休みなので、今日は午前中だけだった。

 和樹さんは午後一の講義で終わりと言っていたので、2時くらいに行けばいいだろう。それまでに昼食と準備を済ませておく必要があった。

 

 ――昨日帰ってからも、和樹さんがユニットに誘った理由を一晩中考えた。

 

 技術、戦略、金銭、人脈、弱点の補充、信頼、協力、etc.——。

 誰かとユニットを組むメリットを並べて、該当しそうなものを洗い出してみたが、どれも当てはまらなかった。

 

 一番可能性がありそうなのは『協力』だろうか?

 和樹さんがなにか協力してほしくて、私を誘ったというのは考えられなくない。

 ただそれだったら、瑞希さんや由宇さんだったら協力してくれそうだし、そもそも目的があるならそれこそ最初に言うだろう。

 

 また、和樹さんが本当は酷い人で、乱暴しても黙ってくれそうな人を選んだということも考えてみたけど、冷静に考えてそれはないだろうと思った。

 人を見る目に自信があるか、と言われればそうでもないけど、ここ数カ月の付き合いで、そんなことをするような人ではないと思った。

 それに瑞希さんや由宇さんもみんな綺麗な人だ。私を選ぶ理由がわからない。

 

 ――なぜ、私なんだろう?

 

 ……考えても仕方がない。

 そもそも一人で考えて答えが出るようなことではないのだ。

 一緒に同人活動していけば、いつか和樹さんから話してくれるかもしれない。

 

 今は和樹さんのような人と、描けるようになったことを喜ぼう。

 そう思い直し、原稿道具を準備して、自宅を出た。

 

 ---

 

 和樹さんが住んでいる最寄り駅は、私のアルバイト先と同じだったので、なんとなく土地勘はあった。

 いつもは駅から出ると画材屋のある商店街に直行するが、今日は住宅街に向かう。

 事前に聞いていた住所を頼りに和樹さん宅を目指した。

 

 じりじりと照りつける日差しの下、住宅街のアスファルトが白く霞んで見えた。

 蝉の鳴き声が途切れることなく耳にまとわりつき、風のない午後は空気さえも熱を帯びている。

 サンダル越しに地面の熱がじわりと伝わり、一歩ごとに汗が滲んでいく。

 

 日傘をさしているが、それでも照らされる太陽で体温が上昇していくのがわかる。

 慣れない道を進みながら、目的のアパートに辿り着いた。

 

 和樹さんの部屋に行ってチャイムを押すが、まだ帰宅してないようだ。

 少々到着するのが早かったかもしれない。

 

 ……暑さで限界が近い。

 どうしようかと思い、一旦アパートの前に出ると、ちょうど和樹さんが帰宅してくる姿が見えた。

 

「あ、悪い! ずいぶん早かったな。暑かったろ?」

「いいえ、ちょうど今来たところです。……でも確かに今日は暑いですね……」

「顔真っ赤じゃん! おいで。もうエアコンつけてあるから」

 

 そういうと部屋まで連れて行ってくれた。

 部屋に入ると既にエアコンが効いており、ほてった身体が一気に冷えていくのを感じた。

 

「暑かったでしょ? 今飲み物出すから、適当に座ってて」

「あ……お構いなく」

 

 そうとは言いつつ、飲み物を出してくれるのはありがたかった。

 駅から近いと思って油断して、飲み物を持ってきていなかった。

 テーブルにコップを出されると一気に飲み干してしまう。

 

「はは、だいぶ待たせちゃったみたいだね。もう一杯飲む?」

「あ……ありがとうございます」

 

 はしたないと思いつつも、こればかりはしょうがない。

 よく冷えた麦茶をひと口、ふた口と喉に流し込んで、身体の熱が引いていく気がした。

 ようやく暑さから解放されて、落ち着きを取り戻すことができた。

 

 改めて和樹さんの部屋の中を見回す。

 いつもは机の上で原稿を描いているのだろう、Gペンや原稿用紙があった。

 道具の種類はあまりないが、パソコン周りには高そうなイラスト編集用のソフトがあったり、なにに使うかわからない周辺機器に溢れていた。

 

 まったくわからないが、結構高いのではないだろうか?

 珍しがって眺めていると、和樹さんは私の視線に気が付いたのか、声をかけてきた。

 

「珍しい? 知り合いがね、送ってきてくれて勉強してるんだよ」

「いえ……男の人の部屋って初めてで……あの、送ってきてくれてって?」

「ああ。美術をしていたって話しただろ? コンテストで俺の作品を見て、ファンになってくれた人がいたんだよ。その人が定期的に機材やなにやらをくれるんだ」

「え……? だってこれ、結構高価なんじゃないですか」

「うん。この前調べてみたら20万円くらいしたよ。こんな高価だと放っておくわけにもいかなくて、ちょっと使ってみてるんだ」

 

 話を聞いて驚いた。

 美術時代のファンが、今も応援してくれてるなんてあるだろうか?

 しかも高価な機材までプレゼントしてくるなんて……まるで大ファンではないか――。

 

 ――改めて自分とは違うんだと実感した。

 

「それじゃあ、早速だけど原稿やっていこうか。えっと……いつも俺は机で描いてるけど、こっちのテーブルで一緒に描こうか」

「はい……わかりました」

 

 そうして、初めての共同作業をするのであった。

 

 




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